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ガリレオ解説|Winnie-the-Pooh #2
まえがき/Introduction (1)
もし、どこかで、クリストファー・ロビンのことについて書かれたもう一冊の本を読んだことがあるなら、かつてクリストファー・ロビンが白鳥を飼っていて(それとも、白鳥のほうがクリストファー・ロビンを飼っていたのかな?)、その白鳥のことを「プー」と呼んでいたのを覚えているかもしれないね。
If you happen to have read another book about Christopher Robin, you may remember that he once had a swan (or the swan had Christopher Robin, I don't know which) and that he used to call this swan Pooh.
(1) happen to have read
happen to...は「偶然〜する」の意。「〜する」内容は述語動詞 happenよりも前に行われること(=「これまでに読んだことがあるなら」)であるため、toの後は ‘have + 過去分詞: read’の形。
(2) another book about Christopher Robin
Milne, A. A. (1924) When We Were Very Youngのこと。
(3) may
「可能性が開かれている」ことを表す。確信度の低い推量。
(4) and
rememberの目的語となる 2つの that節 (‘that he once had a swan…’と ‘that he used to call this swan Pooh’)を等位接続。
(5) used to call
used to doは現在との対比を色濃く表す表現.次の文にある通り「プー」と呼んでいた白鳥から名前だけ連れてきたという形になるので、「かつては『プー』と呼んでいたが,今は違う」というニュアンスを帯びる。
それはずいぶん前のお話で、わたしたちが白鳥にさよならをしたとき、「プー」という名前だけは連れてきたんだ。白鳥は、もう「プー」って名前はいらないだろうと思ったからね。
That was a long time ago, and when we said good-bye, we took the name with us, as we didn't think the swan would want it any more.
(6) we took the name with us
この箇所は、「白鳥そのもの」と「『プー』という名前」が、それぞれ独立して存在しているという考え方に基づいている:
白鳥に「プー」という名前をつけて呼んでいた →【白鳥 +「プー」】
「プー」という名前だけを白鳥から切り離して連れて行った →【白鳥】/「プー」
手元に残しておいた「プー」という名前を、今度はクリストファー・ロビンのテディ・ベアに与える運びとなった →【テディ・ベア +「プー」】
(7) we didn't think the swan would want it any more
「プー」と呼びかける本人であるクリストファー・ロビンがいなくなるのだから、白鳥にとって名前は不要になる。
さて、今度はクリストファー・ロビンのテディ・ベアが、「なにか、呼ばれたら嬉しくなるような、ぼくだけの名前がほしいなぁ。」って言ったんだ。すると、クリストファー・ロビンは、ちょっと考えてみるなんてこともしないで、すぐに「ウィニー・ザ・プーにしよう。」と言って、それで決まり。
Well, when Edward Bear said that he would like an exciting name all to himself, Christopher Robin said at once, without stopping to think, that he was Winnie-the-Pooh. And he was.
(8) Edward Bear
Teddy Bearの Teddyとは Theodore / ˈθiːədɔː /の愛称であると同時に Edwardの愛称でもある。「クリストファー・ロビンのクマのぬいぐるみは、ふつうにテディ、あるいは敬意をこめてエドワードと呼ばれていた。」(小田島則子 2014.「解説」A. A. ミルン『ウィニー・ザ・プー』 阿川佐和子訳, 新潮社, 東京.)
(9) exciting
感情の原因 (= name)が Edward Bearを「ワクワクさせる」という能動関係。
(10) without stopping to think
stop to thinkは「じっくり考える」の意(cf. stop thinking: 考えることをやめる)。stop doingの場合、doingが表す行為は stopするまで続いていた行為 (Event1)。他方,stop to doの to doが表すのは stopした後に向かう行為 (Event2)。したがって,次の例のように doingと to doは同時に使われうる:
John stopped reading to smoke.
「ジョンは読書をやめて一服した.」
→ Event 1 = reading; Event 2 = smoke
→ ‘stop to do’は必ずしも物理的に「立ち止まって(=歩くことをやめて)〜する」の意味とはならないことに注意!
(11) And he was.
And he was Winnie-the-Pooh.ということ。文頭に置かれる Andは強形 / ˈænd /で発音され補足情報を導く。ここでは、前文での Christopher Robin said … he was Winnie-the-Pooh.を受けて「そして実際にそういう名前になった」ことを表している。
さて、これで「プー」って名前の部分は説明したわけだから、次は残りの「ウィニー」の方のお話をしていくよ。
So, as I have explained the Pooh part, I will now explain the rest of it.
(12) the rest of it
ある全体の一部を取り出した際の「残り: rest」は自動的に指定されるので、聞き手が “Which one(s)?”と尋ねる余地はない。したがって、定冠詞 theと共に the rest of somethingの形で使われる。ここでは、‘Winnie-the-Pooh’という名の全体のうち the Pooh partの説明が終わったので、残りは Winnieの部分ということになる。
英語原文はこちらから↓
©翻訳: Hirohito KANAZAWA