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白いカラス(最終回の3) 平和のアナロジー
いよいよ最終回。
こんな記事を目にしました(2022.09.22)。
台湾の呉釗燮・外交部長(外相)は21日、日本経済新聞の取材に「中国の野望はもはや台湾だけでなく他国にも向けられている」と述べた。
・・・・呉氏は台湾の現状について「中国が軍事力を使ってでも台湾を奪い取ろうとする野心はあまりに明白だ。正直、(ペロシ氏訪台以降)台湾に対する中国の軍事的脅威は高まり、深刻だ」との認識を示した。
・・・・
中国軍の脅威は台湾にとどまらず、日本周辺、東シナ海、南シナ海、インド太平洋など広範囲に及び、活動が活発化している点を指摘。
南太平洋の島しょ国、ソロモン諸島が4月に中国と安全保障協定を結んだことにも触れ、中国の海洋進出に対抗するため「民主主義陣営の連帯が重要だ」と訴えた。
いくら信頼性の高い記事でも、読まれなければ人々の知識とはなりません。
一方、読んでも知識とならない記事もある現実(笑)。
◇ ◇ ◇ ◇
スリーパー効果
スリーパー効果とは、情報源の信頼性が低い記事を読んだ直後、一旦は信頼性の低い記事だと判断していても、4週間程度で、信頼性の低い記事に説得されてしまう、ということ。
https://note.com/gashin_syoutan/n/n05429e449d38
アメリカには swiftvoting という言葉があります。
意味は対立候補への不公正または不正確な個人攻撃ですが、これがガセネタであっても、後々、効いてきて得票数に差をつけてしまうのです。
何が言いたいかというと、
「モリカケサクラ」、「安倍は何もしていない」などは、言ったもの勝ち、「ウソも100回言えば真実になる」ってこと。
それだもの、マスゴミと呼ばれますわ(笑)。
ところが、迷信のように一度作られた行動パターンを打ち消すための消去、実はこれが一番難しい。
大衆とは根拠のない因果関係(トートロジーですね(笑))にすがり、本来すべき努力を怠ったり、冷静な判断ができない生き物なんです。
そして、別々の事柄に見せかけの因果関係を見出してしまっては、勘違いを積み上げていってしまう(笑)。
◇ ◇ ◇ ◇
集団的自衛権
歴史を紐解けば、国益のために政治思想を乗り越えて国家同士が手を組むこともありました。
たとえば、ナチスとロシア、あるいは、アメリカとロシアが手を組んで、英国、フランスに中東から手をひかせることもありましたが、それは例外中の例外です。
Q:ウクライナ侵攻が起こった理由をあげよ。
A1:NATOに加盟しておらず、集団的自衛権が発動されなかったから。
A2:憲法9条がなかったから。
さて、答えはどっち?
それは、A1: 集団的自衛権が発動されなかったからです。
18世紀のヨーロッパで生まれた現実主義は「国家が安全保障を追求するための最善策はパワーを持つこと=勢力均衡(バランス・オブ・パワー)」という秩序原理を掲げました。
現実主義の立場に立てば、パワーの不均衡があれば、不利な国同士が結託すればいい、となります。
そうです、集団的自衛権ですね。
だから、外交によって同盟関係を深めて、国の安全保障対策を講じようとするのです。
かつて、太平洋をはさんで対決したことのあるアメリカでしたが、現在の日本にとって、脅威とはなっていませんし、日本もアメリカの脅威ではありません。
なぜなら、両国は良好な同盟関係を築いているから。
https://note.com/gashin_syoutan/n/n14fd1b25fbdd
それなのに、アベガーたちは、「安倍は何もしていない」「日本はアメリカのポチ」だと言ってきました。
本当に安倍さんは、無能なリーダーだったのでしょうか?
