鬱病になった日。

昨年の秋ごろに鬱病の診断を受けた。


思えば1年で10キロ体重が落ちていた。
始めのうちは危機感はなく、何もしてないけどちょっと痩せてラッキーくらいに思っていた。
5キロくらい減ったところで内科的な病気を危惧したが、職場の健康診断では異常なし。
碌な食事をしていないせいで、血液検査の結果だけがなにやら足りなかったが、これといって再検査が必要な項目はなかった。

更に3キロ程体重が減ると、不整脈やら耳鳴りやらが出始めた。
困り果てて色んな科を受診するも、特に大病ではないというお墨付きを貰うだけ。
もういよいよか、と思い心療内科を受診した。


鬱ですね。
いくつかの質問の後、医師はあっさりと言った。

はあ、そうなんですか、結構元気なんですけどね……
私はそう言って、へらっと笑ってみた。

「今まで体の置き場がなかったね、1人でよく頑張ったと思うよ」

そう言われて、私は初めて知らない人の前で泣いた。
あれ?なんで?と思いながらも、涙が止まらなかった。

ごめんなさい、ちょっと、などと言いながら涙を拭うが、ハンカチがどんどん湿っていくだけで、泣き止む方法がわからなかった。

そんな中でもなぜか頭は冷静で
泣き止まなきゃ、とか、みっともないな、なんて考える余裕があった。

「副作用が強くならないように極少量のお薬からはじめましょう」

宥めるように医師は言った。

はい、お願いします。 しゃくりあげる狭間に、どうにか声に出した。

診察室を出て待合室に戻ると、自然と涙は止まっていた。
私以外の患者がたくさん診察を待っていた。
しくしくと静かに泣く人。
一点をただ見つめる人。
頭を抱えている人。
そんな人達ももちろんいるが、つまらなそうにスマホをいじる人や、受付の人に愛想よく挨拶をして帰る人など
一見して何も問題なさそうな人もたくさんいた。


そうか、別に特別おかしい事じゃない。
満員電車みたいなもんか。と変な納得の仕方をしていた。



この日から、とにかく私は鬱病というものになった。

私は私であったはずだけど、鬱病というものになったらしい。
よくはわからないけど。
それでも確かにこの日、私は満員電車の中の1人であった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?