実在の他社を貶せる自由さよ「エア AIR」
現在のNIKEとエア・ジョーダンの浸透っぷりを知っているので、成功は分かっているものの、ではどのようにNIKEがアプローチして、あのエアジョーダンブームが生まれたのか、を本作は描いてくれていました。監督としての実績も十分なベン・アフレックが本作を本当に的確に料理してるなあ、と感じました。
まず本作、劇中にジョーダン本人が出てきません。勿論契約の場には登場し、後ろ姿は映るものの、その顔が映ることはありませんでした。
皆が知ってるアイコンであるからこそ、俳優やそっくりさんなどを配置しなかった判断は、さながら桐島、部活辞めるってよのよう。
その分ジョーダンの母親役のヴィオラ・デイビスの存在感が素晴らしく、決して出番は多くないものの、作品に強烈な印象を残してくれました。
出演者ではNIKEのバスケ部門の選手担当を演じたクリス・タッカーも印象的でした。随分貫禄がつきましたが、マシンガントークは相変わらず。ラッシュアワーが好きでしたので、とても嬉しかったです。
しかし本作はなんと言っても、マット・デイモンとベン・アフレックの息のあった演技でしょう。この二人が同じ画面でやり取りしているだけでニヤニヤしてしまいます。CEOと社員の関係ながらあけすけな言い方をするソニーとそれを受け止めるフィルの会話シーンは、ずっと見ていたくなるほどでした。
ストーリーで言うと表題でも書きましたが、ナイキの競合相手であるコンバースやアディダスを結構貶しており、特にアディダス創始者のあれとか、事実とはいえなんか問題にならんのか……?と心配になったり。
サントラは全編1980年代の曲で彩られており、「あの頃」の雰囲気再現に貢献してくれていました。
パンフレットは880円。こういう作品にしては珍しく日米同時公開だったためか、出演者へのインタビューは少なめでしたが、その分NBAやエアジョーダン、楽曲等への解説が充実しており、作品を取り巻く世界に詳しくなれるのでおすすめできます。