怪しい者ではありません
大谷翔平くんが高校時代に書いた "目標達成ノート" を見た。それは "マンダラチャート" とも呼ばれるものとのこと。目標を達成するための要素と具体策を抽出するツールだ。私はこの度初めて知った。
まず 9×9=81 のマスの真ん中に、"最終目標" を据える。それを取り囲む8マスにその目標を達成するための大事な "要素" を記入。さらに外のマスには、抽出した8つの要素をいかにレベルアップするかの "具体策" を記入する。
大谷くんの目標達成ノートの真ん中は、"ドラ1 8球団" とある。「ドラフト会議で8球団から1位指名を受ける」という意味だ。そしてその周囲に達成のために必要な8つの要素が書かれている。野球の技術的なもの以外では、「人間性」「運」があり、それらを高めるための具体策には、"感謝" "思いやり" "礼儀" "あいさつ" "ゴミ拾い" "部屋そうじ" "道具を大切に使う" "本を読む" などが上げられている。
大谷くんの言動や立ち居振る舞いを見ていると、ここに書いたことをちゃんと実践してきたんだろうな~と思わされる。そして「オレも大谷くんをお手本にしてやれることをやろう!」と誓う前期高齢者(私)であった。
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朝夕の散歩で、すれ違う時にあいさつしてくれる人がいる。とても気持ちが良い。同世代の散歩同好の士だけでなく、「こんにちは」と言って通り過ぎる小学生もいる。されたら気持ちが良いのに、これまでの私は自分からすることはない "あいさつ下手" だった。
大谷くんの目標達成ノートがきっかけで、「気持ちの良いあいさつができる人になろう!」と思い至った。細君に話してみた。
私「これから散歩の時、すれ違う人にあいさつしようと思うんだ。」
細君「え⁈ うーん~~」「一人の時はやめたほうがいいと思うよ‥」
私「どういうこと?」
細君「通報されるかもしれないから‥」
私「つっ、通報?」
細君「ほら、ちょっと前に『月がきれいだね』とおじさんが女子学生に言ったら通報されたって記事がネットに出てたし‥」
私「‥‥‥」
ネットニュースを確認してみた。内容は次のとおり。
昨年11月12日(金) 20:40 鹿児島県鹿屋市 下校中の女子高生に、40代ぐらい黒髪 身長175㎝ やせ型 上下ともに黒の衣服を着用した男が「月がきれいだね」と話しかけた。女子高生が断ると男性は立ち去った。
ちょっと分かりにくい。女子高生は何を "断った" のだろう。男は何かお願いとか申し入れをしたのだろうか。記事だけでは、通報されるほどの過失は見られない。それとも夏目漱石の逸話のように、男の「月がきれいだね」は、「 I love you. 」の意味だったのか。または女子高生がそう捉えたのか。
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朝夕の散歩は通常細君がいっしょだ。その存在が私の身元保証になっていたということだったか。この度細君から言われた "通報の可能性" はいささかショックだった。志村けんの "変なおじさん" でもあるまいし、見た目で怪しまれるとは露ほども思わなかった。
しかし‥ 「さもあらばあれ」。そういうことなら仕方ない。不本意ではあるが受け入れることにしよう。
私は長い間「怪しい」とか「危ない」とか思われないように生きてきた。しかし現役を退き人に見られることが減ったことと、自分の老化を直視することを避ける傾向が、俯瞰(ふかん)の目を曇らせたのかもしれない。
ここはひとつ反省をしつつ、細君同行の散歩の時に限り、"気持ちの良いあいさつ" を心掛けてみる。それにしても難しい世の中になってしまったなぁ。
< 了 >