見出し画像

フィールドワークに基づくポケモンオフィシャルショップのビジネスを紐解く

はじめに
自分はポケモンの影響で幼少期はカタカナから覚えるなど根っからのポケモン大好きっ子でした。先日何年ぶりかにポケモンセンター・ポケモンカフェに行ったのですが、あまりのかわいさから子供の様に心が踊り、自分のポケモン愛が再熱してしまいました。
なぜ自分が心を動かされたのかを把握するためにもマーケティング・戦略面を調べ、自分なりにまとめてみました。

1.ポケモンオフィシャルショップとは

会社概要
(株)ポケモンの関連会社である(株)ポケモンセンターが運営しています。

商号
株式会社ポケモンセンター
設立
2011年8月25日
代表者
代表取締役社長 上郷頼臣
資本金
800万円
従業員数
150名(2019年3月1日現在)

出店元 株式会社ポケモンセンター 会社概要

店舗数
北海道から沖縄まで全国に28店舗出店しています。
自分は勝手に大都市で数店舗出店していて数は多くないだろうと思っていたのですが、地方都市や富山県、愛媛県、鹿児島県などにも出店していて驚きました。

出店業態
ポケモンオフィシャルショップは2つの業態に分かれています。

ポケモン パワポ

・豊富なラインナップ、体験型店舗であるポケモンセンター
・ターミナルを中心に気軽に立ち寄れて、各店舗ごとに地域限定商品を販売するポケモンストア
2つの異なる業態を運営することで幅広いニーズを満たす店舗展開をしています。

コンセプト 
小村前社長がオフィシャルショップのコンセプトについて、メディアへのインタビューで述べられています。

数あるポケモンの商品を取り揃え、欲しいポケモングッズが必ず手に入る店舗としての存在を第一義にしています。また、ポケモンを好きな方たちが同じ空間に集まって、ポケモンの世界を楽しんでもらえる場を提供するという副次的な目的も持っています。
出典元 ファミ通.com

ポケモンオフィシャルショップはポケモンのキャラクター戦略の拠点として
ポケモングッズを売る店舗機能
ポケモンの世界観を共有することを通じて人が集まるコミュニティ機能
この2点に重きが置かれています。 

財務状況 

ポケモンセンター 決算

(株)ポケモンセンターのとして開示される資料は少ないので限られた情報となってしまいますが、当期純利益、利益余剰金共に順調に数字を伸ばしています。この後の項目で詳しく触れるのですが、国内アニメグッズ市場は減少傾向にある中、成長し続けることができている要因を深掘りしていきます。

2.ポケモングッズを取り巻く環境(PEST分析)

ポケモン パワポ

POINT
①国内のアニメグッズは減少傾向
国内アニメグッズ市場伸び続けているのではと思っていたのですが、2014年以降減少傾向にあります。グッズはアニメ、ゲームなどのコンテンツの人気で売上が左右されるので、YoutuberやTikTokなどによる娯楽時間の奪い合いが影響していると考えられます。

②海外ファンの増加による海外アニメ市場増

ポケモン パワポ2

アニメ全体の産業では海外市場が急激に拡大しています。アニメが人気になることでグッズがお土産としてのインバウンド需要が増すため、海外でも強いポケモンのグッズ売上を伸ばすことに繋がります。近年円安などの影響で観光客が増えていることもポケモングッズの売上を後押ししています。

③ポケモンGOによる20〜30代の回顧層、40代以上の新規層獲得

ポケモンGO ユーザー層

ポケモンGOのは20~30代の過去にポケモンで育った回顧層、40代以上の今までポケモンと関わってこなかった層をユーザーとして獲得することに成功しました。親世代に当たる層のファン獲得により、週末のお出かけ先としてオフィシャルショップの来店需要が増すことに繋がっています。

3.オフィシャルショップのターゲット、ポジショニング

ターゲット
子ども、そしてその親世代がメインターゲットと推測されます。前項でも触れましたが、ポケモンGOなどの人気から親世代のファンを増やしているので、子どもからだけでなく、親世代からの週末のお出かけ先としての動機が生まれると推測されます。

