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ひな祭り

黒澤明の悲劇なのか、彼に限らず巨匠の宿命というものなのかは不明ですが、周りが巨匠の権威に勝手に萎縮してしまうということが見られます。

1990年の『夢』はひな祭りのシーンだけがやけに有名ですが、確かに巨匠として金が大量に使えたという事情はあると思います。煌びやかで静止画としては大変見事なのでSNS上でも何度か見たことがあるはずですが、映画自体はそこまでよくないと私は思います。

菊島隆三や橋本忍ら黒澤明の映画の骨を作っていた人たちが、皆黒澤明の下を離れてしまっており、彼らの骨格を失った晩年の作品は構造が曖昧で締まりがない映画になっています。盟友の脚本家が監督に物言いできなくなり、皆平伏してしまうようになると映画監督は容易に独裁者になってしまいます。そして変な緊張感のない映画になりがちです(私見ですが)。

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