世界のエリートが大注目!現代アートの魅力【アート3部作・第3章】
【超訳】創造的なアート鑑賞を育む力が、これからの社会の方向性を決めていく。現代アートは次世代型教育の新たな指針になる
【アート3部作・第2章】で紹介した藤田令伊氏の待望の新作。前作の代表作紹介に加えて、現代アートの昔と今、これからの展望が記されている。加えて、著者が教えてくれる現代アートの鑑賞法や美術館ガイドは完全保存版だ。第1章、第2章から読むと全ての線が点につながり、アートの楽しさが倍増されるのでぜひ、読んでみてほしい。
ビフォー1980
抽象表現主義「体験するアート」(1940〜50)
ポロック、ニューマン、ロスコ
技術進歩によるモダニズム概念が盛んとなり、旧来の表現やかたちを否定し、新しいものへと「変えていくこと」自体が目的的に捉えられた時代。近代社会という巨大なシステムの中で、個々人の生きる意味が見失われがちであり、アーティストたちは表面的技巧的なことよりも、人間の精神が真に発露される根源的な表現を「精神解放」「意識革命」として希求した。
ミニマルアート(1960〜)
フレイヴィン、ジャッド
アートによるアートのためのアート、いわゆるアートの純化。作品は無機的な性格をまとい、もはや感情や情動といった人間的なものとは無縁の域にと到達している。これを発展させたのがコンセプチュアルアートでは、概念勝負であり、アーティストが自分で創る必要もない。人間の営みにおける概念というものの意義を改めて掘り下げる成果をもたらした。
ポップアート(1960〜)
ウォーホル
身の回りの日常を見直し、平凡な存在に時代のアイコンを見出した時代。大量生産・大量消費社会を肯定的に捉え、エリートへの反発でもあり、世俗的大衆文化に価値が見出された
アフター1980
シミュレーショニズム
シンディ・シャーマン
真実と虚構の区別がつかない作品。誰でもあって、誰でもない私としかいいのようない不思議な人物。哲学者ボードリヤールがシミュラークルによって形作られており、真実性と虚構性の交錯する世界(ディズニーランド)を説いた。
アブジェクトアート(おぞましいアート)
ゴーバー、ケリー、会田誠
人間心理の不合理なもの、残虐性など、理性では認めたくないものを、どこか希求するところがあるという矛盾が存在していることをあからさまにした。旧来の建前的な価値観だけでは説明し切れなくなった社会の状況に即応して生み出されてきている。
エッセンシャル・ペインティング
デュマス
ひとつの求心力で全体を統べることができなくなり、結果として分散的で全てが辺縁的な作品。アヴァンギャルドな精神を放擲し、ひとりの素の人間の等身大の関心を、肩を怒らせることなく表現する画期となった。
YBAs
ダミアン・ハースト、トレイシー・エミン
プロデュースされたアーティストたちの存在が躍動し、アートとお金が近しい存在として注目を浴びることになった。ダミエン・ハーストは母牛と子牛が真っ二つの切断されホルマリン漬けにされグロテスク剥き出しの対比。エミンは、恋人と数日間を1台のベッドの上で過ごし、食事から飲食、セックスの痕跡まですべてを曝け出したスキャンダラスな作品
バンクシー(世界一有名なアーティスト)
2017年にイスラエルに対する強烈な批判として「世界一眺めの悪いホテル」のオープンなど権力に歯向かい、体制にNOを突きつけるスタンスはデュシャン以来のアヴァンギャルド精神の発露である。
いま、現代アートでおきていること
・ライフサイズ鑑賞:感じたことを気負わず自分なりの言葉で咀嚼する
スノビズム鑑賞:知と教養を駆使して現代アートを読み解く
ポピュリズム鑑賞:考えるより楽しむことを重視。流行りに左右される