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軟部腫瘍に罹患した方の不妊治療での妊娠出産の報告

2022年3月20日に行われたAYAがん医療と支援のあり方研究会に参加し、
こんなタイトルで発表をしてきました。

患者さんからしたら驚きかもしれませんが、同じ医療従事者であっても、診療科が違えば常識は違います。

がんの領域と産婦人科や妊娠の領域はかなり距離があるのも事実です。
乳癌関連はその中でもかなり距離が近いですが。

そのため、このような学会にいっては、診療科を超えた関わりをすることで相手の常識を少しでも変えたいと思って活動をしています。
要は宣伝ですね笑

今回は、患者さんからの同意を得た上で、個人情報を伏せた内容での症例報告でした。

患者さんの罹患状況

今回の患者様は27歳の時に、大腿部の軟部腫瘍が発覚していました。
腫瘍の中でも、骨、軟骨、内臓を除いた脂肪、筋肉、血管、神経、関節、リンパ管などのやわらかい組織にできた腫瘍を、まとめて軟部腫瘍といいます。

このように多くの場所にできる可能性があって、実際には30-40種類にも別れますので、「希少がん」とされます。

多くの場合は、手足に発症することが多いと言われています。
今回は大腿部です。

軟部腫瘍の治療

軟部腫瘍の基本的な治療はその腫瘍を取り除く、外科的な治療です。
一般的な「手術」のイメージですね。

それに加えて、抗がん剤を用いた全身治療を行うことで、最近では高い生存率が実現されています。

抗がん剤には多くの種類がありますが、今回の患者さんのケースで言えば、
ドキソルビシン(アドリアマイシン)とイフォスファミドというお薬を使用しています。

ドキソルビシン (アドリアマイシン)は、がん細胞のDNAに入り込み、その成長を止め、死滅させる作用を持つ薬です。

イホスファミドは、がん細胞のDNAに結合し、がん細胞の分裂を止め死滅させる作用を持つ薬です。

この2つを組み合わせた治療をアドリアマイシンとイフォスファミドの頭文字をとってAI療法と呼びます。

このAI療法には、副作用があることが明記されていて、
白血球減少、血小板減少、口内炎など多岐に渡ります。

またイフォスファミドは卵巣への毒性が高リスクであることが知られており、アドリアマイシンは中リスクであることが知られています。

つまり、女性が持っている卵子に対しての悪影響がある可能性が高いということです。

がんサバイバーとしての不妊治療

がんサバイバーとして、早い段階で挙児希望のあった患者様でしたので、
28歳時に来院されまして、体外受精を希望されました。

がん治療後に初めて来院されましたので、前後比較はできませんが、同年代と比べると、若干卵巣予備能力が低い傾向が確認されていました。

その後5年間の間に、4回の採卵を行い、7回の胚移植移植の結果、合計3回妊娠し、無事に3児を出産されています。(これは本当すごいこと)

抗がん剤による影響は不明なところも多いですが、今回の方で言えば、何より早い段階で医療機関にアクセスいただけたことで、28歳から治療を始められたことが何より大きいと感じます。

年齢が高くなれば、妊娠するのが難しくなるだけでなく、流産もしやすくなりますから、1回の出産に至るまでの治療回数も時間も長くなります。

もちろん、がん治療開始の前に時間的余裕がある場合には、先に卵子なり受精卵なりを凍結しておく妊孕性温存を実施できると良いかと思いますが、
今回の方のように、抗がん剤を使用した後でも妊娠のチャンスがある場合もたくさんあります。

なので、将来子供がほしい、って思いがあるのであれば、どんなタイミングでもいいので、早い段階で生殖医療機関を受診してください。
パートナーがいる人は、パートナー側のチェックも必須です。
不妊原因は男女半々ですから。

こんな内容を発表してきました。
今後も少しでも多くの方に伝わるように、コツコツが勝つコツを徹底していきたいと思います。



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