幸せと健康の間
咀嚼が苦手である。
私は子供の頃から食べ物をあまり噛まない。
咀嚼=喉に通る大きさに分断する
くらいの認識であり、今まで不便に感じた事はなかった。
しかし、家族や友人に指摘され
病気や肥満、認知症のリスクも高まると知って、最近は意識して1口30回を目標に噛む様にしている。
これがとても辛い。
咀嚼回数が増えると、当たり前だが食事にかける時間が増える。
それが私の生活においてかなりの負担になる。
そもそも食事があまり得意ではないのだ。
食べる事自体は大好きで、美味しいものを食べる為に遠くに出掛けたりもする。
自炊で色々なレシピを試す事もある。
しかし人前で食事をする事がとても苦手なのだ。
一般的には精神障害の1つで「会食恐怖症」というらしいのだが、私はその症状に全てが一致している訳ではないので、会食恐怖症なのかと言われると少し違う気がする。
親しい人と食卓を囲む事は楽しいし、
ぼっち飯で外食をする時、周りにいる人間が全く知らない人ならなんの問題もない。
しかし、中途半端な知り合いや今後も恐らく顔を合わせるであろう人達と、同じ空間で食事をする事が物凄く苦痛だ。
例えば職場の休憩室。
そこまで仲良しではないが、顔を合わせれば挨拶する程度の人がたくさんいる。
そしてそれらの人とは今後長い間顔を合わせるだろうし、挨拶程度の関係以上に発展する見込みもない。
例え別のテーブルで、別のグループ同士で固まって食べていたとしても無理だ。
同じ空間に存在している事自体が無理なのだ。
恐らくそのうちの誰かが、私の食事マナーや食べているメニューについて何か陰口を言う事はないだろう。
そこまで興味を持たれているとも思っていない。
でもそういう問題でもないのだ。
とにかく"食事をとっている"という状況を、その人達に見られたくない。
もっと言えば悟られたくないのだ。
野生的な考え方をするならば、睡眠、食事、排泄、性行為をしているタイミングはとても無防備なので、周りを警戒する事は間違ってはいないらしい。
サバンナの皆さんは、その様な時は常に警戒しているという。
しかし私は人間である。
それなりに社会に溶け込まなければいけないし、今後の健康の為にも咀嚼回数を増やさなければならない。
前置きはなり長くなったが、とにかくそんなこんなで1口30回の目標達成の為、周囲を警戒しながら、もぐもぐもぐもぐしているのだが……
嫌だ。
本当に。
もともと嗅覚や味覚が敏感な方ではあるが、噛めば噛むほど食材の嫌な所が目立ってくる。
最初は素敵だと思って付き合った人と、長く一緒にいる事で嫌な部分がどんどん見えていく感じ。
例えばルッコラ。
サラダに入っているとテンションが上がるくらい好きだ。
あの独特の香りがやみつきになる。
しかし1口30回も噛んでいると、変な苦味やら泥臭さ、元々少々あるが、芥子のような辛味も強く感じる。
最悪だ。美味しくない。
そして豚肉。
焼肉にして食べたのが、噛む程につけダレの味は消えて、口の中でどんどん冷たくなっていく。
油は舌に張り付き、養豚場から漂う獣臭のような臭いをうっすらと感じる。
まじで嫌。
わかります?
この気持ち?
東京喰種かって。
そしてもっと最悪なのが、食後の胃痛である。
今までほぼ固形で胃に落ちていっていたものを処理する為に、胃酸MAXで対応していたのが、ある程度粉々になって降ってくるせいか、コントロール出来ていないような感じで、食後の胃痛がやばい。
私は思った。
そもそも身体が咀嚼する仕様じゃないんじゃないか?
こんなに苦痛だらけで噛んで、私になんのメリットがある?
早死にするかもしれないが、今この瞬間の食事を楽しめなくなるなら、死んだ方がいい、と……
はいはい。
もーやーめた。
無理だよ。
人間向いてないねー。
これからも全部丸飲みしまーす。
またねー。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?