https://note.com/gashin_syoutan/n/nf8aed6608641
では、冒頭に紹介した記事で名指しされていた中国と言えば・・・。
急激な軍拡を行ってきた中国軍の主力の戦闘機、戦闘艦艇、潜水艦は米インド太平洋軍の5~5.6倍。
ミサイル戦力ではさらに大きく引き離しています。
米下院議長ペロシ氏の訪台の際の行動からは、中国が台湾侵攻計画の弱点を克服したことがわかります。
そして、全世界に向けて反日プロパガンダを行っている(日本脅威論)のですから、日本にとっては脅威ですね。
つまり、軍事的な能力が同じでも、その国の意思いかんによっては脅威となり得るのでした。
「集団的自衛権の牽制効果によって(中国やロシアの)過剰な利益追求を目的とする戦争」を抑止する、と考えられないのは、宗教・迷信のなせる技、いや、災いですね(笑)。
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「安全保障のジレンマ」と言う誤謬
コワモテの相手国が日本の憲法改正は脅威だ、とプロパガンダし、それに呼応する格好でマスゴミが、「日本は何がなんでも丸腰にならなければいけない」と書き立てる構図が、これまでの日本でした。
他国には「防衛的に用いられる予定のパワー」と、「攻撃的に用いられる予定のパワー」の区別ができないのだから、軍事力を増強すれば、相手を疑心暗鬼にさせてしまう。
結果として、脅威と感じた他国はさらなるパワー増強に走り、歯止めが利かなくなって、食うか食われるかの無秩序状態になってしまうというのが、安全保障のジレンマ。
でも、これは誤謬です
ロシアのプーチン大統領は21日午前(日本時間同日午後)、国営テレビを通じて国民に演説し、・・・・ウクライナの親ロシア派武装勢力幹部らがロシアへの編入の是非を問う住民投票実施を一方的に表明したことについて「決定を支持する」と述べ、事実上の併合に踏み切る考えを示した。
プーチン氏は演説で、欧米の目的は「わが国を弱体化し、分断し、最終的に絶滅させることだ」と主張した。
ウクライナの領土をロシアの領土に組み込むことで、核兵器の使用を可能にする狙いが透けて見えます。
軍事力に乏しい日本から沖縄を奪った時、中国がプーチンのマネをしないと誰が言えるのでしょう。
脅威かどうかは、軍事的な能力だけでなく、相手国の「意思がどうか」によって決まるのでしたね。
言うまでもなく、アメリカの軍事的能力を見て、日本人は脅威を感じませんよね。
「剣なき天秤は無力、天秤なき剣は暴力」(ルドルフ・フォン・イェーリング「権利のための闘争」より)でした。
つまり、剣は「力」で、天秤は「正義」を測るのですが、法を執行する力という裏づけがなければ、正義は実現できないのです。
裏を返せば、「パワーバランス、抑止力を活用すれば、戦わずして自国を守ることができる」ということです。
攻撃したら「強い軍事力で猛烈に反撃される」とか、「勝っても、利益より被害額が大きくなる」=「あの国と戦ったら損だ」と相手に思わせられたなら、争いが回避されるという点を押さえておくことが重要なんです。
https://note.com/gashin_syoutan/n/n6e4067b9c906
バイアスのかからない目で見た時、日本の防衛力の強化をもって、日本が侵略国家になる意思がある、とか中国を疑心暗鬼にさせてしまう、と言うのは詭弁ですよね。
ウソだと思う方は、ムール・ガイさんの記事で答えを確かめてみてください。
https://note.com/n46_saka/n/nd2677ce8d2f1
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ゲインロス効果
ゲインロス効果:人の感情は変化する量が大きいほど印象に残るというもの。
ナザレのイエスは、パリサイ派などのユダヤ教徒らによって救世主(メシア)を僭称する神への冒瀆者・反逆者とされ、告発されます。
イエスの十二使徒の筆頭ペテロはガリラヤ地方(イスラエル北部)の出身。
大祭司による裁判の前に、イエスはペテロに「今夜、鶏が鳴く前に、あなたは三度、私を知らないと言うだろう」と言いました。
イエスの処刑が決まった時、大祭司の女中がペテロに対し、「あなたもあのガリラヤ人イエスと一緒だった」と言いましたが、ペテロはそれを打ち消します。その後も2度、否定。
この直後すぐ、鶏が鳴きます。
ペテロが死をも怖れずキリスト教の布教に一生を捧げたのは、亡きイエスに対するゲインロス効果のアピールだったのかも。
左旋回系の人がオイラの記事を読んでも、ゲインロス効果を見せてくれるようになる可能性は皆無ですけどね(笑)。
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擬似相関と潜伏変数
「南太平洋のある島では、シラミが健康な者を作る」
上記の文章に因果関係を見いだすことができますか?
