結構好きですこの作り「聖闘士星矢 The Beginning」
聖闘士星矢は直撃世代。車田正美作品はリングにかけろ、風魔の小次郎などにどハマりした後に来たこの漫画原作は、星座を模した聖衣、ギリシャ神話をベースにした華やかな世界設定が素晴らしく、毎週のジャンプを楽しみにしていたものです。
そんな元ファンが見た今回の劇場版ですが、未見の人が心配するような(あるいは無邪気に叩くような)原作無視の実写版ではなく、間違いなく原作漫画の聖闘士星矢への愛に溢れる作品でした。個人的に核は押さえていたと思います。
ただ、原作ファンが「好き」なポイントが再現されていない部分もあり、この辺が賛否分かれる部分でもあると思います。
まず、星矢の仲間であるドラゴン紫龍や、氷河といった人気キャラクターは登場しません。
また、原作で屈指の人気を誇るであろう、黄金聖闘士は冒頭にちらっと登場するのみで、ストーリーにはほぼ影響を与えません。
つまり今回の映画で語られているのは、大きくアレンジしていますが原作の1話と2話辺り。星矢が修行してペガサスの聖衣(クロス)を身につける展開に、後に現れるキャラクターや本作独自の結末を用意していました。
この原作部分の再現はかなり丁寧で、星矢はストリート育ちの地下格闘家になっていましたが、キド合流後の修行シーンでは、マリン(魔鈴)さんが小宇宙について説明するシーンなど、序盤の醍醐味が詰まっていると感じました。
また、修行場へ星矢が向かう際に垂直の崖を登るシーン(風魔の小次郎の聖剣探しで同様のシーンあり)があるなど、車田漫画へのリスペクトをひしひしと感じました。
そんな劇場版で星矢を演じる新田真剣佑は、かなり念入りに準備したのか、その肉体はギリシャ彫刻のようで、まさに星矢を演じるのにふさわしい身体になっていました。勿論英語も堪能で、本作の主人公を堂々と演じていたと思います。
ヒロインのアテナはシエナとなっており、俳優の雰囲気もあって原作と大分イメージが違いましたが、クライマックスのアテナ覚醒シーンではかなり原作に寄せた雰囲気に変貌しており、個人的におお、と感動したポイントになっていました。
原作から大きく存在感を増したのは、辰巳でしょう。今回マイロックという名前でキドの執事をしていましたが、特殊装甲自動車、Vトール飛行機を自在に操り、銃と格闘技で敵聖闘士をなぎ倒す、本編で一番頼れる味方に変貌していました。演じるマーク・ダカスコスのアクション力も相まって、とても魅力的なキャラクターになっていたと思います。
本作の敵となるのはアルマン・キドの元妻であるヴァンダー・グラード。二人が娘として育てたシエナを巡る意見の相違から、キドはシエナを守り、ヴァンダーは殺すことを目的とし、対立することになります。
敵の先兵は聖衣の力を分析して生み出した暗黒聖闘士。サイボーグ兵士的な扱いで、序盤から星矢と敵対していたカシオスもまた、暗黒聖闘士として立ちふさがります。
グラード側が謎動力で移動する飛行メカで攻めてきたり、この辺かなりSF要素強めなアレンジでしたね。嫌いじゃないです。
そのグラード側の青銅聖闘士として、フェニックスが立ちはだかります。ここ、キャラ名がネロで、いるじゃん黄金聖闘士で、と思ってしまいましたがあれはミロでしたね。フェニックスの聖衣は結構原作に近くてよく動いていた印象です。
音楽は池頼広さん。全体的にハリウッドサントラっぽいリッチな楽曲で、ここぞという時にペガサス幻想アレンジが流れるのも良かったです。Netflix配信の「聖闘士星矢: Knights of the Zodiac」も手掛けられていたのですね。
以上のように個人的に満足な出来なのですが、気になった部分も勿論あって。カシオスとの決着が聖衣を纏った星矢(ここのくだりも原作再原理高くて良かった)によって圧勝で終わるのはいいのですが、ここはやはりペガサス流星拳でド派手に吹っ飛ばしてほしかったところです。あと、折角なら続編を匂わせる要素として、ミドルクレジットやポストクレジットに黄金聖闘士や他の青銅聖闘士を出して、もう少し派手な要素も伝えてほしかったですね。
また、今回字幕版を鑑賞しましたが、実際knightsを聖闘士と字幕をふったり、結構原作ファン向けの意訳をしているように感じました。逆にそれがノイズに感じる時もあったので、原作ファンなら吹替版の方が違和感なく楽しめるかもしれませんね。
パンフレットは880円。用語解説で原作と劇場版の違いや共通点を解説してくれたり、キャスト、監督のインタビューもしっかり記載していたり。何より聖闘士星矢の原作、アニメの年表がとても見やすくて良かったです。私はアニメの黄金魂(2015年)が好きだったなあ。
まあそんな感じで、個人的にはとても楽しめた作品でした。原作ファン全てが楽しめないかもしれませんが、少なくとも映画館で見て損は無い作品だったと思います。