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順調に老人になっていく

公式に "老人認定" されて、もうすぐ2年になろうとしている。
「老人」は文字どおり「老いた人」なのだが、老人福祉法では65歳以上と規定される。そんなことから65歳の誕生日は、年金の支給や介護保険への加入、また国や自治体からの各種優遇施策開始の画期となる。

一昨年の夏、私は老人社会の一員になった。
長らく私は "老い" から目を逸らして生きてきた。しかし否が応でも時は流れ、私は "老人" になった。自覚に欠けたままに "老人認定" され、始めは戸惑ったものだが、今は順調に適応が進んでいる。

そんな頃に、添付 ( ) 『先日 "老人" になりました』なる記事を書いた。

私には、心の奥の方の「老いを恐れる」気持ちにより、"老い" を直視しないきらいがあった。それが理由でいつの頃からか、あまり鏡で自分を見なくなった。外見を見ないだけでない。内面も同様で「自分はどういう人間なのか?」を自問したり、「どう見られてる?」と俯瞰したりするのも避けていたような気がする。

そんなふうに生きてきて、ふと気付くと、私は "私がなりたかった私" に仕上がっていなかった。今の私には、スガシカオ「Progress」の歌詞が刺さる。

♪ いまだ何ひとつサマになってやしない  相変わらずあの日のダメなぼく♪ ずっと探していた理想の自分って  もうちょっとカッコよかったけれど‥♪

***

2年前に note を始めた。だが私には特別な知識や珍しい経験は無く、伝えたい主張とか広めたい真理も持ち合わせてはいなかった。いきおいテーマは「老人の日常」「老人の憤り」「老人のボヤキ」「老人かく生くべし」などになってしまう。

考えを整理するために、自分自身を振り返り掘り下げていくにつけ、自分の欠点が浮き彫りになる。もともとが劣等感をベースに形成された人格が故の欠点の数々だ。具体的な内容は昨年末の投稿に書いた( 2022.12.27. 『浮き彫りになる』の稿)。自己嫌悪に陥るので今日はもう書かない。

そんなふうにショックを受けたりもするが、自らの欠点 (⇒ 改善点 ≒ ノビシロ) を気付かせてくれるのは note の効用だ。そして「老人かく生くべし」のポイントも概ね分かってきた。

それは‥

『理性と健康を維持すること』 
これが一番大事!  これに尽きる。

理性と健康。ふたつは、加齢によって容易に失くなるものの代表格だ。
健康の重要性は言わずもがな。ここでは『理性の維持』について書く。

理性とは、人間と動物を区別するもので、真偽・善悪を判別する能力とされる。それをつかさどるのは大脳皮質の中の前頭葉なのだが、50代ぐらいからその機能は一気に低下するという。

前頭葉の衰えが原因としか考えられない老人の暴走が巷には多く見られる。「やりたい!」「言いたい!」と思ったら、もう止められない。殊に地位や権力を持った人の前頭葉の衰えは、極めてタチが悪い。

note にもいくつか事例を挙げて
サウイフモノニワタシハナリタクナイ
と私は書いた。

我々がすべきは、
"誰もが衰えると知る" こと。
"自分の衰えに気付く" こと。
"発言・行動の前にひと呼吸置く" こと。
 "衰えを抑える努力を続ける" ことだ。

何だか老人会の会報に載せるような文章になってきた。
最後に、日々の中で私が心掛ける "キーワード" を以下に挙げる。

驕らない。ひけらかさない。素直に。謙虚に。丁寧に。優しく。慎ましく。道理を弁える。礼を弁える。正しい立ち位置。絶対正義感。
悪口言わない。否定しない。正誤は問うても善悪は問わない。
強がりは大事。頑張って強がる。欠点はノビシロと捉える。

取り敢えず、そんな感じで私は老人をやっている。

***

最近になって、今年が我が夫婦の結婚40周年であることに気付いた。その流れで「あの頃は ~ 」「ホントよくやってこれたねー」「みんな大きくなったねー」などと、ふたりで "しみじみ" することが増えた。

"しみじみ" と言えば「鎌倉殿の13人」のあるシーンを思い出す。とても良いシーンだったので採録してみる。

~頼朝が弟の僧全成(ぜんじょう)から「昔を振り返るのは縁起が悪いこと」(出まかせなのだが)と言われた後の、頼朝と政子との会話。

 政子「あなたがおなご好きだったから、私はあなたと結ばれました」
 頼朝「何故そうやってしみじみするのだ。しみじみするのが苦手だと知っておろう」
 政子「しみじみさせたのはそちらでございましょう」
 頼朝「そっちがしみじみしたから、こっちがしみじみしたのだ」
 政子「あなたがしみじみしたことをおっしゃるから私もつい‥」
 頼朝「だからしみじみするな!」

うん、とても良い! でも縁起が悪いのなら、うちも "しみじみ" は少し控えることにしようか。 

< 了 >


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