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【79】ONODAから学ぶ:戦争・孤独と29年戦い続けた男の"眼"にあるもの

先日、劇場公開中「ONODA~一万夜を超えて~」という映画を鑑賞。第2次世界大戦後、戦争終結を知らずに29年間もジャングルの中で生き抜いた方のお話で、当時帰国された際は非常に話題になったと思います。そんな実話に基づいた映画「ONODA」について。

●戦争終結後29年戦い続けた男の信念とは?
●必ず、迎えに行く!!!!必ず!!
●戦争と戦い、そして孤独と戦う
●僕たちは、何のために、戦っているのですか!?
●冒険家の鈴木紀夫さんにも、強烈な信念。

戦争終結後29年戦い続けた男の信念とは?

今回の映画、フランスのアルチュール・アラリ監督によって製作されていますが、全編日本語という、非常に演出にこだわった作品となっています。また、日本映画と違って、フランス映画らしい(?)独特なカメラ回しやカット割りがあって、なんだか新鮮な気持ちで日本の戦争映画を鑑賞している気分でした。

皆さんは、小野田寛郎(おのだひろお)をご存じでしょうか?

第2世界大戦終結後、戦争の終わりを知らず(信じず)に、フィリピンのジャングルでゲリラ戦を29年間続けた、日本最後の兵士と言われる方です。帰還は1974年です。

同じような印象として、横井庄一さんがいらっしゃいますよね。横井さんも28年間残留日本兵として戦い続け、1972年、グアム島から帰還されました。

僕は学生の頃にこのような方々がいることを知ったのですが、衝撃的と同時に「なんで、気づかなかったんだろう?」って思いますよね。

また、「恥ずかしながら」とちょっと後ろめたそうに帰国された横井さんと比較して、小野田さんの目は非常に鋭く光っており、いままさに戦争を生き抜いたという表情が印象深いです。当時の写真を今見ても同様に思います。

どうして、小野田さんは戦争終結後、約30年間も戦い続けたのでしょうか。

僕は、小野田さんのあの「眼」に答えがあるなと思うのです。

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出典:ONODA 一万夜を越えて : 作品情報 - 映画.com

必ず、迎えに行く!!!!必ず!!

以前、終戦60周年のスペシャルドラマで『小野田少尉 遅すぎた帰還』(2005年)というので有名になったので、ご存じの方も多いかもしれませんが、小野田さんは「遊撃(ゲリラ)戦」の教育を受けた方で、なにがあっても必ず生き抜くという命令を授かっておりました。
※スペシャルドラマには、中村獅童さん、堺雅人さんや西島俊之さんも出演されており、これも非常に面白いです!!!

なので、玉砕行為や捕虜になることは固く禁じられていたんですね。映画でも谷口上官の「なにがあっても生き抜け!必ず、迎えに行く!」という言葉が非常に耳に残りました。その言葉をひたすらに信じ続けたんですね。

小野田少尉は、赤津一等兵、島田伍長、小塚上等兵の4人で主に行動します。フジテレビの特番では、ずっと3人だったので、より史実に基づいた出だしだったと言えます。この4人で行動していく中で、徐々に減っていくのが、あまりにも残酷で、あまりにも悲劇的なんですよね。泣けてくる。。。

ただし、4人はジャングルの中に逃げ込んだとはいえ、終戦の連絡くらい入りそうなものですよね?実際、終戦だというメッセージは何度も彼らの耳には入っていたのです。日本から捜索隊が来て拡声器で訴えたり、両親が手紙を送ったり、ラジオ放送で平和な世界が実況されていたり。

しかし、彼ら(主に小野田少尉)はそれを「欺瞞行為」「敵対放送」だと信じていました。遊撃戦を徹底的に叩き込まれた小野田は、常に「これは俺たちを騙す作戦だ!」と考えていたんですよね。

ここに、戦争の悲惨さを感じます。

ある信条を強烈に植え込まれた若き小野田少尉にとって、「戦争」は自分の人生を生きる上で最重要。戦争に勝つために、戦争で生きるために、勝って日本に帰るために。このような条件は、現代の僕たちでは知りようがない「信念」です。あまりにも悲惨な時代だと思うと同時に、こんなにも命を吹き込んで戦い抜く熱い信条に胸を打たれるのです。

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出典:ONODA 一万夜を越えて : 作品情報 - 映画.com

戦争と戦い、そして孤独と戦う

映画は、3時間に及ぶ超大作ですが、正直その長さを退屈に感じることはなく、終始緊迫感がありました。突然びっくりするくらいの銃声音がしたと思えば、それに反応してどこかに隠れたり、迎撃するシーンは、まさに「いつ死ぬか分からない」という事態を想起させました。

また、ほぼジャングルの中で描かれる作品ですが、途中からこの映画は「ジャングルが自分のホーム」みたいにすら感じるところがあります。小野田たち4人が徐々にジャングルの一部になっていくんですよね。

それは映画『キャストアウェイ』のように、無人島で孤独に生き抜く男が徐々に無人島という自然に溶け込んでいくプロットと類似しているのかもしれません。

「戦争」と戦うと同時に、「孤独」に生き抜くという意味では、決して他人事の昔話ではなく、いつ自分がそのように戦い抜くか分からないという普遍性も兼ね備えたメッセージだと思います。

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僕たちは、何のために、戦っているのですか!?

