E-714 虎全身像
石膏像サイズ: H.22×W.42×D.10cm(原作サイズ)
制作年代 : 1844年
収蔵美術館 : オルセー美術館他
作者 : アントワーヌ・ルイ・バリー(Antoine-Louis Barye 1796-1875)
19世紀フランスで動物彫刻の分野で活躍したアントワーヌ・ルイ・バリーの作品です。バリーは動物を自身の表現の中心主題とすることで、独自の世界を構築しました。
彫金師の家に生まれたバリーは、彫金師としてそのキャリアをスタートしました。彫金の修行と並行してデッサンの技術を身に付けたバリーは、1820年代には画家のドラクロワと連れ立って動物園・植物園へと赴くようになり、様々な動物の研究・素描を繰り返し、骨格、筋肉、動作などを入念に研究するようになりました。それまでの西洋絵画の伝統では、動物は絵画の付属物や装飾物としての役割しか与えられていませんでしたが、バリーは動物それ自体に興味を持ち、自身の製作の主題としました。作品制作にあたっては解剖学などの科学的な視点に加えて、ロマン主義的な観点から筋肉を誇張したり、起伏を強調することで、その作品を芸術的なレベルへと昇華してゆきました。
バリーの作品は、1830年代当時のアカデミズムが主流の画壇では評価が低く、1837年以降はサロンへの出展も断念せざるを得ない状況でしたが、オルレアン公などの裕福な美術愛好家たちからは徐々に高い評価を得る様になり、その動物彫刻は世間で広く認められるようになりました。バリーは、若き日のロダンに大きな影響を与えたことでも知られています。
米バルチモアWalters art museum収蔵 「Walking Tiger」 バリー作 1844年 (写真はWikimedia commonsより)