見出し画像

ソウル旅行で見つけた Starbucks 成功戦略

こんにちは、GCRMの小林です。

こちらの記事は、先月の久しぶりのソウル滞在で感じたことを綴った旅行記です。コーヒーを片手に、気軽にお読みいただけると嬉しいです。☕


今回のソウル訪問の目的は、母校ニューヨーク大学の同窓会に参加することです。「ニューヨーク大学の同窓会がアジアで?」と不思議に思われるかもしれませんが、過去数十年間、アジアからニューヨーク大学へ留学した人数は相当な数に上ります。卒業後に母校に大きな寄附をするアジアの大富豪もいたりして、同窓会には学長自らがニューヨークから駆けつけるほど盛況でした。

ところで、GCRM代表の杉山と私は、ニューヨーク大学時代に知り合った数十年来の友人です。20年以上、異なる分野でキャリアを積んできた私たちが今、「グローバル」×「人」にかかわる課題を解決するために共に活動していることに、私たちの使命を感じています。

さて、久しぶりのソウル訪問記に戻ります。
実は私、夫の転勤で3年間ソウルに在住した経験があります。現在大学院生の長男は、ソウルのインターナショナルスクールで中学生の3年間を過ごしました。早いもので帰国からもう10年近く経ちます。

ソウルは何といっても近いので、コロナ前は毎年遊びに行っていましたが、ここ数年はすっかりご無沙汰。久しぶりの今回の訪韓では、変わらない街並みや、値上がりをほとんど感じないローカルフードを楽しむ一方で、驚くべき変化にも出会いました。

特に印象に残ったのは、ディープな場所で繁盛していたスターバックスです。意外に思われるかもしれませんが、韓国の人々はコーヒーが大好きです。ソウルに駐在していた日本人が日本に戻って一番不便に感じるのが、コーヒーショップの少なさです。ソウルの街中では、石を投げるとカフェにあたります(筆者主観)。

韓国には「コーヒー付きランチセット」という概念はなく、キムチチゲや韓国風定食といったランチを食べた後は、別の店に移動してお茶を楽しむのが一般的です。お茶代もまあまあかかるため、少しもったいない気もしますが、お茶をしながらの語らいの時間がとても大切なんですね。
私がソウルに滞在していたころも、韓国のコーヒーチェーンや個人店がかなり充実しており、後進のスターバックスは立ち位置に少し苦戦している印象がありました。

ところが今回、ソウルにあるスターバックスの数店舗は、ユニークなコンセプトで現地文化に溶け込み、大成功を収めていました。単にコーヒーを飲むだけでなく、一杯のコーヒーを味わいながら、その空間にいることを楽しめる経験が成功の背景のようです。

今回私が訪れたのは、「STARBUCKS COFFEE 京東1960店」。
このお店はソウル中心地からさほど遠くない場所ですが、なんとディープな京東市場の中にあります。韓国在住経験が3年ある私でも、足を踏み入れたことがなかった市場で、食品や薬草を扱う昔ながらの大規模な市場です。

清涼里水産市場

周辺には、韓国ドラマや映画に出てきそうな、中堅クラスの高層マンションが立ち並んでいるのも新鮮ではありました。市場には生鮮食品から乾物などの様々な食べ物が並び、豚足はもちろん、豚さんの顔の皮や、大きな蜂の巣なども売られてました。

清涼里水産市場を通って京東市場へ

Google マップでは「スタバはここ」と表示されているものの、どう探しても市場のお店しか見当たりません。なんと、スターバックスは市場の上にあったのです。薬草や韓方系のお店がある横に、さりげなくスターバックスへ続くおしゃれな階段が現れました。恐る恐るドアを開けると、そこには雰囲気が一変したスタバの空間が広がっていました。

このスターバックス店舗は、1960年代に建てられ90年代半ばに閉鎖された劇場をリノベーションしてできたそうです。劇場の雰囲気を残した段々のシーティングがあり、ざっと見ても200席くらいはありそうでした。内装やデザイン、構造からその歴史を感じるユニークな空間に感動すると同時に、真下で展開する市場との雰囲気のギャップに、めまいを感じるほどのカルチャーショックを受けました。

STARBUCKS COFFEE 京東1960店

お客さんは、このお店を目指してきたと思われる若者から、近所の高層マンションに住む(?)おばさま集団まで、さまざまな世代がいたようです。客層は市場とは少し違うものの、この空間も活気に溢れていました。

スターバックスの戦略の一つが、「立ち寄るだけの場所ではなく、目的地として楽しんで訪れることができる空間を作ること」といった内容をどこかで読んだことがあります。まさに、今回訪れた「STARBUCKS COFFEE 京東1960店」はそのような店舗でした。

ちなみに、このスターバックスを教えてくれたのは、現地での生活が長い友人です。韓国のガイドにはあまり登場しませんが、このエリアには韓薬のお店がたくさんあり、ソウル韓方振興センターでの足湯を目的に訪れるのもおすすめです。

それにしても、数年放置されていたと思われる劇場を、素敵なスターバックスにリノベーションしようと思いついたのは、一体どのような人材だったのでしょう。古い空間を、その歴史の趣を残しつつ、多くの世代を魅了するリノベーションを施し、生き返らせる大胆な発想に感動しつつ、いつものスターバックスコーヒーを楽しむ、旅のひとときでした。