初めて髪を派手な色に染めたときの話②
前回記述したように、一大決心をした私は、ゆっくりと馴染みの美容室のドアを開けた。いつもより少しばかりドアが重く感じたような気がした。多分マジで気のせいだ。
店内へ入るといつものように美容師さんたちが出迎えてくれた。
私が最近行きつけにしている美容室は、母や祖母が今でも通っている老舗だ。さすがベテランとでも言うべきか、自分の髪質をすぐに理解してくれて、自分が持っていった写真通りの髪型にしてもらったときはとても驚いたものだ。
すぐに席に呼ばれると、私はあらかじめスマホに保存しておいた写真を見せて、希望の髪型と髪色を伝えた。
初めての派手な髪色に選んだのは青系。真っ青というよりは、アッシュブルーというか灰色と青の中間というかそんな色にしてみたかった。理由はとても簡単。かっこいいと思ったから。
施術が始まり、ある程度カットを終えたところで美容師さんが言った。
「じゃああとは染めてから切るから、先に脱色しちゃおっか」
脱色。
ブリーチと聞けばでっかい剣を構えて「卍解!」と叫ぶアレも同時に思い出されるが、「脱色」と言われてしまったらもうそれしかない。ダブルミーニングにはならないただの日本語だ。
いよいよだ……!
ブリーチをした体験談は知り合いからいくつか聞いていた。とにかく頭皮への刺激がハンパないと。
今までゴリッゴリの文化部で育ってきたためか、痛みには正直耐性が低い。しかも私は長男じゃないから果たして耐えられるのか少々不安はあったが、施術は順調に進んでいった。
耳にビニールのカバーがかけられ、生え際に保護するためのクリームが塗られる。そして、独特な匂いのする薬剤が、私の髪へ二人がかりで塗り込まれていった。
ブリーチ1回目
薬剤が塗り終わり、一旦放置タイムとなった。
さあ、どれほどの痛みに襲われるのかと身構えていたが、全くなにも感じることはなかった。単純に髪になにかが塗られて放置されているので、かゆみに似たモヤモヤをほんの少し感じる程度。
なるほど、自分は頭皮が強いのではないか。そう思った。後述するがこれは完全な慢心だったと知ることになる。
10~15分ほど経過したのち、髪を洗い流された。このときにはもう鏡の前に行くのが楽しみで仕方なかった。
そして鏡の前に座ったとき、そこに映し出された自分の姿は……
田舎のヤンキーがそこに座ってた。いや、別にこの髪色の男性すべてをそう言っているわけではないのだが、どうもそんな風に見えて仕方がない。夜のコンビニ前にたむろしてるやつだ。夏場の虫と同じ。
当然のことながら、青系の色は入りにくいため、ブリーチ2回以上がデフォなのは私も理解している。しかし一回でこれくらいしか色が抜けないのであれば、何回ブリーチが必要になるのだろう……?と少し不安になった。
ブリーチ2回目
2回目は、1回目で色が残った部分や頭皮ギリギリの部分を中心に薬剤が塗られていった。
ここで1回目とは明らかに違う現象が起きた。
頭皮が痛い。
初めはじんわりと熱くなってきたように感じたが、1分もするともうすごい痛みになった。頭皮の中で部族が火を囲って踊り狂っているようだった。冗談抜きでまじでライターとかで炙られているのかと思った。
頭皮が強いのかと思っていたら、単純にまだ頭皮に到達していなかっただけだった。慢心によって無残に負けるバトル漫画のキャラクターみたいな心持ちだったことがよく分かった。油断ダメ、ゼッタイ。
放置タイムを終え、髪が洗い流されたが、シャワーのお湯すら痛く感じるほどだった。これマジで大丈夫なやつなん?って思った。
そして鏡の前に座ると今度はこんな風になっていた。
なんだろう。今すぐかめはめ波が撃てそうな気がした。
黄味消し
さて、このままの状態では青系の色はとても入らないらしいので、黄味消しというものを塗った。なんでも、このモンハンに出てくる電気をまとった猿みたいな黄色味を消すらしい。すごい。
これは特に痛くなかった。ホッとした。
結果はこうなった。
確かに黄色が抑えられて面白い感じの色になった。「このままの色でもいい感じだね~」なんて言われたが、金髪はさすがに私の空想上の不良の姿なので続行してもらった。
カラー
ここまで来てようやく、自分の希望の色が入れられ始めた。
最初後ろの一部に塗って発色を確認、その後全体にこれでもかと塗られていった。頭皮はまだヒリヒリしてた。
正直ここまでの時点で結構な時間が経過しているので、頭皮もそうだが座っているお尻も痛くなってきていた。デスクワーク経験者のくせに、お尻や腰はいつまでたっても疲れるらしい。
美容師さんの手に薬剤の青い色素がだいぶ付いてしまったらしく、「今日餃子のつもりだったけどやめることにしたわ〜」なんて言われた。確かにそんな青色が色移りしたケミカル餃子なんか食べたくないよな。腹壊しそう。
そうこうしながら無事カラーまで終わった。入店から実に4時間ほど経過していた。肩も腰も正直バキバキだった。
最終的にこんな色になった。
なんというか金髪状態よりそこまで大きな違和感はなかった。あれ、似合ってね??とか思ってた。
その後は家に帰って何度も何度もニヤニヤしながら鏡を見た。友達に写真を送って似合うかどうか恐る恐る聞いたりもしたが、わりと好評だった。超絶嬉しい。
ちなみにワックスも付けてもらってたので、夜改めてシャンプーすると、ほんのりソーダ味がしそうな泡が立っていた。落ちんの早っ。
なんやかんや染めてみたら結構気に入ってしまった。褒められたし。褒められたし!!
その後、色を維持するためになんやかんや色々やるんですが、それからの話はまた次の機会に。
サポートしてもらえたらメガネへし折れるくらい喜びます