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SIは見た No.69『新百貨店落成式など』の場合

私たちは今、どんな時代を生きているのか──。サンデー・インタビュアーズ(SI)とは、そんな問いを探求するロスジェネ世代の余暇活動です。

月に一度の日曜日、6人のメンバー*は84巻あるホームムービー*をひとつずつ紐解きながら、オンライン上で話し、聞き、考えます。

今月(2022年8月)のお題は、No.69『新百貨店落成式など』。さて、そこには何が写っているのでしょうか。メンバーの言葉を紹介します。

*本テキストはSIが毎月行うオンラインワークショップの記録です。
*メンバーは2022年度の公募で集いました。
*ウェブサイト『世田谷クロニクル1936-83』をご参照ください。

No.69『新百貨店落成式など』
撮影時期|昭和45年9月28日、55年8–9月
撮影場所|店舗(上馬)、伊豆(静岡県)、一碧湖(静岡県)
新装開店した金物・雑貨屋の落成式。招待客が宴会場の屋上に集まる。焼き鳥、おでん、ビールなどが振る舞われる。場面は変わり、戦友会、自宅の屋上でのプールなど。高速道路が見える。提供者の父は戦前に目立て屋(鋸などの目を研ぐ)として働き始め、台湾に出征し、終戦を迎える。戦後に大工道具の販売を始め、商売を大きくしていった。(『世田谷クロニクル1936-83』より)

00:08

「店舗は環七沿いだろうか。道路のアスファルト舗装がきれい。横断歩道には縞模様がない」

「屋上に紅白幕をひと巡り。わかりやすいお祝いの仕方で目立ってよい」

「道路側のファサードのみ赤茶色の仕上げになっているが、ほかの面は白い。周りにまだ建物が建っていないけど、横側からの見え方は気にしていなかったのだろうか。それとも、すぐ両隣に建物が建つ予定だったのか」

00:55

「お葬式のときもそうだけど、いまでは花輪をほとんど見なくなった」

「花輪の送り主を全てカットに収めている。これ以降のシーンでも、会場の様子や来賓などを細かなコマ割りで押さえていて、『記録として残しておこう』という意図が感じられる」

「シャツがはだけている男性が映る。現在ではマナーとして上半身を露出させないきっちりとした着方の人が多い」

03:34

「ビルの屋上からの映像は、地上から見るのとはぜんぜん違う風景の切り取られ方をしていてハッとした。オフィスやお店が並ぶ繁華街だと思って見ていたら、建物の裏には家々が連なっていた」

17:27

「ダミ声がすごい! こんな声の出し方の人は今いないんじゃないかな」

「戦友会のシーン、なぜみんな民謡を歌っているのだろう。佐渡おけさ、よさこい、木曽節……地方出身者がお国自慢として歌ったのか。当時はレコードが売れて民謡が流行っていた時代だった」

「戦友会の場ではどんな話をするのだろう。普通の宴会と変わらない和やかな雰囲気だが、戦地ではかなり辛い経験もしたと思うがあまりそのような話題は出さないものなのか」

18:52

「『店を閉め 家族揃って 天下の剣』の言葉が謎だな、と思っていたら、これはムービータイトルを自作していたのか!  このあとに映る、一碧湖での旅行シーンのタイトル[23:50]見てわかった」

「手作りのタイトル。字が綺麗。こういうカットはあとからインサートしているのだろうか。撮影だけでなく編集までするのは一般的だったのか」

30:25

「朝から酒盛り、幸せそう。気持ちのいい歌いっぷりは今ではパロディのようだ」

「どうしてここは長いシーンなのだろう。どこからか歌声が聴こえる」

「朝から半裸でお酒飲んで歌うのいいな」

次回(2022年9月)は、No.69『新幹線試乗』をみんなで見ます。

サンデー・インタビュアーズとは
昭和の世田谷を写した8ミリフィルムを手がかりに、“わたしたちの現在地” を探求するロスト・ジェネレーション世代による余暇活動。地域映像アーカイブ『世田谷クロニクル1936-83』上に公開されている84の映像を毎月ひとつずつ選んで、公募メンバー自身がメディア(媒介)となって、オンラインとオフラインをゆるやかにつなげていく3つのステップ《みる、はなす、きく》に取り組んでいます。本テキストは、オンライン上で行うワークショップ《STEP-2 みんなで“はなす”》部分で交わされた語りの記録です。サンデーインタビュアーズは「GAYA|移動する中心」*の一環として実施しています。https://aha.ne.jp/si/

*「GAYA|移動する中心」は、昭和の世田谷をうつした8ミリフィルムのデジタルデータを活用し、映像を介した語りの場を創出するコミュニティ・アーカイブプロジェクト。映像の再生をきっかけに紡がれた個々の語りを拾い上げ、プロジェクトを共に動かす担い手づくりを目指し、東京アートポイント計画の一環として実施しています。

主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、公益財団法人せたがや文化財団 生活工房、特定非営利活動法人記録と表現とメディアのための組織[remo]