また自分が訪れた際に20代~30代と思われる女性の方、外国人観光客と思われるお客さんが多く居ました。
・上記したポケモンGO効果やインバウンド需要増加→外国人観光客
・メイン商品はぬいぐるみであること、年間通して一番売れる商品がピカチュウのぬいぐるみ→女性ファン 
もターゲットであると推測できます。

因みにポケモンオフィシャルサイトではメタタグにぽけもん、ぴかちゅうなどひらがなも埋め込まれており子供でも検索に引っかかるように作られていたり、新商品のリリースが話し言葉になっている事などから子どもを意識した作りになっています。このような小さな事の積み重ねがポケモンが長年愛されている所以のように感じます。

ポジショニング

ポケモン パワポ3

・ぬいぐるみや商品デザインから「かわいい」
・商品を売るだけでなく、テーマパークのような店舗コンセプトでコト体験に特化した「体験型店舗」
この2点から他のアニメショップと差別化を図っていると推測します。

4.テーマパークとしてのポケモンセンター、お土産屋としてのポケモンストア

実際に店舗をフィールドワークした際に感じたことを踏まえて店舗ビジネスを紐解いていきます。

訪れるだけで楽しめるテーマパークとしてのポケモンセンター

ポケモンセンター 店内

ポケモンオフィシャルショップが取り扱う商品のメインとなるのがぬいぐるみです。店内の至る所にぬいぐるみが並べられており、ファンならその空間に居るだけで幸せになります。ピカチュウなど人気ポケモンだけでなく、マニアックなポケモンのぬいぐるみも数多く販売されており、自分の好みに合わせてぬいぐるみを購入できるのも嬉しいですね。オンラインストアで調べたところ1000種類以上が販売されています。まさに欲しいポケモングッズが必ず手に入る店舗を体現している様に感じます。

画像7

日本橋にあるポケモンセンタートウキョーDXでは過去作品ゲームのシーンが飾られたスポットがあります。親となった大人が再びポケモンにハマるきっかけとなったり、自分の体験を子供に伝えたくなる仕掛けが秀逸だなと感じました。
その他デジタルポケモン図鑑など遊び心満載の仕掛けが多く、売り場全体がエンタメ空間となっています。

ポケモン パワポ4


フラッシュして撮影するとピカチュウが10まんボルトするこの仕掛けには子供だけでなく、多くの大人も写真を撮りながら楽しんでいました。

ポケモン2

その他併設するカフェではポケモンがデザインされたフード、ドリンクメニューを楽しむことができます。さらに日替わりでポケモンが登場し、某テーマパークに負けず劣らず踊ったり、ポーズ決めたりしていました。

ポケセン渋谷 ピカチュウ

またポケモンセンターは店舗ごとにコンセプトが異なっており、最近できたポケモンセンターシブヤは他の業態が白基調に対し、黒基調の店舗レイアウト、渋谷らしいアーティスティックで独特な雰囲気を演出しています。どの店舗に行っても新鮮で楽しめる作りになっている事で、様々な店舗を訪れてみたいと心をくすぐられます。
その他定期的にカードゲームなどのイベントが開催されており、ポケモンの世界観を通じて集まるコミュニティの場として機能も果たしています。

以上のようにポケモンセンターはコト体験に特化したテーマパーク型店舗運営をしています。そのメリットとして

リアルとオンラインを繋ぐ集客拠点
としてエンタメ空間を作り出す

感情が揺さぶられ、お客さんは世界観を持ち帰りたくなる

ぬいぐるみなどグッズが多く売れる

このように来た時以上に買いたくなる仕組みが設計されていると考えられます。自分も最初は買うつもりがなかったのですが、ついぬいぐるみを購入してしまいました。これは観光地などのお土産と同じ仕組みであると考えられます。

また圧倒的な集客力を生かした情報発信地としての機能も果たしています。いわゆるインスタ映えする店舗設計のためSNSでの拡散が見込める点もテーマパーク型店舗ならではの強みです。

お土産屋としてのポケモンセンター

ポケセン愛媛

駅や空港などターミナルエリアに出店するポケモンストアでは店舗ごとに地域限定の商品を販売しています。ポケモングッズのお土産需要を強化した店舗ビジネスであり、国内のファンだけでなく、外国人観光客需要を狙った店舗形態であると考えられます。

