サピエンス全史の著者が見る「現在」

21Lessons

「サピエンス全史」で人類の過去を、「ホモ・デウス」で人類の未来を描き、世界中で読者に衝撃をあたえたユヴァル・ノア・ハラリ。本書ではついに人類の「現在」に焦点をあてる。

サピエンス全史を3か月ほど前に泣きながら読んだ（特に後半が難しすぎる）私がしぶしぶながら彼の本に再挑戦した。

3か月で私が成長したからなのか、現在に焦点を当てているためか、まだ前半しか読んでいないためか、理由はわからないが前半はとても順調に読めている。

ここでは1章から4章までのテクノロジー面の難題についてまとめてみたい。

イデオロギー

この本はまず人類が生み出した３つのイデオロギー、ファシズム、共産主義、自由主義から世界大戦や冷戦をこえて、自由主義が残ったけど、現在は自由主義の限界を感じ始めたよねということからはじまる。３つのイデオロギーについて作者の説明を引用すると、

ファシズム・・・異なる国家間の闘争として歴史を説明し、他のあらゆる人間集団を力ずくで征服する1つの集団によって支配される世界を描く。

共産主義・・・異なる階級間の闘争として歴史を説明し、自由を犠牲にしても平等を確保する、中央集権化された社会制度によってあらゆる集団を統一する。

自由主義・・・自由と圧政との闘争として歴史を説明し、あらゆる人が自由に平和的に協力し、たとえ平等はある程度犠牲にしても中央の統制を最小限にとどめる。

自由主義が勝ち、一部の国を除き世界のほとんどの国で資本主義と民主主義が導入されている。ミャンマーで軍事政権が誕生しただけで世界中が連日非難し注目する世の中になった。（決して軍事政権を支持するわけはありません。）

それが世界最大の自由主義国家であるアメリカでトランプ政権が誕生し、民主主義が脅かされ、イギリスがEUを離脱し、世界の一体化に待ったをかけた。

自由主義が限界を迎えてきているが、ファシズムや共産主義の方が優れているわけではない。すべてのイデオロギーを失った今、人類は悩み、苦しんでいる。

なぜ自由主義は限界を迎えたのか

人類は農業から工業に、工業からサービス業に比較的簡単に移ることが出来た。その転職には知識や技術はあまり必要なかったからだ。しかしロボットに仕事を奪われた人々が、ITの進歩によって生まれた新しい仕事に就くのはとても難しい。その仕事にはAIにはない創造性や専門知識が必要になるからだ。またいつAIに仕事を奪われるのかわからないので、変化に対応する柔軟性も必要となる。

すべての人がそういう人になれるのか？仕事はあるけどできる人がいない。それでも街には仕事がない人があふれている。そういう未来が来てもおかしくない。

何のために生きるのか？人類は存在意義を失いつつある。

人類は過去に強者からの搾取と戦ってきた。これからは存在意義の喪失と戦わなくてはならない。この戦いは過去の歴史から学ぶことはできない。

教育によって対応できる人類を育てるのか？政府が皆にお金を配って仕事をしないで済むようにするのか？個人の自己責任なのか？

雇用

人間の雇用について考えてみる。

人間には二つの能力があると言う。身体的な能力と認知的な能力だ。前者は農業や工業を生み、後者はサービス業を生んだ。産業革命とＡＩ革命により人間の持つ二つの能力が代替可能になった。

AIと共存していくためには人間は第三の能力を見つけなければならない。

AIの持っている能力は、接続性と更新可能性だ。すべてのコンピューターは同時に接続でき、更新も一瞬でできる。人間をコンピューターは一対一の戦いではなく、一対複数だ。

まとめ

テクノロジーが生み出す負の側面は想像していたよりも大きいのかもしれない。産業革命により機械に仕事を奪われた人類はサービス業として新たな仕事を生み出した。現在は、多くの仕事がなくなるかもしれないと叫ばれている一方でテクノロジーに強い人材の不足も問題になっている。

一部のエリート層がますます力をつけ、世界を先に推し進めていくだろう。大きなグローバル企業が国家よりも力を持つ。このことも避けられないだろう。そうなると誰がそのグローバル企業を監視するのだろうか？

政治家も有権者も新しいテクノロジーがほとんど理解できていない。現在の社会を動かしているのが、民主主義によって選ばれた政治家かシリコンバレーから生まれた技術者か自信をもって答えられる人は少ないだろう。

イギリスのＥＵ離脱も今回は負けたが多数のトランプ支持者も必然であり、目を背けてはいけない。

次の政治のまとまりも読んでいて面白い。コミュニティーの話題から宗教の話に続いていく。

「21Lessons」

今読むべき本だ。正しい知識を得たうえで、自分はどうするのか？一人一人が考えることが明るい未来を迎えるために必要なことだろう。

後半部分も記事にまとめてみたのでよかったら読んでみてください。

https://note.com/gamba_book/n/n6a3b1e4802b8