Spectrum Tokyo Festival 2024 day2に参加してきました。 #spectrumfest2024
day1に続いて参加したので引き続き簡単に。
セッションの感想
デザインがもたらすウェルビーイングの可能性
株式会社マネーフォワードのNatsuha Nakaneさんによるプレゼンテーションは、デザインとウェルビーイングの関係性に焦点を当てたものでした。
冒頭では、Well-beingという概念自体は明確な定義が難しい(Unclear)としながらも、人々をよりよい状態(Good state)へと導くために、個人的・社会的なプロセスを意識してデザイナーの仕事に取り組むべき、と強調されていました。
現代では、デジタル、特にスマートフォンの技術(無限スクロールによる際限のない情報アクセスや、通知・ポップアップによる瞬間的な情報提供など)が人々のWell-beingに強い影響を及ぼすことを指摘していました。
この状況において、Nakaneさんは従来の生産性重視のKPIをアップデートする必要性を強調しています。新しい指標は「人々にどんな生活を送ってほしいか」「それをどのように計測できるか」という視点で考えるべきとし、この変革の先頭にデザイナーが立つべきだ、と静かながらも力強いメッセージを届けてくれました。
デザイン品質を諦めないために:スクラムで見つけたリソースコントロールの形
株式会社mikanの長瀧彩花さんのプレゼンテーション。
おそらくどの組織も遭遇しているデザイナー仕事多すぎ問題、それに対して思考を止めず、問題を分解し、段階的に進めていくための実践的なアプローチを解説してくれました。
デザインチームでスクラムを取り入れてスループットを上げていく…と言葉にすればシンプルです。
ですが、それの実現のためにスクラムに熟達したインフラチームをロールモデルとして支援を仰いだり、タスク見積もりの基準を揃えるためのワークショップを実施したり…といった進め方のポイントを共有してくれています。
終了後のAMA(Ask Me Anything)では、「見えないタスクを見える化する/不確実性を事前に評価する」といった取り組みについてどのように進めているかを質問してみました。
長瀧さんによれば、「聞きたいことがあるときにはまずこれを埋める」枠組みを整備・活用しているそうです。ターゲットや目的などの項目を書き込み、不足分があれば調査タスクを定義したり、不足すなわち不確実性がどのようなものかを評価し、次の対応を決めているとの回答でした。(プロダクトオーナーやBiz戦略レベルにまで遡るものはいったんPdM預かりとして持ち帰ってもらうなど)
多様なユーザーの「使える」を実現するデザイン
株式会社SmartHR(所属している会社でもお世話になっています)の坂巻舞羽さんのプレゼンテーション。
あいにくアクセシビリティに関しては勉強が不十分で、ずっとやっていない夏休みの宿題のような状態だったので聴講しました。
アクセシビリティには規格として定められた達成基準(JIS X 8341-3:2016)があることであったり、ハンディキャップがある人のためのアクセシビリティだけでなく、グローバル化が進む現代では言語もまたアクセシビリティの論点となり得るといった基礎的な話題から、SmartHR社における「やさしい日本語」の取り組みまで広範な解説が行われました。
プロダクトの翻訳・多言語化については、これまで自分も仕事で取り組んできました。ですが、「翻訳できたとしても、概念(年末調整など)自体を理解できるようにしなければ、日本語を母語としない人はその作業を完了できない」との指摘は、アクセシビリティの取り組みが目指すゴールが遙かに遠いのだと思い知らされました。
デザイナーとイラストレーターの境界線
イラストレーター・アニメーターのHama-Houseさんによる最終プレゼンテーション。
ご自身の経験やそのなかでの葛藤を踏まえ、デザイナーとイラストレーターには境界はないのだ、とのメッセージを届けてくれました。
…と文字だけ見せられても意味不明ですね、申し訳ない。
ですが、実際のプレゼンテーションにおいては非常口のピクトグラムをもとにした複数のグラフィックを呈示し、
デザインとイラストレーションの境界が曖昧であること
境界があるように見えても、どの表現にもデザイン的意図があり、その実現手段がイラストレーションであること
境界がないことを一目瞭然で聴衆に伝えてくれました。(はい、一目瞭然なプレゼンテーションを文字だけで表現しているので意味不明になっています。これが私の文章表現の限界なのでご容赦ください)
終始軽快な語り口で、フェスの名を冠するイベントのトリを軽やかに果たした姿はお見事の一言に尽きます。
(ちなみにHamaさんは登壇時以外はポートレートを描くブースを開いてくださっており、1日目にしれっと並んで描いていただきました。感謝)