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猫と人が快適に暮らせる賃貸の作り方、教えます。 〜エピソード8:猫トイレの置き場所

猫トイレの必要な数は、飼っている頭数+1

完全室内飼いを大前提とした時、ほぼ全ての猫を飼っている人が困っている、又は改善したいと思っている事の筆頭が「猫トイレの置き場所」です。一昔前の日本で普通に行われていた「外飼い」であれば、猫は外で用を足して来ますが完全室内飼いの場合、そうは行きません。一般的に猫トイレは「飼っている頭数+1」必要と言われています。諸説ありますが、人間が仕事などで留守にしている際、猫が綺麗なトイレで用を足すことができる様に、と言われています。猫はとても綺麗好きな生き物です。猫トイレにウンチがあると、出来ればもうそのトイレで用を足したくないのです。それが例え自分のウンチであったとしても。人間が留守にしている間、もし猫がウンチをしても、もう1つトイレが予備的にあれば、猫はそちらで用を足すことが出来るから、と言うのが「猫トイレは飼っている頭数+1」の論拠です。しかし日本の住環境において、猫トイレを複数置ける場所など余程広い家でない限り、ないのが実情。賃貸においては更に絶望的です。日本における賃貸部屋の広さは、20㎡前後のワンルームが主流です。このタイプの多くは、リビングをいかに大きく作るか、に主眼を置きます。入居者を募る際、物件情報を載せた通称マイソクに「リビング8畳!」などのキャッチコピーを書きたいためです。当然の事ながらその皺寄せはトイレ、バスなどに行きます。この為、トイレは狭く、ユニットバスは最小サイズを使用する事になります。一昔前はこの解決策の一つとして「バストイレ一体型ユニット」が流行りました。昨今、この一体型は忌み嫌われるアイテムとして、新築・リフォームの際、どんなに狭くても「バス・トイレ別」に無理矢理作ることになり、皮肉なことにバス・トイレの狭小化に拍車をかけています。

最近の猫トイレは猫砂の下にマットを敷けるシステムトイレが主流になっています。人気のある猫トイレ「花王ニャンとも清潔トイレ」は、幅40cm x 奥行55cm x 高さ43cm(ドームタイプ)あります。2個を並べて置こうと思うと1m近い場所が必要になります。猫を室内飼いしている人たちにヒアリングをした結果、賃貸・持ち家に限らず点在して置いていることが分かりました。3匹飼っていて「廊下に1つ、寝室に1つ、リビングに1つずつ置いています。」という方がいらっしゃいますが、これは特殊なケースではなく、ごく一般的な例なのです。

猫は薄明薄暮性動物

猫は薄明薄暮性で、日没や明け方に活発に行動する動物です。人間との生活によりこの習性が薄れたり、個体差があるので全ての猫がそうであるとは言えませんが、多くの猫がこの特徴を持っています。つまり、猫は日没、明け方にご飯を食べ始めます。食べた後は排泄をするのが動物の習性です。つまり猫はウンチを日没・明け方にすると言う事です。ウチで飼っているメス猫ウーを例に解説してみましょう。彼女は夜中から明け方にウンチをする習性があります。夏の時期は早朝4:00頃起き出し、ご飯を食べ、ひとしきり部屋を走り回ってテンションを高め、4:30頃にウンチをします。ウンチをした後は私の枕元へ来てニャーニャーと「ウンチ出来たよ!エライ?褒めて!」と報告しに来ます。(私がトイレに行って確認するまでなき止みません。)我が家はお陰で万年寝不足ですが、猫トイレ置き場をシッカリと確保しているお陰で快適に過ごせています。

猫が糞尿する際の不快ポイントは「音」と「臭い」(人間編)

「猫のウンチやオシッコくらい、朝起きたら片付ければ良いのだから我慢すれば良いじゃないか」と多くの人が思うものです。私も賃貸暮らしの時はそう思っていましたし、実際にそうせざるを得ませんでした。猫が糞尿をする際、人間側が感じる不快ポイントの一つ目が「」です。前述の通り、多くの猫はその習性として排泄物をする前に走り回ったり、高い所に登ったりすることがあります。同様に排泄後、排泄した箇所へ砂をかける習性があります。猫トイレが設置してある部屋への扉が閉まっていたら、猫は「開けて!」と扉をシャカシャカと爪で引っ掻きます。この様に、猫がトイレに行く際はその前後で様々な音が発生するのです。人間が活動している時間帯なら問題ありませんが、夜中の場合、人間はその都度、起きて対処しなければなりません。そして猫の場合、前述の通り、夜中であることが多いのです。例え音を我慢出来たとしても(耳栓やノイキャンイヤホンもありますしね)、結局もう1つの不快ポイントの為に人間は起きる羽目になります。
それが「臭い」です。習性として多くの猫が自身の排泄後に砂を掛けますし、最近の猫トイレ用品は品質がとても高く、吸臭性に優れた猫砂やマットが販売されていますが、それでも限界があります。例えば猫トイレを寝室など人間が寝ている場所の側に設置していた場合、又はワンルームなどの賃貸に住んでいた場合、臭いは容赦なく人間を直撃します。この臭いに朝まで耐えられる方であれば良いのですが、猫は完全肉食の動物なのでウンチの臭いも強烈で、多くの方が臭いに耐え切れず、起きて処理するハメになります。

