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思考整理

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借りた金を返すためにはゾンビを作っても良いのか?「負債論」を読んで考えた

「負債論 貨幣と暴力の5000年」「ブルシット・ジョブ―クソどうでもいい仕事の理論」などの著書で知られる人類学者、David Graeber(デヴィッド・グレーバー)。惜しくも2020年に59歳の若さで亡くなり、最近刊行された「万物の黎明」は遺作として今まさに存在感を放っている。 私は数年前に「ブルシット・ジョブ」を読んで大変な感銘を受けた。なぜ社会に必要とされる仕事はお金がもらえず、なぜ社会の役に立たない(あるいは社会に害をなしている)と”働いている本人すら葛藤を抱く”よ

理性の神話

最近、メディアにあふれる論理性の無さに絶望する機会が多かった。論理性や合理性といったものは物騒な兵器のように思われており、大きな影響力を持つ人の言葉ほど共感や同調をベースとし、結果として立場の違う者同士の議論がまるで成り立っていない。論理性の持つ真の力、すなわち、普遍性を大切にすることで共感ができない人にも理解を促すという力が活かされず、そのような言説はほとんど塵のようにしか扱われない。 世界がなぜこんなに論理を蔑ろにするのか、と嘆いていた昨今。 書籍「啓蒙思想2.0」と

なぜ1年でゲームを完成させようと思っても当然のように4年以上かかるのか

前からずっと言いたかったことがある。同じ過ちを犯すゲーム開発者に。あるいは、「ゲームを完成させた体験が無い人」に。 あなたのゲーム開発に対する予測は、ほとんどの場合正しくない。それも、20%や40%などの振れ幅ではない。200%とか400%のスケールで大きく間違っている。 私はその感覚を確かめるべく一つのアンケートを実施した。結果は火を見るより明らかな傾向を示した。 このことは、既にいくつかゲームを完成させた経験がある人にとっては、ほとんど明らかな事実である。引用ツイー

何もしないでお金をもらう事が辛い理由

子供の頃は、世界はとても公正で、価値のある競争に溢れているように見えていた。 テストの点数を競ったり、人と協力して生産的な活動をしていれば、それがいつか社会に価値を生み出すことに利用されるはずだという、無邪気な期待があった。 少なくとも新卒で初任給を得る時点まではこれは正しかった。しかしなぜか、社会人を経験していくごとに、この世界はどこかがおかしい、何なら完全に狂っているような気がしてくる。 社会のためになるような事をしてもお金にならず、しかし一方で、おおよそ社会に与え

FE風花雪月の紋章xタロット本から読み解く、大アルカナの構造分析

「ファイアーエムブレム風花雪月を300時間で3周してからが本番だった話」の、本体がこの記事です。FE風花雪月をクリアした後にネットを探してたらここ最近読んだ文章の中でぶっちぎりで一番面白いブログ↓にたどり着き、そこからいかにこの世界や物語が膨大な知識に裏打ちされて作られていたのかに震え、タロットという今まで触れていなかったものの面白さに気づくきっかけとなり、ゲームを起点として興味の幅が広がっていった、という流れでした。 なんぼでもリンクを置いておくからとにかく読んでくれとし

「異性装の日本史」を見てきたメモ

異性装というのは歴史を通して常に大衆を惹き付ける魅力のある文化であり、また、同時に性別に対して社会的に与えられる役割や力というものを借り受けるために本人の性的自認や性的指向に関係なくそうした営みが常にあった、ということがよくわかる展示になっていた。 展示のビジュアルというよりは、テキストから得られる情報がかなり多かったように思われる。(逆に、テキストがないと、それぞれが「男装なのか、女装なのか、男性なのか、女性なのか」といったコンテキストをすぐに読み解くのは難しい。とくに浮

「月曜日のたわわ」広告をめぐる対立についての私見

「月曜日のたわわ」をめぐる以下の記事を発端として、Twitter上ではフェミニストとオタク(と大雑把に分類しますが)の対立が起こりました。 私も月曜日のたわわの読者の一人として、これが社会からどのような判定が下されるのか、興味深く見守っていました。賛否ともにできる範囲でいろんな意見に目を通して、大きく違和感を抱いたことがあります。それは、 なぜ、共通の敵である「性犯罪者」という存在を脇目に、「フェミニストVSオタク」あるいは「女VS男」が対立しているように見えるのか、とい

ワクチンに不安を持つ方へ

先日、こんなツイートを目にしました。 この方は「科学的に見て」「ワクチン打てと言われるのが怖い」と申しております。読んでみた所、この方は少なくとも確信犯的あるいは短絡的な反ワクチンというわけではなく、自分なりに色々調べた上で、「反ワクチンの方が科学的に正しそう」という感触を得ているようでした。 本稿はそうした「ワクチンを打とうかどうか自分で考えて、どちらの情報を信じてよいかわからず悩んでいる」方に向けて書きます。 私自身は明日、接種を予定しており、基本的には多くの方にワ

開会式のゲーム音楽を喜んで良いのか

先に結論を書きます。 「そもそもこんな非常識なタイミングで五輪開催しなければ多くのゲーム音楽ファンが素直に楽しめたんだよ、なんでそうしなかったの?」 という点で合意形成しましょう。 背景五輪開会式で入場曲にゲーム音楽が使われたことに対して、古くからゲーム音楽産業に関わる方からは総じて「ここまで認められる日が来て嬉しい」という反応が目立ちました。 これに対し、五輪開催のみならず五輪を楽しむことに怒りを感じているライターのワニウエイブさんが、このような記事を出し、賛否両論

アドラー心理学の本「嫌われる勇気」をオススメできる人とできない人の違い

仕事がうまくいかず、抑うつ状態で苦しんでいるときに、先輩からこの本をオススメされました。 読みながらリアルタイムの感想はこちらのTogetterにまとめてあるので、既に読んだことのある方はこちらを見ていただくのが良いかもしれません。 この記事では、この本をまだ読んだことがない方に向けて、何が得られるのか、誰に向けられたものなのか、を要約したいと思います。 感情から抜け出したい人へこの本を読んで救われる人というのは、何らかの感情(劣等感や憎悪やトラウマなど)が抑えられずに