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場の量子論における古典的運動方程式

場の量子論において、古典的な運動方程式がどの程度成り立っているのか気になったので考えていきます。


導出

ではどのような状況を考えるかと言いますと、場$${\phi}$$の関数である演算子$${\mathcal{O}[\phi]}$$の期待値を考えます

経路積分で表すと

$$
\begin{aligned} \langle \mathcal{O}[\phi] \rangle &= \int \mathcal{D}\phi \, \mathcal{O}[\phi] \, e^{iS[\phi] + i \int J \phi \, d^4x} \end{aligned}
$$

となり、$${S[\phi]}$$ は作用、$${J(x)}$$ は外部ソース、$${\mathcal{D}\phi}$$ は場の経路積分測度を表しています

では、場の微小変化$${\phi' = \phi + \delta\phi}$$を考えます
このとき積分測度は変化しないとします($${\mathcal{D}\phi' = \mathcal{D}\phi}$$)すると

$$
\begin{aligned} \langle \mathcal{O}[\phi] \rangle &= \int \mathcal{D}\phi' \, \mathcal{O}[\phi'] \, e^{iS[\phi'] + i \int J \phi' \, d^4x} \\ &= \int \mathcal{D}\phi \left( \mathcal{O}[\phi] + \delta\phi \frac{\partial \mathcal{O}[\phi]}{\partial \phi} \right) e^{iS[\phi] + i \delta\phi \frac{\partial S[\phi]}{\partial \phi} + i \int J (\phi + \delta\phi) \, d^4x} \\ &= \langle \mathcal{O}[\phi] \rangle + \int d^4x \left\langle \delta\phi(x) \frac{\partial \mathcal{O}[\phi]}{\partial \phi(x)} + i \delta\phi(x) \mathcal{O}[\phi] \left( \frac{\partial S[\phi]}{\partial \phi(x)} + J(x) \right) \right\rangle \end{aligned}
$$

ここで、2、3行目ではテイラー展開を$${\delta\phi}$$の1次まで行いました

結局この等式が成り立つためには、

$$
\begin{aligned} \left\langle \delta\phi(x) \frac{\partial \mathcal{O}[\phi]}{\partial \phi(x)} + i \delta\phi(x) \mathcal{O}[\phi] \left( \frac{\partial S[\phi]}{\partial \phi(x)} + J(x) \right) \right\rangle = 0 \end{aligned}
$$

と言う等式が成り立つ必要があることがわかりました
これはシュウィンガー-ダイソン方程式と呼ばれています

古典的なオイラー-ラグランジュ方程式

古典的なオイラー-ラグランジュ方程式は、作用の変分がゼロであることから導かれます

$$
\begin{aligned} \frac{\partial S[\phi]}{\partial \phi(x)} = \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi(x)} - \partial_\mu \left( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi(x))} \right) = 0 \end{aligned}
$$

ここで、$${\mathcal{L}}$$ はラグランジアン密度です。

外部ソース 項がない$${J=0}$$ の場合、微小変化はほとんど任意に取れたためシュウィンガー-ダイソン方程式は次のようになります

$$
\begin{aligned} \left\langle \mathcal{O}[\phi] \frac{\partial S[\phi]}{\partial \phi(x)} \right\rangle = i \left\langle \frac{\partial \mathcal{O}[\phi]}{\partial \phi(x)} \right\rangle \end{aligned}
$$

この等式から、場の量子論において運動方程式にはコンタクト項(接触項)が必要であることが見てとれました

具体例

例えば、ボゾン場の演算子 $${\mathcal{O}[\phi] = \phi(y) \phi(z)}$$ を考えると、

$$
\begin{aligned} \left\langle \phi(y) \phi(z) \frac{\partial S[\phi]}{\partial \phi(x)} \right\rangle = i \delta(x - y) \langle \phi(z) \rangle + i \delta(x - z) \langle \phi(y) \rangle \end{aligned}
$$

となります

保存則との関係

上では任意の微小変化を考えていましたが、ここではラグランジアン密度の変化が全微分となるような微小変化を考えます

$$
\begin{aligned}
\partial^\mu X_\mu(x) = \delta\mathcal{L} = \delta\phi(x)\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi(x)} + \partial_\mu \delta\phi(x) \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu\phi(x))}\end{aligned}
$$

すると

$$
\begin{aligned}
\delta\phi(x)\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi(x)} = \partial^\mu X_\mu(x) - \partial_\mu \delta\phi(x) \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu\phi(x))}\end{aligned}
$$

が成り立ちますので、これを作用の変化の式に代入して

$$
\begin{aligned} \frac{\partial S[\phi]}{\partial \phi(x)} \delta \phi(x) &= - \partial_\mu \left( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi(x))} \delta \phi(x) -X^\mu(x) \right) \\ &= - \partial_\mu j^\mu(x) \end{aligned}
$$

となることがわかります
運動方程式が成り立つ場合は

$$
\begin{aligned}
\partial_\mu j^\mu(x)=0
\end{aligned}
$$

が成り立ち保存則になっています
このとき

$$
\begin{aligned}j^\mu(x) = \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu\phi(x))}\delta\phi(x) - X^\mu(x)
\end{aligned}
$$

をネーターカレントと呼びます

外部ソース 項がないシュウィンガー-ダイソン方程式にこの関係を代入すると、

$$
\begin{aligned} \left\langle \mathcal{O}[\phi] \partial_\mu j^\mu(x) \right\rangle = -i \left\langle \delta \phi(x) \frac{\partial \mathcal{O}[\phi]}{\partial \phi(x)} \right\rangle \end{aligned}
$$

となります
保存則も古典とは異なり変換子を含んだ接触項が必要となっていることがわかりました

まとめ

場の量子論でもほとんど運動方程式や保存則が成り立っていることが確認できました
古典とは接触項の分だけ異なることがわかり、実際に用いるときは気をつける必要がありそうです
ほんとは量子論特有の量子アノマリーというものが測度が不変でない場合に出てきますが、ここでは無視しました

より詳しい話は標準的な場の理論の教科書を読むといいと思います
例えば次の本がいいんじゃないでしょうか


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