木村文乃良かったなあ「岸辺露伴ルーブルへ行く」
ジョジョのスピンオフを離れ、もはや単独の人気短編シリーズとしての地位を獲得している岸辺露伴シリーズ。NHKで制作されたドラマも好評で、一般向けに「スタンド」の概念を外し、派手なエフェクトがなくても怪異ものとして楽しめる作りは、多くの視聴者を虜にしたと思います。
本作はそんなシリーズ最新作にして初の劇場版。スタッフはほぼ同じで、一枚の絵を巡る奇妙で恐ろしい事件を描いていました。
スタッフは、ドラマ版での作りに自信を深めたのか、びっくりするくらい同じ作り方をしていたと思います。例えば原作漫画、アニメファンへのサービスとして4部の登場人物を出したりはしない。そのかわり荒木飛呂彦漫画のこだわりみたいな部分は随所にみせる。決してファンムービーにはしないという気概を感じ、これは確かに漫画実写化の一つの最適解だろうな、と感じました。
一方で映画化にあたって、画面的にもう少しリッチに出来なかったかな、と思う部分もありました。
例えばパリでのシーン。曇天のルーブルは確かに良いカットだったと思うのですが、多くの人が行き交うパリの街並みに佇む露伴、といった構図がもっと見たかったな、と感じました。
あと、Twitterでも書きましたが、若い岸辺露伴役の長尾謙杜の演技が気になって。所々カタコトみたいな台詞回しになっていて、とても違和感を覚えました。
個人的に気になったのはそれくらいで。木村文乃演じる謎の女性は、露出は多くないのにエロチックな雰囲気を漂わせ、冒頭のオークションシーンからしっかり描かれた伏線は見事。そしてルーブルの地下に眠る黒い絵の怪異も、テレビドラマ同様、派手なエフェクトは控えめながら、見応えがありました。
何より岸辺露伴とバディを組む、泉京香の普通じゃない一般人感により磨きがかかっていたのが素敵でしたね。もはやオリジナルキャラと言っていいほど独り歩きしていた印象があった彼女でしたが、昨年発表されたホット・サマー・マーサでは漫画でも編集として存在感を示し、荒木先生もドラマへラブレターを返しているよう。本作でも原作では未登場ですが、まるで最初から想定されてきたような活躍ぶりでした。
パンフレットは990円。テーマを意識した黒い表紙が素敵で、こういうパンフが邦画でも更に増えてくれたらいいな、と感じる良い装丁でした。
何度も書きましたが、本作は派手さありませんでしたが、距離も時間も飛び越える大胆さは実に映画的だと感じました。
漫画、ドラマを未見でも楽しめると思いますので、興味があれば覗いてみる事をお勧めします。