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子宮内膜スクラッチの有効性はない

子宮内膜スクラッチについて、ここ何日か書いてきましたが、
これがまとめとなります。

今回はニューイングランドジャーナルという最も権威のある医学雑誌で2019年に紹介された論文です。

A Randomized Trial of Endometrial Scratching before In Vitro Fertilization
Salah Lensen et al.
N Engl J Med 2019; 380:325-334

多施設共同でのランダム化比較試験というもので、信頼性がとても高い研究デザインで、症例数が1364例ですので、これまでの研究と比較してもダントツ多いといえます。

子宮内膜スクラッチ群690例と非実施群674例を比較しています。
主要評価項目は生児出産と設定しています。
その結果、
実施群:690例中180例(26.1%)
非実施群:674例中176例(26.1%)
となり、両群に差を認めていません。

また、妊娠継続率、臨床的妊娠率、多胎妊娠率、子宮外妊娠率、流産率においても差を認めていません。

なお、子宮内膜スクラッチの痛み(疼痛)の評価は0-10の尺度で3.5となりました。人によってはかなり強烈に痛みを感じていることが報告されています。

着床が少なくとも2回失敗している女性を対象にサブグループ解析をしてみても、有意な差は確認できていません。

つまり、子宮内膜スクラッチの有効性は証明されなかった、軽度の痛みと少数の有害事象が確認された。というのがこの論文の趣旨となります。

これはかなり強烈な内容ではないかと思います。

こうした背景もありながら、改めてその有効性を確認しようというのが現段階ということですね。

現実的に、クリニックで行われる治療の中では、受精卵の状態は毎回違うものですし、子宮内膜の厚さなども異なります。
仮に妊娠をしたとしても、それだけで、子宮内膜スクラッチをしたからだ!と証明できないのが難しいところですね。

今後の報告が待たれます。

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