猫が糞尿する際の不快ポイントは?(猫編)

では、猫が理想とするトイレはどういうものでしょうか。それにはまず猫の生い立ちから話しをしなければなりません。猫の祖先は、13万1千年前に中東の砂漠に生息していたリビアヤマネコであると言われています。リビアヤマネコの生息分布は広く、アフリカ・中近東の砂漠、サバンナ、灌木帯などに生息していました。オオカミなどの大型動物から、蛇や鷹など猫には外敵が沢山いる環境です。こうした外敵から襲われる危険性が高いのが、糞尿をしている時なのです。猫にとって、糞尿をしている時が最も無防備になる瞬間です。手短に糞尿を済まし、砂を糞尿にかけ臭いを消し、素早くその場を去るのは、外敵から逃れるためなのです。彼らはトイレの場所をなるべく視界の開けた所にしていました。これは外敵の姿や気配をいち早く知るためです。室内飼いで外敵に襲われることのない現代の猫でも、前述のウーが取っている行動の様に、トイレ前に走り回る「ウンチ・ハイ」をやったり、砂を執拗にかけたりするのはこの頃の習性がDNAレベルで残っているからだと考えられます。
こうした歴史から考察すると、猫が嫌いなトイレ場所とは「狭い」「囲まれている」「臭いが籠る」「ご飯場所と水飲み場の側」などが挙げられます。
この理論で行くと、上部が囲われたドーム型の猫トイレは猫が嫌いなトイレの代表例と言えるでしょう。

水廻りに設置するのがベスト

では、猫トイレを設置するのにベストな場所はどこでしょうか?「臭いが籠らない」「猫トイレのメンテナンスを用意に出来る」ことが最低条件です。これを適える場所、それは「洗面室」と「トイレ」です。こうした水廻りには必ず換気扇があります。トイレに設置出来れば、猫のウンチを水洗トイレに流す事も可能です。(水洗トイレ対応の猫砂を使用している場合に限ります。また居住区域の条例で禁止されている場合もありますので、要確認です。)洗面室に隣接する風呂場で猫トイレを洗う事も出来るため、飼い主が猫トイレのメンテナンスを容易に行う事ができます。何かと使用頻度の高い水廻りに設置すれば、常に猫トイレに飼い主の目が行き届くようになるので、キレイな状態を保ちやすくなります。結果、猫が快適にトイレを利用する事ができるようになるのです。
それではここで、Gatos Aptが監修した物件での実例を写真と共にご紹介します。

洗面室の一角に猫トイレがこの様に3個置けるスペースを確保。上にはトイレマットや猫砂も置ける大型収納スペース。

横から見た図。ユニットバス手前にトイレが見えます。ここに猫砂を捨てることが出来、人間の導線をまとめる事で世話をし易くしています。

猫トイレスペースの上部には専用換気扇を設置、臭気を籠らせない工夫を施します。

洗面台の下に猫トイレスペースを設置した例

人間用トイレに猫トイレを設置した例

人が世話をし易い環境を整える

大抵の一般的な賃貸では、洗面室に換気扇がなくユニットバスに付いている換気扇と共有するケースが大半を占めます。これだと常時お風呂場の扉を開けっ放しにする必要が出てきます。これは猫を飼っている多くの人にとって都合の悪い状況と言えます。もし風呂場の扉を開けっ放しにしていたら、猫が誤って水を張った浴槽に落ちてしまうかもしれませんし、浴室で糞尿をしてしまう可能性が出て来てしまいます。なので、私が監修する物件の洗面室には、洗面室に1〜2機、浴室に1機の最大3機の換気扇を設置しています。
ここまでして猫トイレにこだわるのは、ひとえに人が猫と一緒に快適に住むのに避けては通れない最大の課題だから、と考えているからなのです。

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