US Mommy Track vs 日本版マミートラック 違う意味になってるのはなぜ?
最近、「女性活躍」関係のネット記事を読んで「マミートラック」の使われ方に違和感を感じたことがあります。あれっ?これってネガティブな言葉だっけ?ググってみると、やはり日本語では、ネガティブな意味でした。
Mommy Trackは、私がアメリカの経営大学院に在籍していた93年に、すでに存在していた言葉。女性が母親業を優先するキャリアパスの選択肢の一つじゃなかったっけ?英英辞書でチェックしてみると、私の記憶は正しかった。
やはり、元の英語の意味はニュートラルな単なる選択肢をさす言葉。実際の会話での使用例を思い出してみます。
学生時代,仲の良かったクラスメートは、出産ともに専業主婦になり、子供が5歳になるまで郊外で家庭で過ごし、そこから夫がヘッドハントされたのをきっかけに2人でマンハッタンに移住。彼女は6年ぶりにCPAとして再就職。彼女に、16年ぶりに再会した際の会話はこんなでした。
私 So you enjoyed your mommy track. Nice for you and your son
(マミートラックを楽しめたのね、良かったね!)
友人 Yes, but everything has the price. My boss is 7 years younger than me.
(うん、でもその代償は払ったわ!今の上司は7歳年下よ!)
この会話に全く悲壮感がないのは、「全ての選択にはプラスとマイナスがあり、何を選択するのかについては本人の自由だが、その結果も本人に帰属する」という当たり前の考え方が根付いているからだと思います。全ての選択にはトレードオフがあるのです。
対照的に日本においては、何でもかんでも「企業のせい」「夫のせい」「社会のせい」と他責にする傾向があると思います。この原因については、まずまだ雇用の流動化の過渡期で、一つの企業でのキャリア形成が前提ということもありますが、もっと根本には、日本女性が「自分の人生について自主的に選択し、その結果について責任を取る」と教育されていないことがあると思います。
また、この「女性活躍」ネタで食べているキャリアコンサルト、人事コンサルタント等が、「他責」ベースで議論をすすめていることが、余計に「他責」を許容しているように思います。
「短勤務制度を用意している企業でも、その制度があるがゆえに育児休業明けは事実上、時短勤務以外での復職が難しい」
これは私は全く共感できません・・・時短制度はないよりあった方がよくないですか?ジョブ型の外資系勤務の場合、本来のジョブ・ディスクリプション上の責務の遂行がマストなので、ワーママは、時短勤務の選択が事実上ありません。
妊婦に対しても同じで、同じ部署で働いていた女性が産休に入る前、夕方、「じゃあ、元気な赤ちゃん産んでくださいね」といって別れて、翌日会社にいったら、彼女まだ仕事が終わらずオフィスにいた(つまり8ケ月で徹夜)・・・なんてこともありました。彼女は、赤ちゃんの健康リスクをとっても、自分のキャリア上の評価を優先したのです。
日本企業でも、育休明け社員が「時短を選択しません」といったら企業の方は大歓迎ではないでしょうか?少なくとも、私の知る限り、日系企業の管理職で「時短を取らない」事を歓迎しない人はいません。
マミートラックを選択したくなかったら、夫に家事育児なりを託す、ベビーシッターに全面丸投げする等して、出世コースを目指せばよいだけの話だと思います。それを、今度は「制度があるからいけない」とどんだけ他責なの!?
そもそも、マミートラックのせいで「出世コースから外れていったりする」といいますが、男だって40歳くらいには大半が出世コースから外れてます。
それ以前に、今の男性は出世願望もないのです。
日本版マミートラックについては、さらにこんな解説が。
ん? このtrackは、pathと同じ意味で、「競技用トラック」には全く関係ないよ。パーソルキャリアさん、わざとやってる?これ、最初に日本にこの概念を持ち込んだのって誰なんだろう?誰か知っている人がいたら、教えてください!
まとめ:日本語のマミートラックは、英語のmommy trackと異なり、「不本意ながら」というニュアンスがある。使うときは要注意!!