芸劇オペラ|公式note

芸劇のオペラをもっと楽しく!東京芸術劇場のオペラ関連のアカウントです。上演作品の解説記事や出演者インタビューなど、芸劇のオペラがもっと楽しくなるようなオリジナルコンテンツを発信していきます。

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最近の記事

【美しきエレーヌ】プレ・レクチャーレポート

みなさまこんにちは。 東京芸術劇場にて「プレ・レクチャー喜歌劇『美しきエレーヌ』を語る」が行われましたので、そのレポートをお届けします! 会場はおしゃれなカフェ プレ・レクチャーの会場は東京芸術劇場の2階にあるカフェ「Café des Arts(カフェ・デ・ザール)」です。 暖色の照明が照らす落ち着いた空間には絵画やポスター等のさまざまなアート作品が飾られていて、まるで美術館のよう。まさにCafé des Arts(アートのカフェ)という名前がぴったりな雰囲気です。 席

    • せっかくの『美しきエレーヌ』をよく観るために—160年前のオペレッタにピントを合わす「コツ」(その3)

      (その1はこちら↓) (その2はこちら↓) 淫らな鳥たちのゲームは終わらない:第二帝政期の『美しきエレーヌ』  『美しきエレーヌ』には《パリスの審判》と並んでもう一枚、絵が登場します。第二幕のト書きを読むと「王女エレーヌの私室。舞台奥の右手、レダと白鳥を描いた絵が飾ってある —— 森でひとり佇むレダと、小径の奥から彼女に近づいてくる白鳥、白鳥は首をもたげ目を爛々と輝かせている」とあります。白鳥の正体はレダを見初めたゼウス、まさにこれから結ばれようとする女と鳥 —— おそ

      • せっかくの『美しきエレーヌ』をよく観るために—160年前のオペレッタにピントを合わす「コツ」(その2)

        (その1はこちら↓) 絵に描いたようなリンゴの話 — セザンヌからパリスへのメッセージ  「絵に描いた餅」という言葉があります。実物なしには何の役にも立たぬものを喩える慣用句ですが、絵なんて見ても腹は膨れぬ、せいぜい棚から牡丹餅が落ちてこないかしらと願った昔の人々は、ずいぶん食い意地が張っていたのかもしれません。しかし、逆のこともあるでしょう。実物は大したものじゃない、ごくありふれたものでも、実に巧みに、生きているかのように描かれると、人は驚き、喜ぶものです。たとえば、セ

        • せっかくの『美しきエレーヌ』をよく観るために—160年前のオペレッタにピントを合わす「コツ」(その1)

          笑っていいの?—すっかりネタにされたギリシャ神話を前に当時の人々の反応は…… こうしてお読みくださる皆さまがきっと東京芸術劇場に足をお運びになるのだとして、開演前にプログラムをご覧になれば、エレーヌ、パリス、メネラオス、アキレ……呆れるほど豪華な名前が目に入ることでしょう。ホメロスの叙事詩に歌われる、それぞれが重厚なドラマを背負う登場人物ばかり、しかし、ひとたび幕が上がれば、軽やかな音楽の運びと、羽目を外した冗談の連発にきっと楽しいひとときをお過ごしになるでしょう。いや、いく

          喜歌劇《美しきエレーヌ》本作の基となっている、ギリシャ神話「パリスの審判」

          《美しきエレーヌ》は、古代ギリシャの詩人ホメロスの『イーリアス』で有名なトロイア戦争の発端となった、「パリスの審判」のエピソードが基になっている。ここでは、その内容を簡単にご紹介しよう。 ――神々の結婚式に招かれなかったことに憤慨した女神エリスは、その宴席に黄金のリンゴを投げ入れる。「最も美しい女神へ」贈られたこのリンゴを巡って、ヘラ(ジュノー)、アテナ(ミネルヴァ)、アプロディテ(ヴィーナス)の三美神が争いを起こす。そこで白羽の矢が立ったのが、トロイアの王子パリスである。

          喜歌劇《美しきエレーヌ》本作の基となっている、ギリシャ神話「パリスの審判」

          喜歌劇《美しきエレーヌ》優美なメロディと軽快なリズムに彩られた本作の聴きどころ

          パリ初演からわずか3ヵ月後の1865年3月17日、ヴィーンのアン・デア・ヴィーン劇場に於いて《美しきエレーヌ》のドイツ語初演が行なわれた。オッフェンバックは、このヴィーン公演のためにいくつかのナンバーを新たに作曲している。本日の公演では、ジャン=クリストフ・ケックによる批判校訂版のうち、ヴィーン公演版が使用されている。 序曲 パリ初演版では短い導入曲が置かれているが、今回演奏されるのは、ヴィーンのために新たに用意された序曲である。〈王たちのクープレ〉と第2幕フィナーレのワ

          喜歌劇《美しきエレーヌ》優美なメロディと軽快なリズムに彩られた本作の聴きどころ

          喜歌劇《美しきエレーヌ》オッフェンバック円熟期の傑作とその創作の背景

          《美しきエレーヌ》は、ドイツに生まれフランスに帰化した作曲家ジャック・オッフェンバック(1819〜1880)による3幕のオペレッタ(オペラ・ブーフ)である。台本はアンリ・メイヤックとリュドヴィック・アレヴィによるもので、1864年12月17日にパリのヴァリエテ座で初演された。 オッフェンバックは、パリ万国博覧会が開催されていた1855年の夏、シャンゼリゼに小劇場を借り、そこでブーフ=パリジャン座を立ち上げた。当時のパリでは、劇場のヒエラルキーが明確に存在しており、各劇場で上

          喜歌劇《美しきエレーヌ》オッフェンバック円熟期の傑作とその創作の背景

          喜歌劇《美しきエレーヌ》絶世の美女エレーヌとその運命を巡る物語

          人物相関図 第1幕 ギリシャのスパルタ、ジュピテル神殿前の広場 人々は神殿の前に跪き、熱心に祈りを捧げている。今日はウェヌス(ヴィーナス)の恋人アドニスの死を悼む儀式の日である。一方、「この世で最も美しい女性」と名高いエレーヌは、夫であるスパルタの王メネラオスとの平凡な夫婦生活を送っている。「どうか愛をお与えください」と彼女はウェヌスに切望する。預言者カルカスが、遊女たちを引き連れてやってきたオレステスを追い返し、神殿に戻ろうとした時、そこに羊飼いに扮したパリスが現れる。

          喜歌劇《美しきエレーヌ》絶世の美女エレーヌとその運命を巡る物語