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『セラピスト』が教えてくれた、自己理解とハラスメント解決への道―心理学の力で築く未来


「セラピスト」 最相葉月
超訳まとめシート

あなたもこの世界を取材なさるなら、自分のことを知らなきゃならないわね(木村晴子)

日本の臨床心理士・木村晴子さんから託されたこの一言は、カウンセリングだけでなく、すべての人間関係や問題解決に通じる普遍的な真理を含んでいます。ユング心理学の影響を受け、患者との関係性を何より大切にした木村さんの言葉が、私たちに『自分自身を知ること』の重要性を静かに問いかけてきます。

私もこの言葉に強く共感しました。相手を理解し解決に導くためには、まず自分自身を深く知ることが重要です。自分が何を求め、何を大切にしているのかを理解することで、他者との健全な関わりが築かれるのです。

カウンセリングの本質 ―自己理解と他者理解の交差点

カール・ロジャーズの「自己実現理論」では、自己理解を通じて人は成長し、他者との健全な関係を築くことができるとされています。ロジャーズは、カウンセリングにおいてクライエントが自身の問題を解決する力を持っていると信じ、カウンセラーはその手助けをするべきだと主張しました。このアプローチは、ハラスメント問題にも通じます。解決策を押し付けるのではなく、対話を通じて相手が自分の力で問題に向き合えるようサポートすることが大切なのです。

本の中で繰り返し語られているのが、「カウンセラーが一人前になるには25年かかる」という言葉。この時間の長さは、自己理解と他者理解の難しさを物語っています。私たちが日常で直面するハラスメントの解決も、深く考え、試行錯誤しながら進めていくべきことだと感じました。

箱庭療法とユング心理学 ―無意識の象徴が問いかけるもの

ユング心理学に基づく箱庭療法も本書の中で大きなテーマの一つです。1929年にマーガレット・ローエンフェルトが考案し、ユング心理学の影響を受けたドラ・カルフが発展させたこの療法は、患者が無意識の象徴を表現することで、自己の内面と向き合う手段として知られています。ユングは「集合的無意識」の概念を提唱し、個々人の内面に存在する象徴的なイメージが、自己理解を深めるための鍵であるとしました。

私たちがハラスメント問題に直面する際も、すぐに解決策を見つけ出そうとするのではなく、相手の行動や言葉を「鑑賞」し、まず受け止める姿勢が求められます。河合隼雄が示した「鑑賞する態度」は、他者と向き合う際に欠かせない姿勢といえそうです。

受容と解釈 ―死のプロセスに見る心の動き

エリザベス・キューブラー・ロスが提唱した「死の五段階モデル」(否認、怒り、取引、抑うつ、受容)は、人が大きな困難や悲しみに直面した時の心の動きを丁寧に描いたものです。このプロセスは、ハラスメントや人間関係のトラブルに直面した時にも非常に参考になります。私たちは、問題や苦しみを受け入れる力を持つことで、そこから少しずつ前進できるんです。たとえ心が一時的に傷ついたとしても、その痛みを理解し、向き合うことで、新たな一歩が踏み出せるのではないでしょうか。

また、中井久夫さんが指摘するように、「治療がどんなに良くても、患者を弱くしてしまう側面がある」という現実も忘れてはいけません。治療者と患者の関係は、どうしても不平等になりがちです。その不平等を最小限に抑えることが大切で、患者が自分の意志で「ノー」と言える力を持つことが、本当に必要な治療を進めるための鍵になります。この姿勢は、単なる強者と弱者の関係を超えて、もっと対等で互いに尊重し合える関係を築くために必要なものだと感じます。

変化の困難さと人間の二面性

「治るためには、必ずといってよいほど、かなしみを味わわねばならないようである」人が変わるって命がけなんですよ」という言葉が、本書の中で特に印象的でした。変わることって、本当に簡単ではない。むしろ、それには大きな犠牲や、勇気が必要だということを改めて感じさせられます。私たちが何かを乗り越える時、そこには必ず痛みが伴うけれど、その痛みをどう受け止めるかで未来が変わるのだと思います。

そして、メイ・サートンの「やさしさは喜びであり、同時に苦痛の源でもある」という言葉もその通りです。人間の心には必ず二つの側面が存在します。どんな行動や感情にも、二つの側面があって、それをただ表面的に捉えるだけでは見えてこないものがある。日常の中で忘れがちですが、その奥にある本質に目を向けていくことが、結局は自分を、そして他者を深く理解するために必要なんだと、自然に気づかされました。

自己理解を深め、他者と共に生きることの大切さ

『セラピスト』を読みながら、自己理解と他者理解の大切さを改めて感じました。心理学の巨匠たちが説く「自己探求」や「他者との関係性」に目を向けることが、私たちが直面するあらゆる問題―特にハラスメント問題の解決に向かうための鍵になるのだと思います。

私は精神科医でもカウンセラーでもありませんが、それだからといって、メンタルヘルスやハラスメントの問題は専門家に任せれば良いというわけではない。実際、私たちの多くは「ハラスメント」や「メンタルヘルス」と聞いても、具体的な内容や対処法を十分に理解していないのではないでしょうか。それは個人の問題ではなく、むしろ社会全体の問題です。

雇用クリーンプランナーが架け橋となる

私が推進している雇用クリーンプランナーという資格は、まさにこのギャップを埋めるために存在します。誰でも挑戦でき、専門家と一般の人々をつなぐ架け橋として、企業や個人がハラスメントやメンタルヘルスに向き合うための道を開きます。専門家だけが声を上げ続けても限界がありますし、ハラスメントのない職場や社会を作るためには、経営者や管理職をはじめとした一人ひとりが正しい知識を持つことが本当に必要です。

自分を理解し、他者と向き合うというのは、簡単ではありません。それでも、学びの機会を広げていくことで、私たちはより良い職場、そして社会全体を築いていけると思います。「雇用クリーンプランナー」は、その第一歩となる資格です。これをきっかけに、私たち一人ひとりが自分と向き合い、共に歩む未来を作っていけたらと思います。

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