【cluster】射撃ワールド制作録 第3章 プレイアビリティ
ガルペノです。
バーチャルSNS「cluster」上にて投稿した、銃の射撃ワールドの解説をします。
第3章にして最後の今回は、ワールド来訪者に向けて親切を図るプレイアビリティについて、ガルペノなりに設定したことを解説していきます。
第3章 第1節 安全性・安心性
正直に言って、このワールドではそこまでプレイアビリティ:親切性または遊び易さを設けられていないと感じています。
プレイアビリティについてしっかり設定するならば、ワールドのコンセプトやマップの設計から考慮しておかないと、すっきりまとまらないと思います。
後から「あー、こうしておいたらいいかもなー。よし修正だ」という戦力の逐次投入みたいなことで消耗するより、最初にしっかり想定しておくことで、二度手間などを省けるからです。
ただ、実際にアップロードして遊んでもらいながら出てくる改善点などもあるので、来訪者の声をフィードバックしつつという形は残るでしょう。
このワールドの当初のアップロードは、スピード勝負というところがあったので、サンプルシーンの床を拡大して的と銃をぽんと置いただけのものでした。
そのため、人が的を狙って撃っている射線にアバターが入り込んでしまう光景がよく見られました。
このワールドはバーチャルの世界ですので、弾が当たって痛いとか怪我する死ぬということはありませんし、まだ体力パラメーターやプレイヤーに依拠したギミックなども実装されていないので、ゲームオーバーなどもありません。
しかし、バーチャルだからといって現実の倫理観念を無視していいかと問うと、そうではありません。
ガルペノは大学時代にサバイバルゲームをやっていた時期があります。
サバイバルゲームで使用するエアガンは、実弾でなくプラスチックのBB弾を発射するので、よっぽどのひどい事故が起きない限り、大怪我はしません。
しかしそれでも、エアガンの扱いは実銃と大差ない注意を払って厳しく管理されていました。
まず、銃口は決して人に向けない。
それから射撃するまでトリガーに指をかけない。
これらは世界中の法執行機関や軍隊のみならず、ゲリラやテロリストなどでも徹底される、安全管理の大前提です。
こういった現実の安全管理に照らし合わせて、射撃レーンに人が入り込める設計は、非常にばつの悪いものでした。
そこで、4つのレーンを4方向に分散させ、プレイヤーは中央から好きなレーンの方向を向くだけで遊べるように設定しました。
また同時に、レーンを邪魔しない四隅に「銃口を人に向けない」という看板を設置し、あくまで射撃の対象は的のみ、他のプレイヤー(アバター)を意図的に撃つことは禁じるという、ワールドの方針を明示しました。
しかしこれでも、悪ふざけや興味本位から他のプレイヤーに銃口を向けてしまうプレイヤーが見られます。
ワールド制作者としての注意喚起をできるだけしたら、そこから先は来訪者の善意に頼るしかありません。
他のプレイヤーのアバターや射撃レーンでない空間に銃口を向けた場合、そのプレイヤーにペナルティを設ける(アイテムリスポーンで銃を取り上げる、プレイヤーを警告看板前にワープさせる)など、やろうと思えばできるでしょうが、意図せずやってしまったプレイヤーが不快になる、また強権的すぎる気がするので、現在は実装していません。
第3章 第2節 潜在的なプレイアビリティ
射撃レーンを4方向に分散させたワールドですが、これでもまだ潜在的な遊びにくさが残ります。
人は思いの外、自分の頭で考えるエネルギー消費を嫌います。
できれば選択は他人に任せたい、自分のやりたいことに集中するため余計なことは考えたくない、そういった部分で無意識的に思考エネルギーを節約しようとします。
そのため、「射撃レーンが4つあるよ!」「好きな銃を選んで、好きな方向に向かって撃とう!」と言われると、自由度が高い反面、「銃を撃つ楽しさ!」にフォーカスしづらくなります。
オープンワールドゲームが結局お使い一本道ゲーになるか、何をすればいいのかわからなくてつまらなくなるか、その瀬戸際と同じです。
