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「芸術なんて綺麗事じゃないんだよ」日本一ハラスメントな芸術家・岡本太郎

本を読んで一度は訪れたいと思っていた場所。「母の塔」が突然その姿を現し、圧倒的なスケールに足が止まりました。

快晴の空を背に立つその姿は、岡本太郎自身のエネルギーが具現化したかのようです。この作品が迎えてくれる川崎市岡本太郎美術館で、たっぷりとその世界に浸りました。

母の塔(手前に映る人と比べるとそのスケール感に圧倒されます)

「爆発だ!」──芸術は生きることそのもの

館内には順路がなく、訪れる者が自分の感覚に従って自由に歩くことができます。この空間そのものが、岡本太郎の哲学を体現しています。彼が語った「芸術なんて綺麗事じゃないんだよ」という言葉は、威圧感や不快感さえ与えるその作品に込められた挑戦的な姿勢を象徴しています。

岡本の生涯を振り返ると、彼はただの芸術家ではありません。パリに渡り、思想家ジョルジュ・バタイユとの知遇を得て、哲学と民俗学にも傾倒するなど、圧倒的な教養が彼の創作の土台でした。画家や彫刻家に限定されない「全存在として生きる」ことを実践し、絵画、彫刻、写真、パブリックアートと多岐にわたる活動を展開しました。

芸術は「答え」ではなく「問い」を生む

岡本太郎はこう語ります。「人間にとって、芸術は特別なことじゃない。生きることそのものが芸術なんだ」。彼は師匠も弟子も持たず、絵画、写真、彫刻、パブリックアートと、多岐にわたる創作活動を続けました。そのすべてに共通するのは、常識を打ち砕く爆発的なエネルギーなのです。

彼の作品は快感ではなく違和感を突きつけます。パリの展覧会で、一人のマダムが2時間立ち尽くして帰り際に「なんかいやな感じ」と呟いたという逸話は、岡本にとっては大成功でした。違和感は新しい視点を生む原動力であり、それを意図的に引き出すのが彼の芸術です。

《傷ましき腕》《夜》《タクト》。彼の作品には、抽象と具体が共存し、私たちに問いを投げかけます。「芸術は答えではなく問いを生む」と彼が語る通り、これらの作品は、見る者に思索の余白を残します。私たちの心に刺さる問いが、次の行動を導く鍵となるのです。

千手

時代に媚びない生き様

「今までの自分なんか、蹴飛ばしてやる。そのつもりでちょうどいい」

岡本太郎

岡本は、固定観念や既存の美意識を打ち壊すことに全身全霊を捧げました。「美しいものとは時代に縛られるものではない」と断言し、「なんだこれは!」と人間に迫る力こそが芸術だと語りました。

彼にとって「今この瞬間」だけが存在し、その瞬間を生きることがすべてでした。「本当に生きる、ということは死んでもいいということだ」。その覚悟が彼の作品に刻まれています。

彼の代表作「太陽の塔」をはじめ、単に造形の美を超え、見る者に圧倒的な違和感を与える。岡本にとって、それこそが芸術の本質だったのです

若い時計台

現代社会では狭いわくの中におさえられているが、しかし人間は本来、八方に意欲をつきだし情熱をほとぼしらせて生きたいのだ。その若々しく、のびきった姿をここにうちだした。のびて行く日本、そして東京の象徴でもある。これは無邪気な生き物。時間を食べてしまって、ぬくぬくと笑っているそういう時間を超えた時間、、機械的でない。人間的な時間を表彰したつもりだ

若い時計台について

彼はまた、常に挑戦者であり続けました。「みんなに理解される芸術なんてくだらない」と言い放ち、批判や非難を恐れず、自らの道を突き進んだのです。岡本の生き様は、私たちに「恐れずに飛び込め」と強く訴えかけてきます。

未来を切り拓く勇気

ウィリアム・モリスは「最後に人間に残る仕事は『飾ること』だ」と語りましたが、岡本太郎の作品は「飾る」以上の力を持ちます。それは私たちの価値観や生き方そのものに鋭く切り込む力です。

生成AIがアートを生み出す時代においても、芸術が私たちの感情に問いを投げ、新たな視点を提供する役割は失われません。岡本太郎の作品は、その問いを投げかける役割を超え、私たち自身の生き方や価値観を根本から問い直す力を持つものです。

美女と野獣

違和感を楽しむ勇気が未来を変える

違和感を楽しむ勇気。それが私たちに未来を切り拓く視点を与えてくれます。岡本太郎の作品に触れることで、固定観念を壊し、新しい感覚を受け入れる心の柔軟さが芽生えます。「なんだこれは!」という感覚を忘れずに生きること。それが彼の問いかけに応える道なのかもしれません。

そして、この「違和感」がもたらす発見は、私が取り組む雇用クリーンプランナーの活動にも通じます。ハラスメントというセンシティブなテーマを扱う上で、綺麗事ではなく、違和感を直視し、言葉にしていくことが求められます。心地よさの裏に隠れた本質を暴き出すこと。それが、新たな気づきと変革の始まりになると改めて実感しました。

岡本太郎美術館は単なる展示空間ではなく、挑戦する生き方を体感する場所と定義したい。この訪問を通じて、私自身も新たな問いを受け取り、それにどう答えるかを考え続けていける。芸術とは生きる力。岡本太郎が残したエネルギーが、これからの私たちに問いを投げ続けてくるはずです。

挑戦しない人生なんて、自分を生きていないも同然だ

岡本太郎

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