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ルーヴル逍遥①

久しぶりに行った備忘録として

とにかく朝一か夜間開館。ツアー旅行客でひしめいている10時30分から4時くらいは、モナリザ等があるドゥノン翼はこの世の地獄みたいな混雑で、あの体験を美術鑑賞だと記憶に刻まれてしまうと悲しいことになります。9時開館なのでその時間に予約し8時半には並んでいてください。

ミケランジェロ《瀕死の奴隷》
1513〜16年

古代彫刻を普通に凌駕していると思うミケランジェロの傑作。裏に回ると目に見えないところはちゃんと手を抜いていて安心しました笑。尻と背中の部分は粗いです。彫刻は3次元かつ周囲からの視点で印象まで変わるため、本という2次元の媒体で論じるのは難しいものがあります。美術史系の本でナチュラルな彫刻軽視は本との相性が悪いことにも理由がありそうです。

天才のこぼす人間らしさを堪能したら階段を上がります。

サモトラケのニケ

記念写真におすすめ。私は一瞥してほぼ素通りしてしまうので、感性が終わっているのでしょう。いよいよメインのグランドギャラリーです。

ウッチェロ《サン・ロマーノの戦い》
1456〜60年

厳しく硬直した描き方ですが、背後の槍の間隔と馬の配置がリズムを生み出しています。静止しているのに動きのポテンシャルを感じるチグハグな感じは、美術史上ウッチェロの絵にしか感じないもので、絵画の魔力が詰まっています。2時間は観てられますが、展示されている場所がよろしくないので改善を求めます。

マンテーニャ《勝利の聖母》1496年
マンテーニャ《聖セバスティアヌス》1480年

滞欧して美術館を巡ると自然と評価が上がっていく画家のひとりマンテーニャも、凡作はありますがルーヴルの2点は主題以外の、植物や石材、鎧の表現の巧みさに舌を巻きます。細部に神は宿るかのようです。特に聖セバスティアヌスはマンテーニャによるものが三作品あるものの、ルーヴルのこれが一番優れています。

見上げるように壁にかかっているのですが、絵からして視点が下から見上げたものになっており、視線誘導が完璧です。どう見えるかの計算に長けていた画家の真骨頂を堪能できます。正直この辺でお腹いっぱいです。

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