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求められるリテラシー

今年も新卒採用のシーズンが始まる。

人が人を選び、人が人を評価することの
難しさを、あらためて実感する。


「ものづくりを通じて自然を大切にする貴社の
姿勢に共感し…」どこかで教えてもらった面接
台本をしっかりマスターしてきた学生はまだ
良い方かもしれない。面接する会社のことを
調べもしないでエントリーしてくる学生も珍し
くない。

リクナビなどでは、大量かつ一括エントリーが
しくみとしてセットされており、それを企業も
期待しているからこそ、そんな悲劇が起きる。
つまり、エントリー数が就活に関わる人たちに
とって無視できない重要なポイントだという
ことだ。

しくみのことはともかく、毎年のように、
就活で内定が出ない学生のことが話題になって
久しいが、まったく能力がないのかと言うと
そうでもなさそうだ。つまり、「下手な鉄砲、
数撃ちゃ当たる」ということで、自分が入社
したいと思っていない企業まで、とにかく
エントリーする。企業も膨大な人数の学生を
相手にするのも大変だから、一定の大学で足切
りをする。要するに、お互いにムダな作業を
して、お互いに傷つけ合っているとしかいいよ
うがない。それでいて「僕は社会から必要と
されていない
」と決めつけているのだ。

「エントリー数の多い企業は優良企業」と決めつ
ける学生の姿勢は、まるでぐるなびで「ここ最
高に美味しい!」と5つ星のレストランが必ず
美味しいと決めつけるのと、そんなに変わりは
ない。学生たちのリテラシーは、そんなものな
のかもしれない。

では、企業のことを研究し、そこで活躍する
ことを本気で願っている学生を賞賛できるかと
言えば、必ずしもそう思えない。大手の企業に
は、必ず縁故採用というのが存在していて、
利害関係に基づく採用というしくみが存在する
からだ。私がそれに気がついたのは、まさに
就活のまっただ中だった。あるテレビ局の
最終面接で、同席していた学生にこう言われた
のだ。

「君は、誰のコネ?」

ああ、美しくも儚(はかな)い現実に、私は
なす術もなく、首を振るしかなかった。

マスコミとは、真実に迫り、巨悪を暴く正義の
味方だと思い込んでいた自分が恥ずかしくなっ
た。そりゃ、そうだろうな。自分の親族を恨む
前に、あまりにも社会のしくみを知らな過ぎた
自分が恨めしかった。
そう考えると、当時の
私のリテラシーも、大したレベルではなかった
ということか。

振り返ってみると、現在、所属している会社は
手前味噌だが、なかなかいい。売上や利益だけ
を言っているのではない。それこそ人材が多様
で、ごつごつしていて、ぶつかりがいがある
会社だと思う。

問題がない訳ではないが、
問題が無いように見える会社の方が、
もっと問題だ。


片時も休む暇がなく、つねに課題がわき上がっ
てくるこのアグレッシブな状況には、やりがい
とかとやかく言う前に、まず歩み出す姿勢が
求められるところが、いい。

「新卒一括採用が悪い」と叫んでみても、
意味がない。
「今どきの大学生は覇気がない」と嘆いてみても
仕方が無い。

仕事も、採用も、誰かのせいにしないで、一緒
になって悩み、物事を前に進めるしか、問題を
解決する糸口はないから。

今日とあさって、当社にエントリーした学生
たちのグループディスカッションがある。
今年は売り手市場、つまり、学生側に選択肢が
あるというわけだ。もちろん、人事にとっては
大きな課題ではあるが、こういう状況だから
こそ、当社を選んでくれる学生のリテラシーの
高さに注目してみたいと思っている。

* * *

今も人材採用を担当しているのだが
最近は、部下たちの評価とのギャップに
悩んでいる。

人に対する見方が違うのは
私の価値観が変わったからだろうか?

それとも
流動化している人材が
変わってきているのか?

私からは彼らが
同じような人材を選んでいるように見えるが
そうではないと言い張る。

人材はゴツゴツしていた方がいいのでは
と思うのだが
刺激的過ぎるのも良くないらしい。


そもそも
新卒採用は有効なのか?
という疑問が私にはあり
むしろ、第二新卒の方が
ある程度の訓練を受けてくるだけ
コスパがいいのではと提案したら
すんなりと受け入れられた。

今いる若い社員たちを
理解する方が先なのかもしれない。

#あの時のジブン  |04

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