5.もし自分がCMOだったら

ポケモンGOのAR 機能を活用した集客装置を作る
ポケモンセンターのテーマパーク型店舗をより生かすためにポケモンGOのAR 機能を活用した仕掛けを設置したいと考えます。アニメや映画のワンシーンなどのパネルを設置し、AR機能を利用して捕まえたポケモンを映し出すことで、自分独自のポケモンの世界観を楽しむことができます。そして前面に鏡を設置し、その鏡を使って撮影者本人もポケモンと一緒に世界観の中に入ることができる作りにする事でより強く心に残る体験になるのではと考えています。 最近ポケモンGOで導入された集合写真モード(お互いのポケモンを同じ画面内に映し出す機能)で友人同士の需要も見込めます。この仕掛けをすることで、集客装置、コミュニティ機能の強化に繋がるのではと考えられます。

トレーナーグッズを増やす事で新規層獲得、客単価UPを狙う
長年続いている結果ポケモンは約900匹存在するそうです。これだけのポケモンをぬいぐるみにするだけで売上は見込めそうですが、ポケモンと共に増え続けているトレーナーグッズの販売を強化していきたいと思います。サトシやカスミなどトレーナー人気は高く、DeNAが昨年トレーナーに焦点を当てたゲームをリリースした事から、需要は大きいと推測します。トレーナー需要はキャラクターグッズにはあまり興味なかったアニメ好きのオタクなど新規層を取り込むことに繋がる、そしてサトシとピカチュウのセットで購入した方にはステッカープレゼントなど企画を盛り込む事で、客単価UPに繋がるのではないかと考えられます。

任天堂他コンテンツとのコラボ
親会社である任天堂の人気キャラクターとのコラボ商品やイベントを増やしていきたいと考えます。お互いの相乗効果が見込める、特に外国人需要は大きいのではいかと考えます。

ポケモン 任天堂コラボ

と思っていたら渋谷パルコの同じフロア内にあるNintendo TOKYOとポケモンセンターが既にコラボしています。Nintendo TOKYOではポケモングッズが、ポケモンセンターではマリオグッズが販売されており、相乗効果を見込んだ仕掛けがされていました。ピカチュウのデザインがマリオのゲームシーンで構成しているなどファンなら心をくすぐられる商品が多く、今後もコラボ商品が増えていくように思われます。

6.終わりに

国内アニメグッズ市場が伸び悩む中
テーマパークのような店舗設計によるコト体験でのグッズの売上促進
ターミナルへの店舗展開でご当地商品を発売し国内・国外のお土産需要を満たす
この2点から売上を伸ばし続けている要因だと考えられます。

そしてポケモンGOヒットによる幅広い層への認知を得られたことがグッズ売上にも大きく影響していることがわかりました。リアルとオンラインの連携は(株)ポケモン企業理念にも現れています。

ポケモンという存在を通して、
現実世界と仮想世界の両方を
豊かにすること。

この企業理念について(株)ポケモン 石原社長がメディアのインタビューで詳しく語っています。

『ポケモン 赤・緑』でゲームの中でトレーナーがカモネギと交換してくれない? と言われて交換する。現実世界で学校の友だちにニャースくれない? と言われて交換する。ゲームの中で起きている価値の交換と、現実世界の価値の交換が同等になっているわけです。ゲームの中で知り合ったトレーナーと現実世界のトレーナーが繋がっていく。ポケモンは現実世界と仮想世界を仲立ちしているのです。VRはゲームにはまりこんで閉じこもって引きこもっていくのに適していますが、そういう世界の閉じ方の真逆にポケモンはいきたいと考えています。現実世界も仮想世界も両方繋いでリッチにしていきたい。
出典元  INSIDE FOR ALL GAMERS 

新作ソフトやポケモンGOによる感動をリアル店舗であるオフィシャルショップでも体験できる、そんな店舗ビジネスであると感じました。

最近スマホアプリやYoutuberがリアル店舗での展開をしている事からもオンラインとオフラインの融合はますます流行していくだろうと感じています。その際にポケモンがどのようなリアル店舗ビジネスを仕掛けていくか注目していきたいと思います。

今後もマーケティングトレースや企業分析、財務分析を行なっていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。
もし気に入っていただけたらいいねやTwitterのフォローしていただけますと泣いて喜びます。


いいなと思ったら応援しよう!