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今とガッツリ繋がる歴史スペクタクル「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」

80代後半になっても創作意欲の衰えない名匠リドリー・スコット監督による歴史アクション。
前作グラディエーターでラッセル・クロウが演じたマキシマスの死から16年、更なる衆愚政治で衰退の影が色濃い西暦200年のローマで始まる、1人の剣闘士のリベンジストーリー。

主人公のハンノ(ルシウス)をアフターサンのポール・メスカルが演じており、儚げな父親役からマッチョな剣闘士と、振り幅の大きさにびっくりします。
他にもローマの将軍役にペドロ・パスカル、剣闘士のプロデューサー役をデンゼル・ワシントンが演じるなど、豪華布陣が揃った堂々たる大作になっていました。

ストーリーは皇帝の血を引く主人公が腐敗した体制を打破するいわゆる貴種流離譚になっており、そこは結構シンプルなのですが、北アフリカのヌミディア戦士として育ったルシウスは、囚われて剣闘士の身になっても何処か達観した雰囲気を常に纏っており、絶大な安心感を与えてくれるタイプの主人公になっていました。
また序盤の敵役である将軍アカシウスも、実はローマを憂う善人であり、ルシウスの母を助けた恩人でもあることが早々に明かされ、単純な復讐譚ではない群像劇として見応えがありました。

冒頭に前作のダイジェストが油彩風のアニメーションで描かれていたのもテンションが上がりました。勿論あそこだけでストーリーの理解は難しいでしょうが、鑑賞して時間が経っていた身としては、記憶が蘇ってきていい準備運動になりました。

本編ではVFXだけでなく、ロケ撮影も多用したと思われる戦争シーン、コロシアムのシーンは全て良かったです。
特に冒頭のローマ船団が海岸のヌミディア砦を攻略する戦争シーンの迫力が凄まじく、登場人物も皆岩明均先生の漫画「ヒストリエ」のキャラクターみたいに仕上がっており、一気にあの時代に引き込まれていきました。

個人的な突っ込みどころ、見間違いかもしれませんが、本編の壁などに書かれていた文字が、もろに英語だったような気が……。いや、ラテン語もほぼアルファベット同じだから、見間違えただけか……?もう一度見る機会があれば確認しますが、もしこれから見る人が居たら文字を意識してみてほしいです。

今回私が鑑賞したのはドルビーアトモス字幕版。エンドロールを見る限りだと、ドルビービジョンの文字は無く、アトモスのみ対応で、IMAX撮影なども行っていない様子。近所の映画館でも、十分監督が意図する画角で鑑賞することが出来ると思います。

字幕は戸田奈津子さん。近年その意訳が不評でSNSだとかなりきつい言葉が並ぶ翻訳者になりますが、確かに本人達の喋っている英語と字幕を分かる範囲で聞き比べても、かなり大胆に意訳しているなあ、と感じる部分は多かったです。この辺は全編通しての分かりやすさが求められている字幕を長年一手に引き受けられていた人なので、良くも悪くも変わらないのだろう、と思います。どうしても苦手、と思ってる方は、吹き替え版の声優も確かな実力者がそろっているのでいいのかもしれません。双子皇帝の吹き替えが宮野真守・梶裕貴なのはとても気になっています。

パンフレットは残念ながら発売されず。グッズも無いようですね。こういう歴史ドラマは、当時の史実を記載したり、実際どう撮影していったのかを記すプロダクションノートが記載されているだけでもかなり読み応えがあるものになったと思うので、何とかしてほしかったところです。アメリカ本国より公開が早いから、情報入らなかったのかなあ?

とにもかくにも重厚で壮大なスケールで描かれる一大絵巻のような本作。こういうのが見たくて映画館通ってるんだよなあ、と思える作品でした。



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