ガリレオ解説 Winnie-the-Pooh #1
To Her
解説|献呈の詩
(1) To Her
Winnie-the-Poohには、多くの本に見られるような献呈の辞ではなく、この ‘To Her’と題された、詩のような手紙のような、話しことばで書かれた短い文章がある。
詩のようなリズムを感じてもらうために、改めて英文を示して強勢拍を太字で表すと次のようになる:
強勢拍が3つずつ置かれている最初の3行は状況説明で、クリストファー・ロビンと、その父親である著者のミルンが、母親にこの本をプレゼントとして持っていく様子が描かれている。
強勢拍が2つずつになる真ん中の3行では、この本を母親に渡した際に喜んでくれる様子を予想した、実際の仲睦まじい家族の会話のような英語が展開されている。
最後の2行は、この本をプレゼントする理由で、強勢拍は1つずつと非常に短い発話となるが、愛情のこもったメッセージが込められている。
このように、‘To Her’の herとは、著者ミルンのパートナーであるダフネ・ミルンのことである。
(2) Hand in hand
ここでは文字どおりに「手を取りあって」の意。通常の語順では ‘We come hand in hand.’となるが倒置が起こっている。
‘go hand in hand (with) ~’の形で比喩的に「(〜と)密接に関連して」の意味で使われることも多い:
(3) in your lap
「膝の上」というと on your lapと言いたくなるかもしれないが、in your lapは「膝の上の空間に抱え込む」ようなイメージ。本を開いた状態で膝の上に載せ、子どもに読み聞かせるときのような格好になる。
(4) Because we love you.
この最後の1文を日本語にどう訳したものか?
全体的に会話調で、息子の母親・自らのパートナーに向けてのメッセージとなる文章ではあるが、もしかするとこの最後の1文は、ミルンの心の中だけのことばで、実際に口には出していないのかもしれない。
漱石先輩—夏目漱石は明治時代にUCLに留学したので、ガリレオの先輩なのです—は、英語教師時代に ‘I love you.’を「月が綺麗ですね」と訳すべしと言ったという逸話がある(ただし真偽のほどは定かではない)。
これに倣い、子どものいる家庭で父親が、Poohの物語を書くように勧めてくれて、いつも自分の作品を愛し称賛してくれる女性に対し、献呈のことばとして何と言うだろうか?と考え、翻訳(リンク参照)では思いきって「いつもありがとう」と表現してみました。
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