第四の小話「無個性人間」

むかしむかし、あるところに、一人の青年がおりました。 青年の住む国は、皆それぞれ個性と呼ばれる異なる色を持っておりました。
今宵は、そんな一人の青年のお話。

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僕には生まれつき個性がない。

この世界に住む人は皆、個性を持っている。個性はやがて色に変わり、その人を表すものとして、外の世界に放出される。

でも、僕には生まれつき、その"色"が無かった。成長しても、色は生まれてこない。
「無個性人間」
周りの人は僕をそう呼んだ。

ある日、僕は一人の少女に出会った。年は僕と同じか、少し下だろうか。
僕は彼女を見て驚いた。彼女には「色」が無かったのだ。

白い丸襟の赤いワンピースを着て、少しボサボサの長い金髪、白い肌の少女は、僕を見てにこりと笑った。
僕は少女に尋ねた。
「君は色を持っていないの?…僕と同じだね。」

「いいえ。あるわよ。私の色は、透明なの。」

僕は驚いた。
「透明なんて聞いたことないよ。僕は、…僕達は、無個性人間なんだ。」

「いいえ。あなたも持っているわ。きちんと。自分の色はいつもちゃんとそこにある。
何にも個性がない事こそ個性なのよ。」

そう答える彼女の笑顔は、どんな色よりも眩しかった。 僕は大粒の涙を溢しながら、彼女の膝に崩れ落ちるようにして泣いた。
彼女は優しく、あやすように僕が泣き止むまでそっと頭を撫でてくれた。

自分の周りに暖かい空気が生まれたのを感じた。

やっと気づいた気がするよ。
僕の色はーーー

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