マインクラフトくらい選択肢が膨大になれば、自分の行動原理に基づいて次の行動を選択する、計画する楽しさがありますが、狭い空間で銃を撃つだけなら、自由度はむしろ限定して、特に遊んでもらいたい部分にフォーカスさせるのがいいでしょう。
このワールドで具体的に考えれば、射撃レーンの方向をまとめるべきかなと思います。
人は思いの外に思考エネルギーを節約したがるということは述べましたが、「どの方向を向くか」という肉体的な体性感覚も重要だと思います。
これはバーチャルだからと関係なしに、自分の分身:アバターが向く方向、注意を向ける方角は、全方向であるよりもできれば狭い方向に限定されているほうが好ましいような気がします。
これは現実の射撃場の作りを見ていてそう思います。
よっぽど、的当てに全周警戒で臨んでもらうようなマニアックを求めなければ、的を狙う方向、背中を預ける方向は限定させようと思います。
的当て、すでに公式のサンプルワールドにあるような、自身が移動する形のものもいいなーと思いつつ、コンセプトからまとめるのが億劫で手付かずです。
このワールドでは常時、BGMがループ再生されています。
最初のアップロード時にはこれが無かったのですが、特に初期の殺風景なワールドに銃声だけがズダンズダン響き渡るという、あまりに殺伐とした状況に我慢ならず、追加しました。
銃を撃つ、弾道のばらけやスナイピングなどのリアルさを求めつつ、乾いた印象や血生臭さは表現したくありませんでした。
使用楽曲のクレジット表記が無いじゃないかと思われるかもしれませんが、iMovieというMacの動画編集ソフトにプリセットで入っている素材を適当につぎはぎしたものです。
ガルペノはこれをテストプレイでずっと耳にしていたのですが、たまたま目にしたチンピラっぽいYouTuberの動画でもこれと同じ音楽を耳にして、ちょっと別の音楽を探そうかなあと思ったりしました。
第3章 第3節 顕在的なプレイアビリティ
目に見えるプレイアビリティを図った点として、遠距離の命中用に「HIT!」表示を設定しました。
このワールドの遠距離狙撃は、簡単に当てられないというシビアさを求めています。
そのため遠くの的をスナイパースコープで狙えど、的が米粒どころかゴマほどの大きさになり、せっかく命中させた際のぐねんぐねんが可視しづらいという問題がありました。
そこで、遠距離の的のみ、命中時のぐねんぐねんとともに命中したことがはっきりわかる表示を追加しました。
そのほかにも的の頭上に番号と距離の看板表示を設けて、「どの的を狙っているか」などを他のプレイヤーと共有させやすくしました。
これにより、せっかくやりこみ要素として遠くの的を設置したのに肉眼で気づいてもらえない事態を回避しています。
この表示は遠近法に従って小さくなっては意味がないので、遠くのものほど力づくで拡大させています。
UIとしてのレンダリングやビルボード上の表示として設定するなど、もうちょっとスマートな方法があると思います。
ほかにプレイアビリティを図る上で設置したのが、リセットボタン(旧お片付けボタン)です。
これは本来、銃で足場を作って迷惑をかけているプレイヤーを確認し、そういった荒らしへの対策として用意したものです。
また、散らかったまま放置されている銃(特に取りづらい場所や遠くに置き去りにされているアイテム)をきちんと初期位置に戻す目的もあります。
このギミックについてはCluster Wiki #ワールド制作部 ゲーム機能 の記事として紹介してあります。
ここで簡単に説明すると、
・銃プレハブに[Warp Item Gimmick」を付加し、信号「reset」の受信対象を[Global]に
・お片付けボタンに[Interact Item Trigger]を付加し、信号「reset」の発信対象を[Global]に
・これでボタンを押すと、対象のアイテムが一斉にワープする
・ワープ先をデスポーン高度以下に設定することで、ワールド上のアイテムを初期位置にリスポーンさせる
