人生の区切りを迎えて#04
自分以外のこととなると、まずは親のことですよね?
■母親の理想とは真逆の生き方
みなさんの親御さんはお元気ですか?私の父親は私が9歳の時に39歳で亡くなり、カミさんのお父さんも67歳で亡くなっています。そして、それぞれ女親が二人存命で、限りなく元気です。特にカミさんのお母さんは大動脈解離の大手術を経て回復し、若干、リスクは抱えているものの、一人で生活できるまでになりました。私の母は実家の隣に妹夫婦が住んでいるので、現在、行き来はありませんが、元気で暮らしているようです。
早くに父親を亡くした私は、何かにつけて父親がわりを押し付けられてきました。長男であることを理由に、さまざまな制約を受けてきたと思います。親や兄弟にとっては当たり前なのかも知れませんが、私にとっては苦痛以外の何者でもなかったのです。しかも、頑張れば頑張るほど、妹や弟からは疎まれるばかり。優等生を演じていたことが、彼らにとって重荷になっていたようです。
そんな私をみて、そりゃ親は満足だったことでしょう。しかし、私は大学進学を機に、故郷から離れたのです。親も教師も、私が地元で公務員か教師になるもんだと思っていたようですが、あまりにも子どものことを知らなすぎたとしか言いようがありません。そもそもDNAから見ても、どう考えても、お調子者の遺伝子が私の中に存在していたのです。大学在籍中に芸人になろうと真剣に考えましたが、それは叶わず、裏方であるメディアへ就職し、東京へ引っ越すことになりました。
■自分の思うようにならない子どもの存在
母親は、就職の時は地元に戻ってくるものだと思っていたようですが、こちらはそんなことは微塵も思わず、親の知らない世界に突き進んでいくばかり。もうそろそろ、子どもは自分の思うようにならないものだとわかって欲しいと願っていました。
そして結婚し、転職して、子どもが生まれ、いよいよ親とは永遠に離れて暮らすというストーリーが出来上がりつつあったのですが、それは突然、私に襲いかかってきました。弟の死です。職場で作業中に機械操作のミスで亡くなったとの一報が届きました。
それまで、あえて避けてきた故郷への移住を、いとも簡単に決断してしまったのです。今振り返ってみても、なぜそのような考えに至ったのかまったくわからないのですが、とにかく地元に戻らなければならないと思ったのです。
もしかすると、神様による巧妙な策略だったのか。これ以上、私が故郷に帰る理由なんて存在しないことを考えると、何か運命が決められていたような気がしてなりません。母親からすると思った通りのシナリオだったのかも知れませんが、結果としてそうなりませんでした。
■親子といえども別人格であることの認識
血を分けた親や兄弟などと言われますが、近い存在だからこそ、受容れられない何かがあるような気がしています。これは自分の子どもにも言えることですが、相手のことを分かっているつもりでいることがいかに危険であるか、ということです。
東京から帰ってきてからは、親のそばにいることを意識していましたが、ある出来事をきっかけに交流が途絶えています。親はいまだに子どもは自分の所有物であり、コントロールできる存在だと思っていることに気がつきました。40歳だろうが50歳だろうが、部長だろうが役員だろうが、そんなことは関係ない。親がいなければ何もできない頃の存在そのものなんですね。
悲しかった。
会社の人たちからは、親なんだからあなたから歩み寄って、と言われましたが、どうしてもできません。もう生きているうちに会えないかも知れませんが、仕方がないとさえ思っています。こんな気持ちにさせられた私は誰に自分の気持ちを話せばいいのでしょうか。みなさんのように健全な親子関係を築かれている方にとっては、まったく理解できない話かも知れませんが、私が置かれている親との関係はこんな感じで、どのような結末が待っているのかまったく分からないままなのです。
———編集後記———
今回の原稿は、これまでに自分本位の内容ではなく、相手との関係性の話なので、少々方苦しいものになってしまいましたが、他人との関係性を本気で話すならば、このくらいの本音が出てくるのではないかと思ってしまいます。
私の同僚の中には、家族のすべてを受容れ、自ら背負い、それが宿命だと言われる方もいらっしゃいますが、私には到底できそうもありません。それがこの世に存在した意味だとするならば、生まれてこなかった方が良かったと思うくらいです。
誰かに自分の生きる道筋を決められるような人生はごめん被りたい。
自分の子どもに対しても同様に、自分の好きなように、自分の責任において生きていって欲しいと心から願っています。自己責任という言葉は、当局の無責任さを押し付けたような言葉であまり好きではありませんが、こと自分の人生においては、自己責任で生きていきたいと願う今日この頃です。
#人生の区切りを迎えて