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劇伴/NEWS
5回目のオンガクノイトマはNEWSの「劇伴」を取りあげます。この投稿に関する前説は下記の記事をご覧ください。
概要
男性アイドルグループのNEWSは今年でデビューして21年目。
このグループはデビュー当時9人で活動していたが、メンバーの脱退によって現在は3人で構成されているアイドルグループだ。
ワタシのなかでは、小山慶一郎(以下、小山くん)と増田貴久(以下、まっすー)の中~高音域の支えとなっているのが加藤シゲアキ(以下、シゲ)の低音である。3人の音域が合わさると幅広い音域を使うことが可能であり、バランスも良い印象を持つ。
インテリの小山くんとシゲに天真爛漫なまっすーというトリオもバランスがいいのである。また、ライブ衣装はまっすーが手掛けており、ファッションセンスの良さが光っている。シゲは小説や脚本をてがけ、文才が秀でた人物である。(メンバーは"先生"という愛称で呼んでいる)
作品について
NEWSデビュー20周年となる2023年8月にリリースされたアルバム「NEWS EXPO」に収録されており、非常にメッセージ性の強い楽曲である。
このアルバムには全曲新曲であるDisc1、ファン投票ランキングにより抜粋した過去の楽曲を3人で歌い継いで再構成したDisc2、2023年METROCKで披露したライブ音源が収録されたDisc3で構成されている。
本楽曲との出会い
近年の音楽フェスではロックバンド以外にボーイズグループの出演が多くなってきた。そんな中でNEWSはMETROCK 2023の東京会場で野外フェスに初出演を果たした。
そして、彼らは昨年に続きMETROCK 2024の大阪会場に出演。
私はこの会場で彼らを生で見て、そしてこの楽曲と出会ったのである。
当日のセットリストは以下のとおり。
劇伴は一番最後の曲として組まれている。最後に持ってくるくらいのメッセージ性の強い楽曲であることは後段で記そうと思う。
#メトロック 2024 OSAKA
— NEWS | ELOV-Label (@NEWS0915_music) May 11, 2024
ありがとうございました!!!
🎶SETLIST🎶
U R not alone
weeeek
未来へ
ROOOTS
紅く燃ゆる太陽
チャンカパーナ
さくらガール
「生きろ」
劇伴
本日披露した一部楽曲のプレイリストを公開中!⚡️https://t.co/LHRCqb8Mtq#METROCK#NEWS_メトロック
詳細情報
「劇伴」は作詞、作曲共にGReeeeN(現:GRe4N BOYZ)が手掛けている。
過去にもNEWSの楽曲を手掛けており、「weeeek」の楽曲提供かつGReeeeN自身がセルフカバーしていることはファンの中でも有名な話である。
GReeeeNの歌詞は隣にいる誰かに対して問いかけ、語り掛けるような言葉遣いで綴られる印象が強く、かつメッセージ性が強いものが多い。背伸びをするような歌詞でもなく、彼らの日常から見えた景色をアウトプットするように書かれたものが多い印象だ。
そんなGReeeeNが書いた「劇伴」とは。
まず、「劇伴」という言葉は何を意味するのか。
映画やテレビドラマなどの劇中で流れる音楽を指す。歌ものについては「挿入歌」と言った語があるため「劇伴」は器楽曲を指すことが多いがその限りではない。
つまり、サウンドトラックやBGMといったところであると推測する。
では、「劇伴」という言葉を本楽曲のタイトルとして用いられたのはなぜなのか。この言葉の意味を把握し、個人的見解で細かく楽曲について解説する。
本楽曲の世界観
クラシック音楽のようなストリングスのあとにスネアの音が響く。
まるでM.ラヴェルのボレロのような曲のはじまりである。
そのあと、ギターが入りコーラスが入って物語のオープニングのような壮大さを感じる。
あ、そうなのかもね 悲しみ不安って 胸ん中膨らんでいくから
心をグッて 押し広げてしまうから どうしても痛いんだね
時計は進んで 越えたnight and day その時 その心に
誰かを受け入れる 場所が出来ている それがきっと優しさかもね
過ぎ去った 失ったものばかり数えては
増えてった 素敵に目をつぶってた
足りなかった ものはなんだ?
誰かの物差しか?
