体に出来る異常事態
右の足の親指の爪が剥がれかけている。
爪の根本だけ、さらに右半分のみで繋がっている。
まさに首の皮一枚、ならぬ指の皮一枚の状態だ。
少しの衝撃で取れてしまいそうだがこの状態で2,3日が過ぎている。
みんなに見せたいのはやまやまだが、確実にドン引かれるのでやめておく。
字面だけで見るととても痛そうだが、無理やり引っ張って取ろうとすると痛いくらいなので案外大したことはない。
爪が取れればいいという気持ちとずっといじっていたいという気持ちが2:8くらいだ。
こうゆう体にできる現象が好きだ。
例えば魚の目。
暇なときにずーっといじっていられる。
尚且つ痛くも痒くもない。
以前、剣道をやっている時はよく足裏に魚の目ができた。
何年もかけてその魚の目を大事に育て(ほじくり)二つの魚の目を大きな一つの魚の目にする大リフォームを成し遂げたことがある。
魚の目界の匠とは俺のことである。
後は首の裏に綺麗な丸い赤みを帯びたなにかが出来たことがある。
正確には赤くなっているだけで凹凸もなくすべすべ、何も出来ていないのだが。
とにかく赤い丸が突如首の後ろに発生した。
まるでミステリーサークルである。
宇宙人が地球人と同じ大きさとは限らない。
小さな宇宙人のUFOが俺の首に着陸したという可能性がゼロであることを証明できた学者はまだ表れていない。
そのミステリーサークルも何年も俺の首に来襲した証を残し続けてくれた。
しかし、ある時ふとそれらの異物を無くしたくなる。
そうなると重い腰を上げ治療に取り掛かる。
魚の目は液体窒素で凍らせて削り取った。
めちゃくちゃ痛いので毎週通うのは辛いものがあったが病院に向かう道中、「痛い治療に自ら向かう俺って大人だなぁ」と謎の優越感を与えてくれたので魚の目は死に際まで俺のために働いてくれたと言える。
ミステリーサークルは何年も居座った割にはカビに効くという薬を塗ると瞬く間に消えていったので、NASAや自衛隊は宇宙人が地球を襲ってきた時の為にカビに効く塗布薬を大量に常備しておいてその時が来たら地球上に塗布することをお勧めする。
経験上それで地球は守られるはずである。
ミステリーサークルを付けられそれを消すことに成功した俺が言うのだから間違いないはずだ。
話が逸れたが何年も共にした異物も治療に取り掛かるとすぐになくなってしまう。
そして毎回治療後は、信頼するパートナーを失ったような、どこか寂しい気持ちに襲われるのだ。
きっと今回の爪とももうすぐお別れだ。
もうすぐ来るであろうその日まで、一日一日を大切に生きようと思う。