最終的にはシスターフッド?「アビゲイル」
誘拐した少女がバンパイアで、逆に誘拐犯達が襲われる「ドント・ブリーズ」系の一発ネタホラーかと思いきや、意外と丁寧な作りの作品で、かなり満足できました。
まずストーリーや演出が丁寧。主人公のジョーイが冒頭で見せる銃捌きで一般人ではないことをさらっと見せ、素性を明かさない誘拐犯グループの中で、仕草から的確なプロファイルをする事で、ある程度グループのキャラクターを紹介する手際の良さ。そしてその技能が終盤のアビゲイルとの関係性にも活きてくるあたり、とてもスマートでした。
役者の演技もとてもよく。主な出演者でぱっと顔が認識できたのはキャスリン・ニュートンだけでしたが、ゴジラvsコングに出ていたダン・スティーブンスやジャンカルロ・エスポジート、マシュー・グッドなど、大作映画で存在感ある役を演じていた俳優が、閉鎖された空間で吸血鬼に襲われるシチュエーションを、それぞれの役柄で好演していたと思います。
主人公のメリッサ・バレラは私も過去作を見た記憶が無く、日本語版wikiの記載はありませんが、スクリームシリーズに出演していたんですね。先日イスラエルのハマスへの攻撃に反対し、降板させられたことが話題になっていたようで。これからも応援したい俳優になりました。
さて、ホラーと言えば特殊効果やアクションも気になる所ですが、こちらは古典的なヴァンパイアという題材を扱っているだけあって、閉じ込められた古い洋館というゴシックな雰囲気もあいまって、とても手堅く作られていたと思います。日本でもR15という高めな規制がなされたこともあり、序盤から首は飛ぶわ、もはや赤い何かの液体?と脳が麻痺するくらい大量の血が流れるわ、吸血鬼化した人が太陽を浴びたり心臓を杭で貫かれたら爆散して内蔵ぶちまけるわ、なかなか激しい描写になっていました。ただ、凄惨というより笑っちゃうくらいの人体破壊描写でしたので、スプラッター苦手な人でも楽しめるような気がします。
そしてクライマックスは数百年生きているバンパイヤ少女(?)のアビゲイルを倒して終わり、と思いきや、途中から吸血鬼化した誘拐犯の一人がラスボスになりかわり、ジョーイとアビゲイルが、息子を思っているのに会えない母親と、父親に興味を無くされたと悲しんでいる娘という共通点から、疑似親子というよりシスターフッド的な関係を結んで打ち破るという、なるほどそう落とすか、という結末に個人的には大満足でした。狡猾な吸血鬼とは言え見た目少女のキャラが死んじゃうのはいい気持ちしませんしね……。
まあジョーイ以外全滅エンドですが、少なくとも彼女とアビゲイルにとっては救いのあるラストで、生きる希望わくような感じは、先月鑑賞したサユリにも通じるものがありました。
予告を見て興味を持った人には、少なくともネタだけで終わる作品では内のでお勧めできると思いました。