うっかりしてると、相関があると思されちゃいますが、これは擬似相関に過ぎません。
3つ目の変数(潜伏変数)として「居心地が悪くなって」を考えてみます。
すると、どうでしょう。
病人は「病気で体温が高くなると『居心地が悪くなって』シラミがいなくなる」となり、「体温が高くならない健康人にはシラミがつく」と解釈することができるようになるのです。
いいですか、「シラミが健康な人をつくる」のではなく、「健康な人は体温が高くないからシラミがつきやすい」と理解すべきなのですからね(笑)。
これも、擬似相関です。
「憲法9条があるから、平和なのだ」
実際には関連がないのに、因果関係があるかのように野党の政治家もマスゴミも言ってきました。
言うまでもなく、3つ目の変数(潜伏変数)は、「アメリカ軍が駐留し、日本に自衛隊があるから」ですね。
友人同士の会話。
「憲法9条があるから、平和なのだよ」
さて、今のあなたなら、どう答えます?
◇ ◇ ◇ ◇
平和を望むなら・・・
「人間は社会的(ポリス的)動物である」とアリストテレスは言いました。
《社会あるところ争いあり、争いあるところ法あり》⇛《社会あるところ法あり》です。
そして、国際社会には、警察組織も警備保障会社もありません。
地政学的に取るに足らない小国は別として、普通の国は自分の身は自分で守るしかないのです。
ラテン語の格言に「平和を望むなら、戦争を準備せよ」というのがあります。
好き好んで暴力の応酬に加わるわけではありませんが、無益な争いに巻き込まれないための唯一の手段は、自ら反撃の力を備える抑止力でしたね。
「各国が戦争を準備することで、平和が達成されうる」というパラドックこそが「平和を望むなら、戦争を準備せよ」なのです。
大事なことなので繰り返しますが、「丸裸になれば『平和』になる」のではありません。
結局、議論が噛み合わないのは、平和の定義が多義的で曖昧だからなのです。
これが多義的誤謬。
つまり、それぞれが違うものを見ながら、てんでバラバラに「ああだこうだ」言っている状態。
https://note.com/gashin_syoutan/n/n47210ce4adc4
「平和とは「ブルジョワジーが行う『悪い戦争』への反対」であるなら、「争いのない平和」はトートロジーとなるのでしたね。
https://note.com/gashin_syoutan/n/nc731b1a5b092
平和は、戦争や暴力で社会が乱れていない状態のこと。
要するに紛争がない状態が平和です。
ならば、
丸裸になる ⇒ 紛争を誘発する
ようなマネをすべきではないですよね。
では、「紛争を誘発しない真の平和」のためには、どうしたらいいのでしょう?
その答えは、こうです。
「真の平和」とは、「武器は作られ準備されるが、使われない」という両すくみ状態のこと。
いかがでしたか?
信頼性の低い記事や情報に惑わされて「現実の向こうにあるユートピアの平和」を夢見る時代は終わったのです。
これからは、神話から脱皮し、現実を直視した上で「真の平和を手に入れる」ために憲法9条を正しく恐れて、正しい議論を重ねなければなりません。
◇ ◇ ◇ ◇
あとがき
これまで、番外編を入れると15話。
それも、長々と書いてまいりました。
現代人は膨大な情報に触れて、記憶が汚染されています。
見聞きした記憶がそのまま正確に保たれているとは限りなくません。後から与えられた信頼性の低い情報によって新たな記憶が作られる可能性があるのです。
オイラがこのシリーズを「『核』ではなく、『書く』」にあたって気をつけたのは、特定の学問分野に偏らず、また、撞着語法にならないように、そして視野を広く持つということです。
憲法9条は国防という目的を果たすための道具であり、国防に役立ってこそその正当性が認められるものなのです。
ユートピアやゼロ・リスク症候群に惑わされてはいけません。地に足が着いた議論こそが、日本を守り、日本人を受益者としてくれるのです。
「過去に平和であった」という事実から、「憲法9条が未来永劫、平和を担保する」という結論は導かれません。
マスコミやその御用学者たちの言説に騙されないアナロジー(類推)を手に入れられる一助になれば、幸甚(こうじん)の至りです。