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花火と手作りクッキー(#シロクマ文芸部)
花火と手作りクッキーを用意して、和子さんは早朝からいそいそと来客の準備を始めます。
お盆になると和子さんは毎年こうして早起きして、隅から隅まで家の中を綺麗に掃除をし、近所のスーパーへ花火を買いに出掛けます。そしてお昼過ぎになると沢山のクッキーを焼くのです。
和子さんは私の叔母さんで、母の二つ年下の妹です。
「どうして叔母さんはお盆になるとクッキーを焼くの?」
「和子はね、お盆になるとご先祖様たちが里帰りをしてくると信じているのよ。おじいちゃんやおばあちゃんも帰って来ると思っているの」
母は少し目を細めながら教えてくれました。
母の話しだと、私のおじいちゃんやおばあちゃんは、少しだけ知的障害のある和子さんの行く末を心配して、お台所の仕事やお掃除の仕方など、家事全般をしっかりと教えたのだそうです。
そして、お菓子作りが得意だった和子さんの作るクッキーは絶品だと、特に褒めていたそうです。
「将来はお菓子屋さんになると良いわね」とおばあちゃんも少し安心した様子で、母に和子さんのことを託していたのでした。
さて、朝早くからクルクルと忙しく働いていた和子さんは、いよいよクッキーを焼き始めました。
私もお相伴にあずかろうと手伝います。
「今年もみんな喜んでくれると良いね」
「うん、花火も準備したし、おいしいクッキーを沢山焼いて食べてもらわないとね」
和子さんは嬉しそうに笑って、腕を振るうのでした。