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会社で昇格試験論文を書いた

 私の会社では4年ごとに昇格試験があって、(書記補)→書記→主任→主事補→主事→主事上級(エグゼンプト)の順に役職が上がっていく。


 たまに大変優秀な人がいて飛び級で主事上級まで上がる人もいるけれど、概ね4年すれば次のステップに進む機会が得られる制度となっている。


 役職が上がれば当然仕事で求められる役割も変わり、給料も上がることになる。年功序列と言ってしまえばそれまでなのだけれど、ある程度年数を重ねればたいていの人は上に上がっていける仕組みなので、親切と言えば親切なのかなと思わないでもない。どちらにせよ日本的な社内人事制度である。


 自分は今の会社に勤めて3年半が経過し、今年が主任昇格試験を受ける年になっている。試験内容は二つで、筆記(論文+時事問題)と面接である。


 論文は自分の現在担当している業務内容に絡めて問題が出され、かつ想定問題を問題作成者である上長からもらえ、さらに事前に作成して添削もしてもらえるのでかなり出来レース感の強い試験なのだけれど、それでもごく稀に落ちる人が出るらしい。


 面接は11月なのでまだ先だけれど、論文をせっかく書いたので私のいまの仕事を知ってもらう意味も含めて、こちらにも載せてみようと思う。特定の情報は一部伏せてある。


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<問題>
 GIGAスクール構想による児童生徒端末の配布、校内WiFi環境整備により、教育ICTを取り巻く環境は大きく変わりました。今後は自治体規模の大小にかかわらず、端末、アカウント、クラウドサービス、セキュリティといったさまざまな観点から運用管理をしていかなければならず、当社はそのサービス提供をする必要があります。あなたはこのテーマに対してどんな取り組みをどのように進めていくのか、具体的に述べてください。

<解答>
 1. はじめに
 2020年度、GIGAスクール端末が配備され、学校環境で様々なサービスを利用できる基盤が整備された。
 わたしが端末全般を管理する職務に就いたGIGAスクール案件においても、iPad22,000台、Windows10端末7,500台を新規に導入した。尚且つ、MDMサービスや学習系ソフトウェア、フィルタリングシステム等を導入し、教職員と児童生徒が安心・安全に学習を進められる環境を導入した。
 また現在担当している○○市教育委員会での運用業務を通じては、教職員や児童生徒が利用する多くのサービスのアカウント管理業務を実施・メンテナンスし、お客様の要望に対して迅速に対応できる体制を構築している。

2. 課題
 2020年11月、東京都町田市立小学校で「いじめを受けていた」とメモを残して女子児童が自死した事件を巡っては、アカウント管理のずさんさが連日ニュースで取りざたされている。アカウント運用設計が児童生徒の生命をも脅かす事態となっており、システムを導入する当社としても、その管理業務に関して細心の注意を払う必要がある。
 GIGAスクール端末導入以前は教職員アカウントや端末の所属変更・追加・削除のみであったアカウント管理業務は、その範囲に児童生徒アカウントおよび端末が含まれることとなった。かつ、多岐に渡る学習系サービスや端末管理システム、フィルタリングシステムを利用しているため、煩雑なアカウント管理が運用上の大きな課題となっている。
 わたしが現在担当している○○市教育委員会においても、G Suite、Microsoft 365、i-FILTERなど多くのアカウント管理が必要なシステムが稼働しており、生徒や教職員の転校・異動、あるいは氏名変更や職員番号変更などが発生する度に全システムのメンテナンスが必要となっている。エンドユーザーにおいては今日明日にも授業で利用するサービスやオンライン授業を行うのに必須なサービスもあり、迅速に設定変更作業を行う必要がある。
 それらはシステムごとに登録内容の修正が必要となる場合が多く、一方のサービスでは表示名が変わっているのにもう一方のサービスでは変わっていない、あるいは連携する情報に齟齬が生じ、サービスが動かないという事象が容易に発生しうる環境にある。
 年次更新業務で大量の進級・進学処理が発生することに加えて、各自治体によって利用しているサービスがまちまちであることもあって、当社としてはあらゆる自治体に適用可能でかつ多様なシステムのアカウントを一元管理できるソリューションを提案することが求められている。

3. 改善策
 GIGAスクール構想で導入された児童生徒及び教職員のアカウント管理に関して、随時で発生するアカウントの追加・変更・削除作業を自動化し、誰が処理してももれなく重複することなく作業を実施できるよう業務プロセスを標準化する。具体的には各システムに設けられている一括処理を行うインポート用csvファイルの自動生成するツールを作成し、人為的エラーの入り込む余地を無くすことを目指す。
 また、各システムをオンプレミスではなくクラウド上で運用管理することで、システム管理者が遠隔地にいても迅速に設定変更作業を実施できるようにする。
 さらに、当社が推し進めていくべきソリューションとしては、学習eポータルを用いた統合的アカウント管理の利活用促進が挙げられる。学校現場でのトラブルを未然に防止するとともに、教育委員会のアカウント運用管理業務の負担軽減を実現する。加えて、当社の提供するサービスや国が主導するMEXCBTの導入など、新たなシステムへアクセスするハードルを低くすることもできると考える。

4. まとめ
 GIGAスクール構想で導入された児童生徒端末及び各システムはまだ運用が始まったばかりであり、アカウントの運用方針やその管理体制については未完全な部分が多い。わたしが担当する自治体において運用業務プロセスを適正化することは元より、部門を巻き込んでその必要性を訴求していき、他の自治体にその内容を展開していくことが、主任として従事する上での自分の責務であると考えている。
 また今後はシステムを追加導入する議論が進んでいく可能性が高く、そうした際に、稼働している既存システムにおいてアカウント運用設計が整理されていることが前提となる。お客様と当社にとっての利益に資するべく、ここに述べた解決策を実践していく所存である。


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