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ひとがみな われより富みて見ゆる日よ ~
物価上昇が続いているようだ。食品や日用品の価格動向に詳しい訳ではないが、細君のお供でスーパーやショッピングモールに行くと、何を見ても「ちょっと高くない?」と思ってしまう。
今は何もかもが値上がりしていて、多くの方々はたいへんなんだろう。
幸い、今の私には欲しいものが何も無い。従って、私個人への物価上昇影響は極めて少ない。
齢とともに物欲は減っていくようだ。それは老化現象のひとつなのかも‥
今の私には欲しいものが何も無い。
振り返れば、現役時代の私は "欲しいモノ" で溢れていた。だが4人の子供を抱える身には、ほとんどは "叶わぬ夢"。にもかかわらず「mono マガジン」や「GOLF STYLE」のような雑誌を見ては、常に頭の中の "欲しいモノ"リストを更新していた。
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子供たちが学校を終える頃になると、僅かながらも "欲しいモノ" が手に入るようになった。買う時は何ヶ月もターゲットを厳選し、入念に買い方を検討して清水の舞台から飛び降りた。
今でも私は、昔手に入れたそれらのモノを大切にしている。身に付けたり眺めたりして愉しみ、メンテナンスも怠りない。
しかし‥ 今の私には欲しいものが何も無い。
これほどまでに物欲が減衰した原因を考えてみよう。
(これらはあくまで私個人のこと。前期高齢者を代表するものではない。)
①. それを手に入れたとて 見せびらかす機会も相手もいない。
②-1. その服を身に付けたとて 容姿衰えた今となっては似合わない。
②-2. そのクラブを使ったとて 体力衰えた今良いショットは望めない。
③. 情報が少ないため欲しいモノが現れないし 情報を求めもしない。
④. 我が境遇を鑑み 欲しい気持ちを抑制しているうちに 欲しがる感情が薄れてしまった。
まとめると‥「物欲の減衰は老化が原因」。はっきりした。
***
買い物に出ると、何だかまわりのみんながお金持ちに見えて仕方ない。
近所の「しゃぶしゃぶの木曽路」の駐車場が "満車" になっている。
テレビはコロナ解禁で海外旅行に行く人の急増を伝えている。
そんなのを見て「いいなー」と思う時、私は啄木さんの短歌を思い出す。
友がみなわれよりえらく見ゆる日よ 花を買い来て妻としたしむ
私はこの句と、同じく「一握の砂」に載るもうひとつの代表的な句「東海の小島の磯の~~」を合体/改ざんして私の気持ちを表現してみた。
ひとがみなわれより富みて見ゆる日よ 家にかへりて孫とたわむる (がんちち)
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前の記事に書いたとおり、私は4月から仕事を始めた。
そして仕事再開後初めての給料がもうすぐ入る。長らくのヒモ生活(人はそう言う)からの脱却。そう、私は自立するのだ。
自立した私にはまた "欲しいモノ" が現れてくるだろうか。
まずは久しぶりに「mono マガジン」と「GOLF STYLE」を買ってみる。
< 了 >