ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン
ポケモンと縁の少ない生涯を送ってきました。(ここからしばらく自分語りが続きますので、興味のない方は飛ばして下さい。)
以前にポケモンSVの記事を書いておいていまさらなんだが、自分はそれほどポケモンと縁がない。
第一世代が発売された1996年、自分はすでに高校生であり、ポケモンには興味をそそられなかった。
低年齢層を狙ったゲームなのは明らかだったからだ。
その後に大ブームとなるわけだが、それでも自分の興味が向くことはなかった。
実際に始めてプレイしたのは第四世代、ダイパの頃であった。
具体的なきっかけは覚えていない。多分ほんの気まぐれだったように思う。
当時は据え置きハードの勢いに陰りが見え、携帯ハードがにわかに流行りだした頃だったので、その流れかもしれない(確かダイパが発売した翌年にPSPでモンスターハンター2ポータプルが発売された記憶がある)。
実際プレイしていろんな意味で驚かされた。
まず、自分が持っていたRPGの常識ほとんど通用しない。
大抵のRPGはレベルを上げればなんとかなるものと当時の自分は思っていたのだが、どうやらポケモンではそれ以上に相性が重要なようだ。
しかも、少し調べるだけで種族値・個体値・努力値などと言ったポケモン以外では聞いたことのない独自の要素が大量に出てくる。自分はいったい何のゲームをやっているんだ…
また、これだけ奥深くマニアックな育成システムを備えている割に、本編の難易度は意外と大雑把で、相性の良いポケモンを出してごり押しすればクリア出来てしまった。
ストーリーもそこまで印象に残る物ではなく、ぶっちゃけ一人用のゲームとしては凡作でしかなかった。
ただ、さすがにゲームクリアする頃には気づかされた。これは対戦を主眼においたゲームだと。
複雑な相性関係も、マニアックな育成システムも全て戦術の幅を広げるために存在するのだと。
同時に、一人で楽しめるゲームを求めてる自分にとっては、相性が良くないことにも気づかされ、自然と距離を取るようになった。
どうでもいいが、こんなマニアックなゲームを、低年齢層向けのライトなゲームとして売り出す任天堂の手腕には、尊敬を通り越して畏怖の念すら抱く。えげつねェな…
時は流れて2019年、ポケモン剣盾が発売され、最初は様子見していたものの結局購入してプレイした。
なぜなら、RPG好きを称しながら、世界で最も売れているRPGシリーズであるポケモンをほとんどプレイしていないことに、一種の居心地の悪さを感じたからだ。RPG好きを称するならポケモンは避けて通れないと。
その後は、アルセウス・SVとプレイして、つい最近USUMをクリアした。
前置きが長くなってしまったが、そんなわけで今回はポケモンUSUMについて語りたいと思う
いつもの如くネタバレ多めなので、ここから先の閲覧は自己責任でお願いします。
物語
まず、今作の舞台となるアローラ地方は、現実のハワイをモチーフにしたと思われる南国的な地方である。なんといっても出会いの挨拶が「アローラ!」な時点で、ハワイを想像するなと言うのが無理ってもんだ。
登場人物も、見た目が褐色肌に太眉で、性格もカラッとした陽気なキャラが多く、一般的な南国のイメージに則っている。
そんななか異彩を放っているのが、ヒロインのリーリエを始めとしたエーテル財団の関係者である。
ヒロインのリーリエは金髪に白い肌・白いつば広の帽子・白いワンピースというバカンスに来たお嬢様と言ったデザインで、一目でアローラの出身ではないとわかる。
性格的にも、おとなしいが心優しく、時々芯の強さを見せるなど、当時としてもすでに珍しいくらいの、王道ヒロインである。
ライバルの一人であるグラジオは、剃りこみの入った金髪と鋭いまなざし・ところどころ破れた服が特徴のイケメンであり、今作の悪の組織に当たるスカル団に傭兵として雇われている。
また、重度の厨二病患者であり、普段から無口でクールなキャラを装っており、戦闘開始時には某仮面ライダーのようなポーズを取り、戦闘中は常に左手が疼いている。
エーテル財団の代表であるルザミーネは、初登場の時点では特に敵対するような言動は一切見られなかったが、どこか胡散臭いエーテル財団の理念や
、一見慈悲深いが本心が見えない言動などから、黒幕っぽい雰囲気が漂っており、実際黒幕だった。