沢山の日々抱えた君『らしさ』へ
音は突然静かになり、まっすーが歌う。
音の緩急によって、序章から本章に物語が移り変わったようだ。
「心をグッて 押し広げてしまうから どうしても痛いんだね」の歌詞から人は悲しみや不安を押し殺して生きがちであり、そのために自分の心を無理に広げることだってある。しかし、その行為は容易くできるものではなく痛みを伴っているんだと伝えて来る。
「沢山の日々抱えた君『らしさ』」に辿り着くまでには、手から零れ落ちていったものばかり数えて、足りないものを追い求めていた。
では「らしさ」とは何か。
「らしさ」を創造するものは手から零れ落ちていったものではなく、その手に残ったものではないのか。
「らしさ」を創造するものは自分以外の誰かではなく、今までの時間を積み重ねてきた自分自身が「らしさ」なのだ、と語りかける。
この物語の主人公に告ぐ
その痛みも全ては次の章のプロローグ
この楽曲の印象的な言葉、それが「主人公」。
主人公とは、その物語を牽引する登場人物を意味する。
ここでは三人称を用いることによって、その物語を俯瞰している人物が語る形で歌詞が綴られている。とある物語の本を開いて読んでいるかのごとく。
「その痛みも全ては次の章のプロローグ」から、人が経験する痛み(≒辛さ)はこれからの成長に必要なバネであると伝えているようだ。経験したことすべてがこれからの成長に繋がっている。
今日までの日 予想通りのことは何一つないし
雨も降れば 晴れもするし 誰のせいでもない世界で
期待はずれ 誤解やズレ 何度も乗り越えながら
たどり着いた 僕らしさは 誰かの何かになれたら
たった一度きりの人生の中で
何も永遠なんかじゃなくても
奪えないものを僕らは知っている
『感動』『想い出』 そして ほら 『イマ』だろう
人生というものは計画通り、予想通りにいくものではない。
そんな人生のなかで沢山の経験をすることで見つけ出せる「らしさ」というものがある。でも、その「らしさ」は自分ひとりで作り出すものではなく「誰か」という自分以外の人物かつ「らしさ」を見出してくれる人物がいることで成立するのである。
人生は一度きり。
そのなかで自分の胸に刻まれ、そして奪われないもの。
それが「『感動』『想い出』 そして ほら 『イマ』」である。
この物語の主人公に告ぐ
今日までのどれも名シーンさ悲劇も喜劇も
未来のシナリオ まだ読者はいない
今を描き尽くして 未来へ繋げてゆけ
この物語(=人生)とは、どんな場面であっても名シーン。いわゆる、大事な時間であり、大事な記憶である。
現時点で書き綴られた物語は過去とイマのページだけ。つまり未来はまだ白紙のままになっている。どんなシナリオを書いていくのかは主人公に任せられているのだ。「未来のシナリオ まだ読者はいない」からこそ、どんな物語を読者に見せてくれるのだろうかという前向きさが伝わる。
今と瞬間(いま)が明日を作る
今と瞬間(いま)を描き足していく
負けて 泣いても構わないさ
僕らきっと明日への途中
「今と瞬間(いま)が明日を作る」がまっすーソロ、「今と瞬間(いま)を描き足していく」が小山くんソロ、「負けて 泣いても構わないさ」がシゲのソロになり、最後の「僕らきっと明日への途中」でフルコーラスに繋がる。この構成から、メンバーから物語の主人公に一人ずつメッセージを歌で書き記しているような気がした。
「今と瞬間(いま)」という言葉遣いがとても良い。
”いま=現在”という意味でありながらも、今と瞬間では時間の感じ方が異なる。しかし、異なる時間軸のものを重ねることで明日につながることを意味するのではないだろうか。
この物語の主人公に告ぐ 歩みを止めず前へと進みながら
仲間と出逢って 旅を続けてく そんな時ふと隣で奏でる唄
この物語の主人公に告ぐ 悲しみ不安激動も愛も全て
包み込めるように 今日も歌うから
まだ見ぬページの先にある笑顔に会いに行こう
どんな名シーンが待つだろう
「包み込めるように 今日も歌うから」という歌詞から、歌うことで主人公の歩みを支えるようなメッセージが読み取れる。この時点でNEWSからファンに対する応援歌のようにも聴こえるのだ。
最後のギターの歪む音がプツリと音が途切れる部分は、本を閉じたりテレビを消したりするシーンが思い浮かぶ。
物語の終わりではないけども今見える物語は見終えて、では続きを書きに行こうかと歩いていく場面のようである。
全体を通して
さて、タイトル「劇伴」と付けられた意味は何だったのだろうか。
劇伴とは人生のなかですぐそばにあり、人生に溶け込んでいるもの。
例えば、この出来事があったときにこの音楽をよく聴いていた、耳にすることが多かったなど人生と音楽は切っても切れないものである。自然と身の回りにあったりするのだ。
人生には劇伴がずっと流れている。物語を作るにおいて欠かせないものであるということではなかろうか。そして、劇伴がある物語=人生という意味を有しているんではないだろうかと推測する。
個人的解釈ではあるが、この楽曲に込められたメッセージとは「ひとりひとりが人生の主人公であり、自ら物語を作り出していくものだ」ということだと考える。
人生のなかで、各々が経験する唯一の出来事だってあるだろう。
人間誰しもまったく同じ経験や記憶を持っているものではない。
だからこそ、そういう背景からアイデンティティが形成される。
そして、これからも続く人生を自分「らしく」生きていってほしいというものを本楽曲にメッセージとして込められているのではなかろうか。