(#05)漢方はオカルト? (2021.03.01UP)
2021年3月に患者さんにお配りしたお手紙です。
エビデンス(根拠)という言葉。医療でもこの“エビデンス”という言葉が使われます。
“根拠を基礎とした医学”。漢方も科学的な研究が進んでいます。
ある組織が漢方の科学的根拠を証明するために世界規模でプロジェクトを立ち上げました。1つの処方に対し2,000項目以上調べる必要があるそうです。
壮大な調査になりそうで、結果が楽しみです。
科学は誰がやっても同じ結果になる事を目指します。
そうなる事を“標準化”と言い、それは非常に便利です。
大学の先生がやろうと、学生がやろうと同じ結果。
一方漢方はその“標準化”が遅れており、まだまだ職人技です。特に当院のような煎じ薬が主体の医院では経験や直感の部分が多くを占めます。
10年ほど前、医科大学から連絡が来ました。
「ウチの患者がアンタとこの漢方薬を飲むと調子が良くなった。どんな処方
を使ったのか聞かせて欲しい」
ルンルンで資料を持って行きましたよ。でも会合は1度きりでした。
処方を決めるルールが違う。一人一人全員処方が違う。季節によって処方が変わる。などなど。これらは彼らの求める“誰にでも当てはまる標準化されたもの”ではなかったようです。
ぜんざいの甘み(うま味)を出すのに塩を少々入れます。
彼らはその“塩少々”が、誰がやっても美味しい塩加減は何グラムか? を知りたかったようです。
患者さんから
「漢方のおかげで調子がいい」
と言っていただきました。すごく嬉しかったけど
「まぁ、漢方はしょせんオカルトですから、くれぐれも養生をしっかりして
くださいね」
とお伝えしました。
漢方はオカルトと言われる事があります。あれだけ必死に考えた処方をオカルトと言われると腹が立ちます。
でもエビデンスはない。おっしゃる通りでございます。
はい、オカルト。
あまりに腹立つので自分で言う事にしました。
そんな事を愚痴っていると
「漢方は、結果として事実上”標準化”した基準なんだよ」
と友人は言います。
デファクト・スタンダートという考え方だそうです。自分のやってることに少し自信が持てました。友はありがたい。(了)