彼らエーテル財団の関係者と、アローラ地方に出現する謎の空間「ウルトラホール」、その奥に存在する謎のポケモン「ネクロズマ」が本作のストーリの中心となる。
このストーリー自体は、ヒロインの成長物語として王道であり、最終的に大団円を迎えることもあって決して悪いものではない。
各キャラクターも個性的だがどこか憎めない、完全な悪役がいないこともあって、後味の悪さも特に感じられなかった。
反面、肝心の主人公の存在感が薄く、メインシナリオ上では蚊帳の外という印象が強い。
と言うのも、主人公を主体としたストーリーと、リーリエを主体としたストーリが微妙にかみ合っていないからだ。
リーリエのストーリーにおいて主人公の存在は「善意の協力者」という立場でしかなく、極端な話、主人公を別のキャラに置き換えてもストーリーは成立してしまう。
ポケモンの主人公はドラクエ型の喋らないプレイヤーの分身タイプだから、と言う反論もあるかもしれないが、そのドラクエシリーズを始め、ペルソナシリーズや幻想水滸伝など、無口な主人公でありながらシナリオで存在感を発揮した例は枚挙にいとまがない。任天堂関連作品でもマザーシリーズと言うこれ以上ないお手本がある。
また、リーリエは自分のストーリーがひと段落した後、主人公のストーリーには全くと言っていいほど関わらないのも少し寂しいものがある。
まだ格好つけたポーズでエレベーターから降りてきたグラジオのほうが存在感があったくらいだ。
後の話になるが、ポケモンSVでは3つのメインストーリーを同時に進行させながら、ストーリー上で主人公の存在感をしっかりと出していた。
さらに3つのストーリークリア後には、それぞれのストーリーのメインキャラクターとともに最終決戦に挑むという、非常に熱い展開が行われた。
ポケモンがいつごろからストーリーに本格的に力を入れたのかはなんとも言えないが、従来のストーリーを踏襲しながら演出を強化した剣盾、変化球のアルセウス、そしてSVという流れから見るに、本作はポケモンのストーリー性における過渡期にあたる作品なのかもしれない。
戦闘
Zワザ
バトルの基本ルールはいつもと同じ相性バトルのため、詳細は省く。
今回のバトルの目玉要素はZワザであり、これはポケモンの使う技を大きくパワーアップさせるもの。
使い方はポケモンに技のタイプに応じたZクリスタルを持たせるだけ。例えばみずのZクリスタルを持たせたポケモンは、所持するみずタイプの技をパワーアップして使うことが出来る。
Zクリスタルは、タイプ別の18種類を基本とし、一部のポケモンには専用のZクリスタルも存在する。
特に御三家ポケモンの専用Zクリスタルは、ストーリー中に必ず手に入る。効果は折り紙付きで、多少相性が悪くとも問答無用でぶち抜けるほどの威力を発揮する。
このように強力なZわざだが、制限も多い。
まず、一戦闘に一回しか使えないこと。そのため複数のポケモンにZクリスタルを持たせる意味は薄い。また、使いどころを上手く見極めないと、無駄うちになることもある。タイプ相性により無効化されることもあれば、威力が高すぎてオーバーキルになることもあるため、慎重な運用が求められる。
また、Zクリスタルを持たせる都合上、必然的に他のアイテムを持たせることは出来ない。ポケモンにどのアイテムを持たせるかは、戦略上非常に重要で、Zクリスタルを持たせるとそのポケモンはZワザ要因となるため、役割は制限されることになる。
もっとも、本編の難易度では上記を意識しなければならないほどの強敵は存在しないため、対戦するつもりのないプレイヤーは気にしなくても問題ない。
難易度
少し調べたところ、今作の難易度は、シリーズでも高い部類と言われているようだ。
ただ、実際にプレイしてどうにもならないと感じたところは決して多くない。
大抵の局面はエースポケモンのごり押しでどうにかなったし、相性の悪いポケモンに対しても、エースの相性を補完するサブエースを2体ほど用意していけば、ほぼ問題なく切り抜けられた。
ただ、本格的に厳しいと感じたシーンが2か所存在する。それが「ウルトラネクロズマ」戦とポケモンリーグの連戦である。
ウルトラネクロズマはストーリーのクライマックスで戦うポケモンであり、リーリエストーリーにおける事実上のラスボスを務める。
もともとの圧倒的に高い能力値に加え、戦闘開始直後にオーラを発し、全ての能力がパワーアップする(防ぐ手段は存在しない)。
その能力は鍛え上げたエースポケモンを一撃で粉砕するほどである。