というものです。
押し易いようボタンのコライダーは見た目より大きめに、押したら判りやすく「ピッ」と音が鳴るようにしてあります。
このお片付け機能、プレイヤーが所持中のアイテムも強制的に片付けちゃったり、自分が散らかしたアイテムしか片付けられなかったら困るなあと思っていましたが、その辺は大丈夫でよかったです。
ただルームが高負荷だったりプレイヤーの回線接続が不安定だとうまく機能しないことがあります。
おわりに
プレイアビリティについてはだいたいこんな感じだったと思います。
このワールドを最初にアップロードしてからたったの1週間と半分とは思えないくらい、たくさんのゲームワールドが登場しました。
他の方々が作られた色々なワールドを巡り、また自分のワールド(SHOOT'EM ALL!! 101)の改装や別のゲームワールドのコンセプトを考えるにあたり、どうしても考えざるを得ない問題があります。
それは、このワールドをアップロード後、いろんな人が遊びに来てくれるようになってすぐ、それが浮かんで以来ずっと悩んでいる問題です。
誰かを、何かを遠ざけるための道具:銃を使って遊ぶワールドは、果たして自分の信念に即しているかという問題です。
去年の11月に発売されて間もないゲーム『デス・ストランディング』のコンセプトは、「悪いものを遠ざけるための棒ではなく、良いものを引き寄せるための縄を使うゲーム」です。
監督の小島秀夫氏曰く、これまでのアクションゲームのほとんどは、棒で何かを遠ざけるゲームでした。
プレイヤー同士が棒で叩き合う、あるいは協力してNPCを叩くなど。
“棒”は、その形状やリーチからして、役目がはっきり解ります。
それは銃も同じで、持ち手があり、引き金があり、銃口があり、銃口は必ず相対する相手を向いています。
「“テキ”がいて、それを攻撃する」という構図は、単純であるために受け容れられ易いものです。
だからこそ、これまで沢山のゲームで“棒”を使って“テキ”を倒す仕組みが使われて、そしてclusterゲームワールドでも“銃”で“テキ”を攻撃する目的のワールドがいくつも投稿されています。
私ガルペノは絶対に、プレーヤー同士が銃をはじめとする“棒”の道具で攻撃し合うワールドは作りたくありません。
また要望があろうと、人を模した的は設置しません。
しかし、それに何の違いがあるのでしょう。
銃という“棒”を使って“敵を斃す”のと、“的を倒す”のに、どんな差異があるのでしょう。
これまで私はFPSやサバゲーなどで沢山の人や物を撃ってきて、今回その趣味が一変したということはありません。
しかし、自分がただ楽しむ側から、人に楽しんでもらう側に立った時、“棒”で何かを叩くゲームワールド、“棒”で悪いものを遠ざけるゲームワールドは、果たして許されるのかどうか、それが大きな疑問であるということです。
これは世間が許すという問題よりかは、最初に信念と表現したように、自分がこれを認めるかどうかという問題です。
そんなもやもやもあって、“棒”を使う、銃を使うゲームワールドは今後やらないでおこうかなどと考えています。
素晴らしいゲーム『デス・ストランディング』をプレイした身として、棒ではなく縄を使うゲームワールドを作ってみたいなどと考えています。
が、cluster上でスムーズな協力プレイを実現しつつ、ぼっちでもそれなりに楽しめるワールド、しかもマイク通話やテキストチャット・できればエモートも要らず協力し合えて、説明書きが無くても直感的に遊べて、達成感のあるゲームワールド。
どうぶつの森やマインクラフトみたいに収集や構築ができれば楽しそうだが、基本的に一期一会でリセット前提。
うー、多くを望みすぎる。
といったところでおしまいです、ありがとうございました。
ご要望や気の向きがあれば、連射銃の仕組み解説記事など書くかもしれません。
よろしくお願いします。
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