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己を磨く

料理人は包丁を研ぐことを欠かさない。大工は鑿(のみ)や鉋(かんな)の刃を研ぎ澄ますことを怠らない。それでは、私たち医療従事者の道具はなにか。紛れもない己自身である。己を磨くということは、脳を磨き、言葉を磨き、技を磨き、心を磨くことであるとも言えよう。まずは、脳を磨くことについて考えてみる。

脳を磨く

脳を磨くというと、医師であれば学会やセミナーに参加し、最新の論文を読むことで新たな知見を取り入れることがまず思い浮かぶ。分野によっても異なるが、医学の進歩は日進月歩であり、情報を常にupdateすることは自分のため、かつ、患者のためにより良い医療を提供するために欠かせない。

しかし、脳を磨くことは情報を取り込むことがすべてではない。『科学的に幸せになれる脳磨き』の著者である脳科学者の岩崎一郎先生は、以下の6つの方法を推奨されている。特に、一番はじめの感謝は脳機能免疫力までも向上させることが証明されている。私たちが脳を活性化させることにより、仕事の効率が上がり、creativitiyが高まり、強いては臨床・研究の質を高めることに通ずる。最終的には、医療従事者にとって最大のエンドポイントである患者・家族のQOL向上に還元されるはずである。しかしながら、実はこれらの方法を習慣づけて実践することは、心を磨くことでもある。

・感謝の気持ちを持つ
・前向きになる
・気の合う仲間や家族と過ごす
・利他の心を持つ
・マインドフルネス(脳トレ坐禅)をする
・Awe(オウ)体験をする

多くの偉人・賢人は、己を磨くために独特のroutineを行っていた。神仏への祈り、先祖への感謝、起床・就眠や食事などライフスタイルに関するこだわりなど様々なことを実践していたと聞く。中でも坂村真民先生は、午前零時に起床して夜明けに重信川(愛媛県)のほとりで地球に祈りを捧げる生活を毎日続けておられた。凡夫には到底真似できるものではないが、先生は身も心も磨き続ける達人であったと言えよう。

先生の詩には、苦しみや悲しみに溢れた世俗という泥の中に、希望・夢・愛という蓮の花が見事に顕現されている。せめてその気概だけでも糧にして、己を磨き続けたいものだ。

六魚庵箴言
その一
狭くともいい一筋であれ
どこまでも掘り下げてゆけ
いつも澄んで天の一角をみつめろ
その二
貧しくとも心は常に高貴であれ
一輪の花にも季節の心を知り
一片の雲にも無辺の詩を抱き
一碗の米にも労苦の恩を思い
一塊の土にも大地の愛を感じよう
その三
いじけるなあるがままに
おのれの道を素直に一筋に歩け

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大坂 巌(おおさか いわお)
社会医療法人石川記念会HITO病院 緩和ケア内科 部長。
1995年千葉大学医学部卒業。静岡県立静岡がんセンター緩和医療科(2002~2018)を経て、愛媛県で病棟、外来、在宅にて適切な時期に最適な緩和ケアを提供することを模索中。
社会医療法人石川記念会HITO病院
病と向き合うだけでなく、どう生きるかに向き合う。











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