K-170 ボルテール胸像
石膏像サイズ: H.49×W.20×D.27cm(原作サイズ)
制作年代 : 1781年
収蔵美術館 : ルーブル美術館収蔵
作者 : ジャン・アントワーヌ・ウードン(Jean-Antoine Houdon 1741-1828)
18世紀フランス啓蒙主義を代表する哲学者・作家であったヴォルテール(“Voltaire” François-Marie Arouet, 1694 -1778)の肖像彫刻です。作者は、フランス宮廷でロココ的な作品や肖像彫刻を多数制作したウードン。
石膏像の胸像は、全身像からのカット、または全身像製作のための習作と推定されます。着座した形の全身像は、ヴォルテールの姪のデゥニ夫人がウードンに発注し、1体はコメディー・フランセーズに寄贈され、もう一体はエカテリーナ2世によって買い上げられました。彫像制作当時、高齢でスイス国境近くのフェルネーに隠遁していたヴォルテールは、自作の悲劇の上演に際してパリを訪れ、ウードンのモデルとなったということです。
ヴォルテールは、それまでの専制君主の時代から徐々に抜け出し、民衆一人ひとりのもつ理性の力をよりどころに国家が形成されてゆくべきだという、民主主義の根本原理を考えだした人物です。このような思考は、ルソーやモンテスキューの登場とともに徐々に形成されてゆき、やがてはフランス革命へとつながりました。打倒”絶対王政”の勢力の精神的な支えになった啓蒙主義者達ですが、意外にも当時の王族、貴族からは手厚くもてなされています。ヴォルテールも、反カトリック、反権力の執筆・発言を繰り返したことで投獄されたこともありましたが、基本的には体制側からは大切に扱われました。ルイ15世の妾だったポンパドール夫人は、自身の主催するサロンにヴォルテールやディドロを招いて親交を深めたということです。退廃的だった当時の王宮文化の人々にとっては、こういった進歩的な啓蒙主義が新鮮に感じられたのかもしれません。
エルミタージュ美術館収蔵 ウードン作 ヴォルテール全身像 コメディー・フランセーズ収蔵のものと同じスタイル
(写真はWikimedia commonsより)