サービスとお節介の間はアイクリームで出来ている
新しい眼鏡を買った。
今使っているものが古くなってきたので、新調しなくてはと前から思っていたのだが、なかなか踏ん切りがつかなかった。
しかし、仕事もテレワークが増えてきて、暇な時はひたすらスマホをいじる日々……
なんとなく疲れ目も感じていたので、ブルーライトカットのレンズを入れた、新しいものを買うことに決めた。
早速メガネ屋に行き、好みのフレームを選んだ。
レジに持っていき、店員に「今使っているメガネと同じ度数でお願いします」と言うと、店員はすぐに私のメガネを受け取り度数を計った。
ここまではまあ普通だ。
しかし私にメガネを返す前に、緩んだネジを締め直し、簡易的なクリーニングをして、私が渡した時よりも良い状態で返してくれたのだ。
感動してしまった。
彼はただマニュアルに沿って一連の流れ作業をしたのかもしれない。
だとしても当たり前のように、スマートに、こちらが喜ぶ事をしてくれた。
その後も超ド近眼でいつもレンズがめちゃ厚になる私の相談にも親身になってくれ、いくつかあるレンズの種類も一緒に選んでくれた。
素敵な買い物をした。
1万ちょっとの生活必需品。
それを買う事を今まで何度もしてきたが、"買い物"以上の気分になった事はなかった。
本当に嬉しかった。
そして帰り道、洗剤を買うために薬局に寄った。
いつも行く、家の近くの薬局だ。
私がレジに行くと、店員がカゴを受け取り「ご一緒にキャンペーン中の商品はいかがですか?」と言った。
見てみると、知らないメーカーのアイクリームがレジ台に陳列されていた。
「こちら、今キャンペーンでお安くなっております。 目元の小ジワ対策にいかがですか?」と店員は言う。
私は「結構です」と断った。
しかし更に店員は推してくる。
「目元の小ジワに効果がありますよ〜」
「今日は大丈夫です」
あまり嫌な感じにならない様に再度断ったが、またもや「塗って寝るだけで小ジワが〜」と続ける。
うるせーーーーーーー‼︎‼︎
小ジワ小ジワ言うな!
こっちはアラサーなんだよ!
センシティブな内容を繰り返すな!
気にしてないつもりだったけど、そんなに目立つって事かよ!
そう言いたくなったが堪えた。
店員にもノルマがあるかもしれない。
本当に親切で、お得なキャンペーンを教えてくれてるのかもしれない。
そう思って感情を押し殺した。
「あ〜……結構です」
へらっと笑って見せた。
店員は諦めて、会計を始めた。
「ありがとうございましたー
またお越し下さいませー」
店を出た後、なぜだかちょっとだけ涙が出た。
涙は私の小ジワの隙間に居座り、そのまま乾燥した。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?