犬の改名
18世紀半ばから後半にかけての、いわゆる啓蒙思想と呼ばれる思想を担った人たちは、ドイツとフランスで属性がかなり異なっています。フランスの方は百科全書のダランベール、『法の精神』のモンテスキュー、唯物論のドルバックなど、大方貴族出身か貴族です。ヴォルテールも大ブルジョワ出身ですし、例外はサロン評などで美術史のスターであるディドロと、思想史のスターであるジャン・ジャック・ルソーくらいです。
一方ドイツはカントにしてもヘルダーにしても、それなりに裕福とはいえ一般家庭の出身です。倫理の教科書では同時代と同傾向でなぜかまとめられているあたりも、国によって担った層が違います。
フランスの貴族学者は例外的な存在かもしれません。当時の学問というのはかなり歪で、要はお金持ちの娯楽でした。勉強は苦悩なので最低限にし、自分の部下にやらせるようなものとして、お抱えの学者を雇うのが一般です。自分たちはサッカーをしないのに、サッカーチームを保有してスターをかき集めてくるサウジアラビアの石油王たちがいますが、その学者版です。
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