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がらくた宝物殿短編脚本部門

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#短編

くだらないはなし

くだらないはなし

喫茶店。深刻な面持ちのふたり。
そんな顔になるに相応しい深刻な相談がなされたためである。
テーブルには、カレーとナポリタン。

若尾 「っていう」

追谷 「……ふん」

若尾 「……」

追谷 「まあ、それは……そうねえ……ううん」

若尾 「うん。まあ、そうなるよな」

追谷 「うん。なんというか……深刻だな」

若尾 「うん。どうしたらいいかいな」

追谷 「んー……そうねえ。……あんま無責

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引越し

引越し

引越しを業者に頼むと、テキパキと荷物を次々に運んでくれます。

ちょっと前まで自分のものと信じて疑うことのなかった品々が、介入の余地なく部屋の外へ舞い出ていきます。自分の物なのに全く手を出す余地のない鮮やかな手捌き。見ることしかできない私は、必死に築いてきた生活が溶けてなくなっていくようで虚しさと無力感に襲われます。

このまま盗られてしまうんじゃないかと思うくらい業者の方の作業は堂々としていてス

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十二人のいまさら十二人で集まった十二人

十二人のいまさら十二人で集まった十二人

 *pdfの方が読みやすいという方は以下リンクからどうぞ。

「十二人のいまさら十二人で集まった十二人」① 広めの会議室のような場所。12人の人々が集っている。
 テーブルの上にゼッケンが重ねておいてある。
 12人のうちのひとり、4がゼッケンの束を手にし、他の人に配る。

3 これ、ゼッケンつけるんですかね
4 ああ、ちょっと見せてください。1,2,3……人数分あるからとっちゃっていいんじゃない

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