零細企業経営者がもつ役員報酬へのバイアス
経営者が自ら決める自身の役員報酬。何を基準に決めるべきか、額面で日和ってはいけない、という話
師走ということで年間の仕事内容の総括をしているということは先日のnoteにも記した。
売上げの内容はまずまずで、それなりに利益も残る予定だ。弊社のようなほとんど一人で営んでいるような零細企業においては、黒字として残った利益は再分配するにも考えものなのである。
現時点のフェーズを考慮して設備や集客のための販管費に分配するもよし、今回のコロナ禍のような不測の事態に備えて内部留保として蓄えておくのもまたいいだろう。
そして経営者自身が決める役員報酬、つまり自分の給与だが、会社の資金繰りや状況を考えて判断するのは当然のことになるが、自身の成果や苦労をあまり鑑みず、かなり消極的に設定している経営者も多いのではないだろうか。
儲かったならすべて社長の懐に、というのは少し下品な発想だが、私の感覚でいうと自身の仕事に対しての評価と役員報酬は吊り合っていないと考えている経営者がほとんどではないかと思うのだ。
零細企業だろうと、獲得した利益を従業員の報酬などの適所に再分配することは必須であるが、それでもなお残る利益は堂々と懐に入れることをためらってはならない。
自己評価を謙遜する、少なく見積もるのはいかにも日本人らしい考え方だが、経営者自身が頭をひねり構築した一部の利益はやはり経営者がいただくのが正しいと思うのだ。
従業員に対して後ろめたいと思う気持ちもわからくはないが、その利益は従業員に還元しても残っているのだ。悪いことをしているどころか、一寸先は闇の零細企業経営を一年間乗り切った自身への労いもあるが、報酬をいただくことに躊躇しているようではこの先の成長は確実にストップしてしまう。
そして何より、私も経験済みだが、会社の業績が傾けば経営者個人の資産から補填する可能性が高い。すなわち、有事の際に経営者個人がまったくキャッシュを持ち合わせていなければ会社自体が路頭に迷う事態が発生する。
そういった観点からも従業員に比べて経営者の報酬が高額なのは当然ということになる。勘違いして成果も出さずに贅沢三昧というコースを選んでしまう経営者も多いが、リスクヘッジという意味でも役員報酬は高額に設定する方が安心なのだ。
私のまわりでも地獄を味わったことのある経営者ほど高額な役員報酬を受け取りながらも質素で堅実な生活を送っている。支出をするにしてもそのお金が何を生むかを考えるような投資的な感覚を持っている方が多い。
その逆で地獄を味わったにもかかわらず、利益が出始めるとまずは自分から、ということでまわりの従業員をはじめ、協力者や設備などに還元せず、ご褒美とばかりに自分の懐にしかカネを突っ込まない経営者もいるが、還元してこなかったツケはまわりまわって再度地獄に突き落とされる可能性が高いことを理解しているのか、まったく残念な考え方である。
こうしたことを書き連ねたのは私自身への言い聞かせの要素もあり、まわりへの還元、設備投資、内部留保もまずまずということで来期の役員報酬の引き上げを実行することへの心の準備の声が漏れたというところ。
日頃から割に合わないと感じているゆえ、いくらアップするかは年度末までの宿題となるだろう。
資金繰りと自己評価を俯瞰してみて、適正な報酬を決める。役員報酬としての分配も戦略のうち