インボイス制度⑥ 消費税の免税事業者がとりうる策とは何か
こんばんわ、皆様とともに成長していく公認会計士・税理士のガッツです。
先日、商工会議所からの会報の中に、インボイス制度のことがわかりやすく書かれてた冊子が入ってました(残念ながら、会員限りのようです)。
それをみて、とある事業者の方も「これはわかりやすい」と反応されていました。
先日、インボイス制度がなぜ消費税の免税事業者につらいのかをお話しました。
結局のところ、免税事業者はどうしたらいいのかを考えてみたいと思います(以下の取引の例をもとに)。
1.どうするか考える前に確認することがあります。
仮にあなたがA社としましょう(かつ、免税事業者)。
どうしましょうと相談する前に、やることがあります。
それは、
・あなたにどういう売上先があるのかどうか(図1だとB社ですが、B社以外に売上先がある方も多いと思います)。
ということをまとめる必要があります。
2.免税事業者が取れる選択肢
①-1 引き続き免税事業者のまま(インボイスは発行できない)、価格も変えない
①-2 引き続き免税事業者のまま(インボイスは発行できない)、消費税相当額の価格を見直す
②-1 令和5年10月より課税事業者となる(インボイスの発行は可能となる)、価格はそのまま
②-2 令和5年10月より課税事業者となる(インボイスの発行は可能となる)、消費税相当額を値上げする
上記について考えると
・①-1:A社の請求書を受け取るB社にとって、消費税の仕入税額控除はできない⇒同じ取引条件の他社があるなら乗り換えられる可能性がある
・①-2:A社の請求書を受け取るB社にとって、消費税の仕入税額控除はできない⇒B社の負担増はない。しかしながら、B社の事務処理は煩雑になるから嫌がられる可能性はある。
・②-1:A社の請求書を受け取るB社にとって、消費税の仕入税額控除はできる⇒B社の負担増はない。しかし、A社は消費税の申告が必要になる。
・②-2:A社の請求書を受け取るB社にとって、消費税の仕入税額控除はできる⇒今って、免税事業者でも消費税込みで商売されていることって多くないでしょうか。そうなれば、消費税をまた乗せるようなことってなかなか難しいのではないか(昨今の材料価格高騰など別の理由での値上げはありえても)
3.どの選択肢がいいのかの優劣ってどうやって決めるのか
■あなた(A社)の売上先がインボイスを求めるような事業者が多いのかどうか
⇒多いなら、選択肢②-1に行く必要性は高いといえます(妥協案で選択肢①-2)。
⇒しかし、例えば、一般消費者や小規模事業者があなたの取引先のメインなのであれば、インボイスは求められないわけですから選択肢①-1でよいかと思います。
■あなた(A社)のサービスが他と代替可能性が高いのかどうか
⇒代わりがきかないなら、価格(インボイス出せるかも含めて)勝負にはならないはずです。ですから、選択肢①-1でもよいのかと思います。
⇒代わりがきくのなら、選択肢②-1になるのではないでしょうか。
上記2点を総合的に勘案して判断するしかないというのが言いたいところです。
4.取りうる選択肢を判断するにあたっての注意事項
インボイス制度についていろいろ考えていったりする中で、免税事業者が課税事業者になるという選択をされるにあたって、以下のような注意点があろうに思います。
①売上先が課税事業者かなんて厳密にはわからない:よほどの仲でない限りは、「あなたは消費税の課税事業者ですか」なんて聞いても答えてくれないです。
②インボイス制度でインボイスってあなたは必要ですかなんて聞いても「?」なことが多い:この制度いろいろありすぎて、税務署も税理士も事業者も混乱があると思います(温度感も違うように思います)。売上先の動向さぐるためにこんなこと聞いても「さあ?」となってしまうことが多いように思います。
そうなれば、①②は売上先がどうかなんて、自分で仮説を立てて判断するしかないのです。
③見かけは大企業でも、フランチャイズなら、あなたのお相手は大企業ではなく、FCの個人経営者です。(例えば、ローソンと名がついても、領収書が必要なのはFCの個人経営者です)。
④課税事業者である⇒消費税の申告がいる⇒消費税申告のための帳簿付けや領収書保存がいる(もちろん、消費税の納税もいります)。
消費税の申告の有無にかかわらずちゃんとしている人もいますが、これまで適当にやっていたものがやりにくくなります。そのあたりの厳しさはインボイス制度④で語っております。
⑤今まで税理士を雇わず自分でやってた人も、消費税の申告となると税理士の頼まざるを得ない場合も多くなる。また、雇っていた場合でも消費税の申告が追加になれば、追加料金となる可能性は高くなる(税理士事務所も相応に工数かかるため)。
⑥細かいことは語りませんが(いくつか申請時期でバラバラなので)、消費税の課税事業者に選択適用申請して、令和5年10月を含む期の申告で「やっぱり無理だ、辞める」となっても、すぐに辞めることはできません(申請方法によって、免税事業者に戻れる時期が変わります)。
消費税は、選択したものに対して、やっぱりやめたはできにくい制度となっています。
どんな選択肢が取れるか、選択肢における優劣、注意事項などを述べましたが、事業者によって、優劣はまちまちです(極論、同じ業種でも)。
自分の状況を整理し、顧客との関係をきちっと向き合い、できれば専門家と相談しながら、対応を決めるのがよいのだと思いますね。
ここではインボイス発行業者が何をすべきかは語ってません(消費税の申告・納税義務があることぐらいしか)が、発行業者に求められることっていうのも判断要素になりますね。
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