4人いたグループの中で、27年間一緒に行動してきた小塚一等兵が撃ちころされてしまうシーンは、もう小野田さんと一緒に精神崩壊です。切ない、というだけでなく、悔しいという心情がぐるぐると胸の中を蠢きます。

あと2年生きれば、小野田さんと一緒に帰還できたのです。しかし、彼らもしばらくジャングルの中で生き延びるためにフィリピンの民間人を殺したりしてしまっていたので、相手も警戒して小塚さんを射殺してしまったのです。ある意味で仕方ないとも思われるかもしれませんが、30年も付き添ってきた戦友を目の前で失うという辛さは、どれほどのものでしょうか。

想像するだけで泣けてきます。。。

映画の中で赤津一等兵が「僕たちはなにと戦っているんですか!」と嘆くシーンがあり、これも印象に残ったフレーズです。

赤津一等兵は、ひとり投降して政府に助けられたことから、小野田さんたちのことを伝え、捜索活動を駆り立てた立役者ですが、途中彼は「何のために戦っているのか」と問います。戦争時代のことを考えれば、何のために生きているのか、とも言い換えられるかもしれません。

彼は、本当は戦争は終わったのだと思っていました。そこで、自分たちが「もし戦争が終わったのにジャングルの中で戦い続けていたら、、、」という考えになり、ひとり葛藤と戦っていたんですよね。

実際、たしかに、彼らは何のために戦っていたのでしょうか?

小塚さんも小野田さんも、約30年間、何のために戦ったのでしょう。
事実であると同時に、胸に残る残酷な言葉でした。

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出典:ONODA 一万夜を越えて : 作品情報 - 映画.com

映画的な話では、津田寛治さんの演技が非常に良かったです。途中、10年くらいスキップされたタイミングで俳優さんがチェンジしたので「あれ、いきなり津田さんやん!」って思ってしまいましたが、いつのまにか違和感なくなっていました笑

ひとりもがき苦しみながらも、ジャングルで生き抜く津田さんは、本当に孤高の残留日本兵のようでした。この撮影のためにかなり減量されたとのことで、映画公開前に「病気?」とネットで噂されるレベルだったようです。

その為か、当時の本物の小野田さんの写真と見比べてどこか面影があるのです。瘦せこけたような顔と体に、眼光炯炯とした目つき、相手を威嚇するような険しい表情。かなり寄せることに努力されたんだろうな...と感激しました。さすが役者魂!!!

冒険家の鈴木紀夫さんにも、強烈な信念。

また、ラストで谷口元上官がやってきて解除命令を出すシーンも感動ものでした。一発ずつ弾丸を抜いていきながら、最後はしっかり敬礼して武器を解除します。そして涙ぐむ元上官の言葉で、ようやく小野田さんは帰国を決意するのです。命令が絶対。命令がなければ動かない。誇るべき軍人(=信念)の魂ですね。その調整に入った鈴木紀夫という冒険家も、これまたすごい方で、この方のおかげで小野田さんは発見されることになったのです。

皮肉なことに、鈴木さんは、この後、ヒマラヤで遭難して37歳で死亡しています。最後まで冒険家の信条を生き抜いた鈴木さんにもまた、誰にも揺るがせない強烈な「信念」があったのでしょう。すごいですよね。

いや、ほんと凄すぎる冒険家の方です。

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出典:ONODA 一万夜を越えて : 作品情報 - 映画.com

この映画は、他にも音楽や映像など、とても賞賛したい要素があります。若干、史実とは異なるというレビューも拝見しますが、大筋はかなり忠実に再現されていると思います。少なくともWikipediaを見る限りは。

こういう映画はたまに見なくてはいけないなぁと思いますよね。
日本経済が低迷して貧乏な若者が増えて、かなり窮屈な社会になったとも言われていますが、当時の帝国軍人たちの戦いを見ると、なんと平和な世界なんだろうか...と思いますよね。
※映画館を出た後、そのギャップに驚いてしまいました...

勿論、時代が時代なので、現代と比べてどうのこうのという話ではありませんが、いまの日本社会があるのは、紛れもなく過去にこの国を命かけて守り抜いた方々がいらっしゃるからです。

戦争は「忘れてはならない」、人類の最大の教訓でしょう。

小野田さんの力強い目つきから、「戦争」が与える強烈な信念、そして「戦争」を意味する強烈な教訓を、感じ取ることができるのです。

ということで、今日はここで!



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