幸い相手は単体のため、状態異常を使った搦め手が比較的有効。また、御三家ポケモンは全てウルトラネクロズマの弱点を付けるため、攻撃のチャンスさえ得られれば大ダメージを与えられる。
御三家ポケモンはなかよし度を上げる機会が多いため、ウルトラネクロズマの攻撃をぎりぎりで耐え、反撃の一撃で倒したという声も良く聞かれる。
ポケモンリーグは、四天王+ラスボスの5連戦となる。一人一人もなかなかの強敵だが、5連戦と言うシチュエーションがかなり厳しい。この5連戦、合間にアイテムによる回復の機会こそ設けられているが、アイテムの補充はすることができず、アイテム以外での回復も出来ない。
ウルトラネクロズマ戦が個の暴力なら、こちらは数の暴力と言ったろころか。
もっとも、ポケモンリーグのルールはシリーズ共通のため、シリーズ経験者がここで詰まることは、恐らく少ないとも思われる。
ポケモンの性能について
対戦がメインのゲームである以上、毎回物議を醸すのがポケモンの性能差である。
今作で特に話題になったのが「ミミッキュ」と各島の守り神である「カプ・○○」である。
ミミッキュは特性「ばけのかわ」による最低一回の行動保証と、フェアリー・ゴーストタイプと言う補完性の高い相性タイプによる攻撃の通りやすさにある。
特にに『つるぎのまい』による攻撃積みから『じゃれつく』『シャドウクロー』によるタイプ一致の攻撃に耐えられるポケモンは限られる。
「カプ・○○」はアローラ地方の4つの島の守り神であり、ゲームクリア後より捕獲可能となる。
それぞれ強力な個性をもっているが、特に「カプ・レヒレ」が優秀。
もともとの高い耐久力に加え、みず・フェアリータイプという防御面での補完性の高いタイプ組み合わせ(半減6つ、無効1つ)、特性「ミストメイカー」による搦め手封じなどから圧倒的な耐久力を誇る。
過大の攻撃面も、高い耐久力を活かして「めいそう」で積むことによってある程度フォローすることが出来る。
もっとも、本編ではこれらの強豪ポケモンに頼らずとも問題なくクリア出来る。
そもそもカプ・レヒレは本編では捕獲することが出来ず、ミミッキュも捕獲こそできるが、『つるぎのまい』のわざマシンは本編クリア後にしか手に入らないため、実力を発揮しきれない。
また、本編クリア後のエンドコンテンツでも、クリアするだけなら、わざわざ強豪ポケモンに頼る必要はない。なぜなら、クリア後に捕獲した直後の強豪ポケモンよりも、序盤からコツコツと育成したポケモンの方が、努力値が蓄積されていて強いため、彼らで十分対抗できるからだ。
逆に言えば、エンドコンテンツも含めて本編はあくまで対戦のおまけ、と言えなくもない。
ネットではよく「ポケモンはRPGと言えるのか?」と話題になることがある。
システムだけで判断すれば間違いなくRPGにも関わらずこういう話題が出ることが、ポケモンと言うゲームの独特な立ち位置を示していると言える。
気になった点
対戦ガチ勢ではない自分にとって、育成環境やポケモンの性能バランスはそこまで気になるものではない。
あくまでポケモンを一人用ゲームとして見た場合であるが、そこまで気になった点は特になかった(ポケモン図鑑を完成させるのに通信環境必須なのは気になるが、ここを今さら指摘したところで仕方ないだろう)。
ただ一点、どうしようもなく気になったのが、ダブルバトル時における処理落ちである。
3DSの性能では、同時に4体のポケモンを動かすのは難しいのか、明らかに動きが遅くなる。また、キーレスポンスも異様に遅くなり、一瞬フリーズしたのかと勘違いしたほどだった。
ダブルバトル自体は、シングルバトルとはまた違った対戦バランスとなり、これはこれで面白いだけに、なんとも勿体ない。
総評
いつものポケモン、と言ってしまうのは簡単なのだが、剣盾・アルセウス・SVをプレイした後だと、また違った印象となる。
ストーリー・戦闘・育成など様々な面において後のシリーズ作品に影響を与えたことが伺える。
今作以降、主戦場をswitchに移行すること、ゲーム専用携帯ハードがスマートフォンの台頭により役割を終えたこともあり、ポケモンも大きな転機を迎えるたことを考えると、今作の果たした役割は決して少なくないと言える。
とは言え、現代わざわざプレイする価値があるかと言うと、さすがに微妙な所でもある。
もっとも、ポケモンシリーズはリメイクのペースがやや遅めのため、そちらを待つよりは3DS実機の方がまだプレイしやすい。
気になった方は今のうちにプレイするのが良いだろう。